まあ、なんと清いタイトルなんでしょう。1年半前、ベルリン映画祭で掛かったときから注目してたけど、日本じゃ、DVDでしか観られないのかなと思ってたところ、やっとこさっとこ公開。銀座シネパトス1館だけで。観にいった日も大混雑。東銀座は、とろけるほど暑いし。
昭和天皇裕仁の太平洋戦争末期から終戦後にかけてを描く。余計な説明無く、映画は始まる。朝食シーンから、軍服への着替え、御前会議、海洋生物の研究と、驚くほど淡々と時間が過ぎてゆく。ラジオや会話から敗戦が濃厚だと分かる。外部がそんな状況なのにもかかわらず、天皇である己は、侍従たちに恭しく扱われている。天皇を演ずるイッセー尾形の、その困惑した様子は、見事。もの言いたそうに動くその口によく表れている。口癖「あ、そう」も真骨頂。
この映画は、戦争を直接的に描いていない。原爆も終戦も玉音放送も描かれていない。あるのは、魚の爆撃機が小魚爆弾を落としていく想像上の空襲にうなされる天皇の姿だけ。いつの間にか戦争が終わっていて、米兵たちが日本に駐留している。宮中にいれば、そんな感覚に陥ったかもしれない。そして、彼は、皇居の堀から外に出て、現実を目撃するのだ。この状況を終戦まで見ることの無かったただ一人の日本人だけに、ショックは大きかっただろう。
終戦を境に、淡々とした物語に、シュールな笑いが加わる。連合国からの「贈り物」の一件には、思わず噴出してしまった。固まりきっていた緊張が一気に解かれた。天皇や侍従の安堵感、そこらへんの演出も巧い。
ラストシーンで、やっと桃井かおりの皇后が、疎開先から帰ってくる。「これで私たちは自由だよ」と喜び合う二人。そこに、侍従がある事実を伝える。それを聞いた天皇を鋭く見つめる皇后の視線に、全てのメッセージが詰まっていると思う。
昭和天皇裕仁の太平洋戦争末期から終戦後にかけてを描く。余計な説明無く、映画は始まる。朝食シーンから、軍服への着替え、御前会議、海洋生物の研究と、驚くほど淡々と時間が過ぎてゆく。ラジオや会話から敗戦が濃厚だと分かる。外部がそんな状況なのにもかかわらず、天皇である己は、侍従たちに恭しく扱われている。天皇を演ずるイッセー尾形の、その困惑した様子は、見事。もの言いたそうに動くその口によく表れている。口癖「あ、そう」も真骨頂。
この映画は、戦争を直接的に描いていない。原爆も終戦も玉音放送も描かれていない。あるのは、魚の爆撃機が小魚爆弾を落としていく想像上の空襲にうなされる天皇の姿だけ。いつの間にか戦争が終わっていて、米兵たちが日本に駐留している。宮中にいれば、そんな感覚に陥ったかもしれない。そして、彼は、皇居の堀から外に出て、現実を目撃するのだ。この状況を終戦まで見ることの無かったただ一人の日本人だけに、ショックは大きかっただろう。
終戦を境に、淡々とした物語に、シュールな笑いが加わる。連合国からの「贈り物」の一件には、思わず噴出してしまった。固まりきっていた緊張が一気に解かれた。天皇や侍従の安堵感、そこらへんの演出も巧い。
ラストシーンで、やっと桃井かおりの皇后が、疎開先から帰ってくる。「これで私たちは自由だよ」と喜び合う二人。そこに、侍従がある事実を伝える。それを聞いた天皇を鋭く見つめる皇后の視線に、全てのメッセージが詰まっていると思う。