先日、「漫画家たちの戦争」シリーズのことについて、書いた。
図書館から借りて他の巻も読もう、ということで、今回は、その1つのシリーズの「原爆といのち」という1巻を借りてきた。
この巻では、
手塚治虫、中沢啓治、辰巳ヨシヒロ、赤塚不二夫、谷川一彦、貝塚ひろし
という6人のマンガ家の作品が載っていた。
「原爆といのち」というテーマでは、やはり「はだしのゲン」が代表作の中沢啓治氏の作品が欠かせないと思っていたが、本書には確かに氏の作品があった。
その作品名は、「おれは見た」という。
このマンガは、作者の中沢啓治氏の自伝として読むことができる。
「おれは見た」という題だが、何を見たのか。
彼が見た中心となるものは、原爆の恐ろしさである。
彼が物心ついた小さいころから、すでに太平洋戦争の真っただ中であった。
ひもじい思いをしながら、家族で穏やかに生きていたのに、原爆が投下されて一変してしまった。
原爆が投下された直後の様子で描かれた人々の様子は、マンガとは言え怖さを感じる絵である。
これがマンガより写実的な劇画であれば、恐ろしいというより残酷さを感じるだろう。
体験した人でなければわからない、被爆直後の人々のすさまじく悲惨な様子が描かれている。
氏は、原爆で父やきょうだいの何人かの家族を失った。
この作品では、それでもがんばって育ててくれた母の苦労も描いている。
そして、「原爆と戦争は許さない」という強い気持ちをもって、原爆のマンガを描いてきたのだった。
「はだしのゲン」について、広島市の平和教育副教材から削除され波紋が広がったことがあった。
表現に不適切なところがある、というような理由があったが、細かい部分に文句を垂れるより、描かれていた悲惨さを感じ取れるような教材がほかにあるのか、と思ってしまう。
この作品で、氏の「見たもの」が少しでも多くの人に伝わることが大事なことだと改めて思った。
また、本書では、赤塚不二夫氏の作品も載っている。
「もーれつア太郎」や「天才バカボン」などの代表作が発表される前には、こんな作品も書いていたのか、と思わされる。
ユーモラスな絵でありながら、ストーリーの展開はシリアスだ。
ギャグ漫画の草分けでもあった赤塚氏のこんな作品を見ていると、やはり「原爆といのち」というテーマは、それだけ重いものがあると思う。
この「原爆といのち」の巻は、シリーズの1つめに当たるようだ。
巻末には、監修者の中野晴行氏から発行の目的や、各巻のテーマとその意図が語られていた。
そこを十分理解した後、別な巻も読み進んでいこうと思っている。