保守はゴジラを夢見るかⅩ

　1950年代に福田恆存が文学者の”政治的責任”に関して発言をしています。
その時代は『文学者、作家、評論家は政治的な責任を果たすべきだ』という議論が大勢を占めていました。
ここでいう”政治的責任”とは『反体制左翼で旗降ってデモやれ』と言うことです。

福田は反論します。
「そんなのが文学者のわけがない。文学者の仕事はまず文学的に立派な仕事をすることだ。それが一番政治的なのだ。
文学者の基本は物語が良いかどうか美しいかそうでないか、それをはっきりさせることだ。
それに裏打ちされた物語の善し悪しを見分ける感覚を多くの人が持っていれば現実社会であれ政治経済であれ、物語を誰かが提示したとき、
これは良い物か、おもしろいか、そうでないか、支離滅裂か、単純すぎて底が浅すぎるか、それらを見抜くことができる。
そういう能力を社会的に高めていくことの方がそこら辺でデモやるよりも重要な仕事なのだ。
まずは美しい日本語を書いてくれ。それ以上の政治的責任は文学の本来の仕事ではない。これが一番多くの政治的貢献となるのだ」

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保守はゴジラを夢見るかⅨ

　サブカルチャー分析を通じて議論する人は「何でもあり系」の人物がほとんどです。
そこは既存の権威とか慣習、常識をぶち壊したいラディカルな人達の牙城で、ポストモダンは急進的左翼を挫折した人達がそこに集まるのです。
今回の「震災ゴジラ」の特徴はポップカルチャーを通じて物語分析を行っていますが、ベースは本格保守を宣言しています。
現代の保守派は物語分析をして現実を捉えたり、又はビジョンに踏み込んでいくことを柔軟に行おうとしない人が多いのです。
本来の保守はゲーテに代表されるように、福田恆存は文学者でシェークスピアの翻訳で有名で、芝居もずいぶん多く書いています。
こういう人が政治についても鋭いことを言うのです。文芸批評家の小林秀雄も政治に関して多く深く理解をしています。
小説家ディズレイリーもイギリス保守党の中興の祖みたいな人で、
「保守とは何であるか？」に登場するコールリッジも文学者だが政治経済について神がかり的洞察をしています。
彼は英国保守思想書の中には必ず名が挙がる人で、
実は本格保守と呼ぶべき人達はポストモダニズムとかラディカルな人達がやっていた世界を表面から扱っておかなければいけなかったのだということが分かります。

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保守はゴジラを夢見るかⅧ

　人間社会は一方で物語的に作られています。したがってフィクションの分析はリアリティーをあぶり出すことがあります。
ところが他方でその物語という側面を誇張していく人達がいて、ポストモダニズム、新自由主義、つまり「何でもありで良いじゃないか」と言う人達の登場です。
「そもそもリアルなんて物はございません」「全てフィクションですから、何でもありです」「何やったって良いじゃないか、そういう物語なんだから」「やった者勝ち」「それがダメな根拠はあるのか？」「それだって別の物語だろ、物語それぞれに正しい間違い何てあるものか」。
パラダイム論、物語論を誇張していく内にかなり極論の立場をとる人達が出てくるのです。リアルとフィクションそこに線引きはできるのでしょうか。
リアリティーはたぶんあるのでしょう。でもそこには無限に情報が存在するのでそれを理解する上に色眼鏡が必要で、それが”物語”となるのです。
複雑なリアリティーを本当にリアルに丸のまま飲み込むことはできません。
しかし、リアルに近いように上手く切り取ってくるという、良い物語はそういうことができます。
しかし経済学のような安っぽい物語は、例えば「お金を刷れば何でも解決しま～す」みたいな所だけを切り取ってきてしまうのです。
リアルとフィクションの二つが存在することを常に意識しておく必要があります。

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保守はゴジラを夢見るかⅦ

　「今の日本に様々な問題がある」ことは多くの方の賛同を得られる意見でしょう。「今の日本が文句なしに素晴らしい状態だ」と考えている方はまず、いません。
しかし、それは何で問題なのでしょうか。「閉塞感がある」とか「未来の展望が見えない」とか意見はありますが、それは煎じ詰めて言えばどういうことなのでしょう。
これが、辻褄が合わなくなった物語なのです。
映画ではストーリーが訳の分からない方向に行ってしまって、いったいこれはどのようにまとまるのか、
どのような落ちになるのか、さっぱり分からない作品があります。しかもおもしろくもない物語です。様々な出来事はありますが話が前に進んで行きません。
映画やテレビを見ていて、誰もが一度はこのような経験はあるでしょう。
現実社会そのものがこうなってしまう事もあります。物語にまとまりがなく、方向性も見えません。こういう場合現実はどのように見えるのでしょうか。
それはリアルでなく見えるのです。何でもありなので、これはリアルではなく見えるのです。
我々がこれはリアルだと言う場合、一方でリアルじゃない物が想定されていて線引きが綺麗にできています。
これは現実で起きる、しかしあれは想像はできるが現実の世界では起きないことだと分かっています。
この枠組みがしっかりしていて初めてリアルという概念が意味を持つのです。何が起きてもおかしくない時は何もリアルではありません。
中世の中東に生きたハッサン・アイ・サバの言葉で「真実なんて物はない。あらゆる事が許されている」。
これはなかなか含みの深い台詞で、「なにもリアルに感じられないこと」と「何でもあり」は同じ事を意味します。
世の中を支えている事象がまとまりを失い方向性が見えなくなって「何でもあり」的になってしまったら逆に我々は現実という物がリアルであると思えなくなるのです。

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保守はゴジラを夢見るかⅥ

　人間は自分の人生に関して、一つのまとまりがあって価値があって、ある方向に向けて進んでいると信じずにはいられないのです。これを”物語”といいます。
現実を、あるいは自分の人生を意味のある形にまとめた物を”物語”というのです。
よって、「現実を分析する」ということは、「その背後にある物語を分析する」事とほとんど同じことなのです。
現実だってどんどん変わっています。私自身だってどんどん変わっています。しかし、そこに共通性が十分ある物と見なして分析します。これを動態分析といいます。
動態分析とは、”物語”について説得力があるか辻褄が合っているかどうかをチェックするのとあまり変わりがありません。
現実を分析することと”物語”（映画、小説、芝居、アニメ等）を分析するのと何が違うのでしょうか。
後者ははっきりフィクションと言い切っている”物語”を分析することです。
つまりFictive Narrative、虚構である事がはっきりしている”物語”を分析することです。これが本来の物語分析です。
一方現実の分析は「これが嘘ですよ」と宣言していない、Fictiveでない物、「これこそがリアルなんだ」と言っている物を分析する事を現実分析といいます。
切り口は様々ですが、実は物語分析と現実分析は本質的に違いはないのです。
特に現実分析は根源的な部分に行けば行くほど価値観、世界観、パラダイム、ビジョンの問題に絡まざるを得ない故に物語分析に近くなっていきます。
逆に物語分析も、それがどういう価値観の元に作られているのかに注目して行った場合、そういった価値観を生み出す現実や時代の分析にもなるのです。
　中野さんの「保守とはなんだろうか？」にはコールリッジの文学的業績についてのコメントはありません。しかし、これも一種の物語分析です。
私の「震災ゴジラ」は物語分析、いわゆるFictive Narrativeの分析ですが、同時に現実の分析でもあります。
歴史的に見て、創作、現実両方の分野において傑出した業績を残した人物が少数ですが存在します。
ゲーテ、彼はファウストを始め文学的に有名ですが、実はワイマール公国の首相までやった人物です。
チャーチル、彼はイギリスを代表する政治家ですがノーベル文学賞まで取っているのです。
19世紀のイギリスの政治家、ディズレイリー、彼は帝国主義の必要性を説いて回った人物で、社会派の小説家でもありました。
現実の政治において重要な役割を果たす、あるいは大きなビジョンを持った人物が芸術的な意味での物語の語り部でもあったことは珍しいことではありません。
俳優が大統領になったりする国もありました。
　心理学の分野で、自己分析において「自分はこういう人間なのだ」と意識できる領域と意識できない領域を両方とも押さえておかなければ
本当の人間の内面は分からないというのが心理学の常識になっています。
同様に現実分析にも、例えば日本の現実を分析するとします。日本人が「今の日本の状態はこうである」と言っていることだけ見たらそれは話の半分に過ぎません。
日本人が認めたくない日本の現実も現実の一部だったりするからです。
認めたくないと意識していればまだ良いですが、全く意識せず、無意識に抑圧している、気づかないようにしようとしている物、これも日本の現実なのです。
長期的にはそちら側の方が影響力が強いことがあるほどです。
こういったことを探っていく上で、映画とか芝居、小説といったフィクションを分析することは鍵になるのです。
そういう意味で現実社会の分析と物語分析は非常に重なっています。前者は経済分析や政治分析、後者は映画評論や文芸評論と言うように分けることは間違いなのです。


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保守はゴジラを夢見るかⅤ

　私は2010年から2年間、京都大学大学院教授「日本強靱化論」の藤井聡氏の所に呼ばれて経産省から出向していました。そこは土木の学科でした。
彼が私を呼んだ理由は「公共事業をやらなけらばいけないのにみんな嫌だと思っている」「データを見ると公共事業は足りない」これを何とかしたいというのです。
理工系の先生にありがちなのは、まじめにデータを見せたり論文書いたり、あるいはまじめに立派な橋を作っていれば分かってもらえると思って、
10年間やり続けたらその間彼は世間から殴られ続けたのです。
「藤井さんこのやり方じゃダメなんじゃないの」と手探り続ける中で、「反撃したいので手伝ってくれ」と呼ばれたのです。
そこで新たに出した僕の提案と藤井さんの主張が全く内容が同じだったのです。それは”物語”です。
土建国家という”物語”で、「土建国家が良くないのだという物語」をみんなが共有している現状があります。
そうするとこれから外れる議論ができないので、別の”物語”を作らなければいけないでしょう。
逆に言うと土木が上手くいっていたときはその時の”物語”があったはずです。例えば世界一の新幹線を作って戦後の屈辱を克服しようと考えます。
たまたまその時にはオリンピックもあったり、田中角栄が出てきて日本列島改造論を出した流れがありました。その時に土木を上手くやっていたのも功罪があります。
”物語”なのでいい加減なこともやってしまうでしょう。一方で「土木はダメ」というのも”物語”です。

　”物語”を分析に導入している研究は社会科学とか心理学とか文化人類学とかを漁ると結構あるのです。
例えば心理学で「自己とはなにか？」、「俺って何？」を分析する場合、「俺ってこういう人間なんだよね…」と他人に説明する場合です。
人生の”物語”がそこに作られているのです。自分で納得のいく人生の物語を作って、その主役として自分を描き出しています。
「私はこういう人間です」と言うのは実はそういうことを言っているのです。これを英語でNarrativeといいます。ナレーションと同じ意味です。
物語が必要な理由が２つあります。
1つはパラダイム論と同じで、世の中のデータや情報は無数にあるので、例えば俺という人間を示す必要な情報は無限にあるので全て出すわけにはいきません。
出身学校や職業など重要な情報をピックアップして表示することになります。しかし無作為にピックアップしても意味はないのである序列を付けます。
そうするとどうしてもストーリーを描かざるを得ません。
もう一つは時間という問題です。異時点感、つまり30の時の俺、40の時の俺、同じ人間です。でも成長しているし老けてきているし本当は違う人間なのです。
本来違う人間を一緒の人間として無理矢理繋げることをアイデンティティ、同一性といいます。それは『繋がっていいと考えていいんだよ』と言う意味です。
もしそれが繋がって考えられないと精神異常、人格分裂、アイデンティティーがない、同じ人間とは思えないということになります。
人格という物をパーソナリティー、アイデンティティーとして無理なく繋げる一貫した考え方の流れが必然的に物語になってしまうのです。
結局人間とは物語的なのです。例えばドラマを見て人格的に影響されるケースがよくあります。
”半沢直樹”を見て、「よし俺は銀行員になるぞ～！」とか、
物語に感化され易く、感動するというのはどこか自分、人間、セルフ、アイデンティティーは全て”物語”でできていることと関係していると思うのです。

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保守はゴジラを夢見るかⅣ

　フランツ・カフカの言葉で「本を読むときは読んでショックを受ける物だけを読め。『その通りだ！』と思ったらその本は読むな」、
つまり自分の思想に沿った本は読む必要が無いといっているのです。
中野さんの本”保守とは何なのか？”で皆さんはショックを受けてほしいです。しかし、TPPや政治思想と、佐藤の”震災ゴジラ”はどう結びつくのでしょう？
この本”震災ゴジラ”では”ゴジラ”、”バトルロワイヤル”、”アキラ”、”崖の上のポニョ”、…そういった映画やアニメを元に現在の日本を論じています。
これがどう結びつくのでしょうか？　これが大いに結びつくのです。現実社会（政治、経済、社会）の分析と物語の分析は本当のところどこまで違うのでしょうか。
いかなる現実の政策の根底にも世界観、ビジョン、思想、価値観があります。どういう世界観を持つかによって何が適切な政策か全く変わってきます。
そこに至る計算も変わってきます。こういう世界観を最近の学問的タームでパラダイム（paradigm）といいます。現実認識の枠組みのことです。
パラダイス（Paradise）と似ていますがちょっと違います。イデオロギーとは本来こういう世界観のことを意味しています。
今では特定の政策や政治体制を持ち上げることをイデオロギーというイメージがありますが、
語源的にイデ、イデア＋オロギー（体系化された物）、つまり考えを体系化された物。つまり世界観のことをいうのです。
我々が現実だと思っている物は実は我々の中にある世界観、価値観、イデオロギー、パラダイムによって組み立てられた物語なのです。
そういう物語がなかったら本質的に現実の世界はどういう物であるか我々は理解できません。
これが最もはっきり現れるのが社会的価値観が突然崩壊してしまったときです。日本で言えば1945年敗戦です。
たぶん社会主義諸国でも冷戦が終結して共産党支配が崩れたときにそういう経験をした人が結構いるんじゃないかと思われます。
こういうときは現実がなんだか分からなくなります。文字通り何でもありです。
現実を分析しているといいますが、それは我々の何らかの価値観に基づいて作られた物語を分析しているのです。
これがどういうビジョンを信じるかによって、どういうデータを集めてくるかも違ってきます。あるいはそのデーターをどう分析するかも変わります。
我々は今こういう現実の中に生きているのだと言う結論が全て変わってしまいます。あらゆる現実分析は物語の分析に近いのです。

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保守はゴジラを夢見るかⅢ

　ＴＰＰ自体の是非は実際大しておもしろくありません。
しかしＴＰＰの背後にある考え方を正さないと、仮にＴＰＰに入らなくても自分たちで経済財政諮問会議を作って、
ＴＰＰでアメリカに言われたらやるようなことを言われなくてもやってしまうだろうと考えられます。自分で自分に罠を仕掛けてそれにはまる事になるのです。
こう言うとアメリカ陰謀論のように思われるかも知れませんが、
ＴＰＰに反対の立場のアメリカ人経済学者スティグリッツも「アメリカの陰謀じゃないのか？」と問われて
「そりゃアメリカだって陰謀ぐらいするだろうよ」と答えたそうです。まともな国家なら外交戦略の一環として陰謀の一つや二つ謀るのは当然です。
ところがＴＰＰの場合、オバマにはそんなずるがしこい所はなく、日本の市場を取りたいと正直に言っているわけです。
ＴＰＰそのものはおもしろくありませんがその思想や物の見方、世界観が一番重要で、それが社会を規定しているのです。
この話は認識論、科学哲学においては20世紀後半から常識的になった話です。
経済学の世界でもジョセフ・シュンペーターもこれを”ビジョン”と言っていて、
マルクス主義、ケインズ主義、新古典派経済にそれぞれのビジョンがあるというわけです。
そのビジョンで世界が動いていて、それに合うように各人数字データを集めてきます。よって数字データで争っても決着が付かないのです。
なぜならビジョンが違うからです。だからいつまで経っても議論は収斂しません。
ＴＰＰの場合、その議論の背後にあるビジョンが間違っていてそれを修正するべきなのですが、それは不可能なのです。
あるビジョンを持っている人で、それが自覚的でない人は無意識のビジョンを持っているので違ったビジョンを聴くと苛立ってしまうのです。
そもそも自分には無いビジョンがある事を分かっていなかったりするわけです。
「みんな同じ土俵に乗っているのに何で違う意見が出るのだ！」と切れるのです。
「テーブルをひっくり返すようなことを言うなよ」とすごく動揺するのです。
相手の動揺を見ると「ああ、ビジョンの議論に踏み込んでいるのだ…」と分かります。

　しかし、これは日本人に限ったことでも現代に限ったことでもなく、
アメリカの哲学者のプラグマティズムで有名なチャールズ・サム・スパースが書いている中で自由貿易において全く同じ例が挙がっています。
自由貿易論者がいて、他人に「A新聞は読まない方が良いぞ、お前の自由主義の考え方が変わっちゃうから読むな」と。
自分の思想信条に合わない物には目をつむってしまいます。排除しようとするのです。
最近ニコニコ動画の書き込みを見ているとおもしろくて、
私の「自由貿易がおかしい…」と言う話の動画にでっかい字で「騙されるな！！騙されるな！！騙されるな！！」という書き込みで溢れているのです。

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保守はゴジラを夢見るかⅡ

　『保守とはなんだろうか？』、経済の問題は精神の問題と切り離して考えられません。

経済学とは「数字を計算してどうすれば利益が得られるのかを見越してやれば良い」という完全なテクノロジカルな話であり、
「数字をいじっていれば良い」という話と思いがちですが、実はどういう風に数字をいじれば物事が良くなるかというのは思想の領域の問題であって、
その思想の領域の裏付けがないと計算が全て狂ってくるのです。計算が仮に正しかったとしても狂います。
なぜなら『どういう計算が望ましいかは価値観の問題』であってどういう思想を信じるかによって全く変わってくるからです。
計算能力があっても思想の方がピントが狂っていたりするとその後の計算は全て狂い出します。むしろ計算が正しければ正しいほど狂い出すのです。
しかも困るのは思想価値観は自分で自覚して持たないと、自覚して持ってないからと言って持ってないことには成らないのです。
『思想や価値観に関心の無い人のにも思想や価値観がある』からです。自分で分かってないだけの話です。
そういう人が往々にして思想や価値観と関係のない計算を始めてしまい、故に計算は正しくても失敗します。
『ＴＰＰ亡国論』もＴＰＰという一つの条約に反対すると言うよりも、
ＴＰＰの根底にある世界観、価値観が素晴らしく思えてしまうような『物の見方』を検証しなければ解明に近づけもしないのです。
ＴＰＰは近い将来締結される可能性が高いでしょうが、その後にこの本の価値が初めて分かってくるでしょう。
この発見がないとまた同じ過ちを繰り返すことになるでしょう。

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保守はゴジラを夢見るか

佐藤健志　VS　中野剛志　対談より書き起こし

まずは日本現状判断から

19世紀のイギリスにサミュエル・テイラー・コールリッジという人物がいました。彼の肩書きは詩人です。
でも彼は経済的なこともよく分かっていたし政治的な発言もしています。
エリート文化人にありがちなタイプです。
その人を論じつつ、今の日本にどういう意味合いを持つのかを解明した『保守とはなんだろうか？』と言う本を上梓した中野剛志氏をお迎えして話を進めていきます。
中野さんは経済の専門家ですが政治思想史にお詳しいです。ここが重要なのです。
中野さん前出の『ＴＰＰ亡国論』で「経済政策という物は根本の世界観を間違えると全て間違えるものである」と結論づけています。

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日本國民が問われている拉致被害者奪還ⅥⅩⅠ

「まともに総理に公式の場で核武装の必要性を提案したのは西村さんが初めてでした。野党でも与党でもそういう形で盛り上げて行く必要があります。
拉致の問題も原則論はあります。『金を渡さず武力を使っても奪還する』これは言っていかなければなりません。同時に法改正をしなければならないでしょう。
民間でできることでは『パチンコ止めようぜ』です。『日本の雰囲気は違うぞ』と言う国民的醸成をしていかなければなりません」

「この醸成を作るために子供達から考えさせるべきでしょう。韓国は『ドクトハワガリョウド』と小さい頃から教育しています。
日本はこれに対して、全く反論できない日本の若者がどんどん増えています。拉致問題も同様で何も知らない人達が20代になって、署名運動にも無関心です。
せめて防衛大学くらいでは教えてほしいものです」

「防衛大では自分の屈辱と考えるべきです」

「拉致問題においては、それでも我々は要求して、担当大臣を作って『これは外交マターではない』と予算が付いて総理本部庁を作りました。
慰安婦問題は日本の名誉を守るために同じ体制を作らなければなりません。外務省に任せて姑息な手を使ってもだめです。
向こうが20年かかって作り上げた嘘なのですから、こちらも少なくとも5年はかけて体制を作らないと対処療法ではだめです。戦後歴史問題担当大臣がいるでしょう」

「内閣の”河野談話を継承する”とは矛盾しますが、昨年衆議院選挙の自民党の公約には”見直す”と書いてあったのです」

了

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日本國民が問われている拉致被害者奪還ⅥⅩ

「どこで折り合いを付けるかの問題ですが、東京裁判史観、ヤルタポツダム体制に関わることに関しては米国はとても敏感です。
韓国の従軍慰安婦、中国の南京問題は米国も東京裁判史観として一致して保守しています」

「韓国の従軍慰安婦、中国の南京虐殺、こういった反日道具を与えているのは米国です。最終的には東京裁判史観に踏み込んでいくしかないでしょう。
先日の決算委員会で辻本清美さんが菅官房長官に『安倍政権は河野談話をどうするつもりか？』と問うと『我々は閣議決定でこれを継承する事に決めた』と返したのです。
政権の基盤強化のためにありもしない罪を亡くなられた英霊におっかぶせることは許されないことです。国の名誉は何よりも大事なことです、
そうでないと国家が保たないのです。”sex sleve”などという根拠のない不名誉を国際包囲網の中で与えられていることに黙っていてはいけないのです」

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日本國民が問われている拉致被害者奪還ⅤⅩⅨ

「自衛隊の元将官クラスの人物が、『外交はいざとなれば相手の靴の裏を舐める覚悟が必要だ』と言う話をされました。
その時の会話の文脈からすればその意図するところは理解できました。
でもだんだん、舐めているうちに『ちょっと美味しいんじゃないか…？』となってきてしまい、
そこで理屈を付けて『自分は敵の足の裏を舐めているわけじゃない！』と思い込んできてしまうのではないでしょうか。
人間身体のあちこちに病気を持っているとして、どこから治すかと考えた場合、一つ一つやっていたらとても間に合いません。
病気を抱えた状態で動きながら膏薬を貼りつつ、方向性を持ってまず動き出し、日本国内の問題はあるにしても、
”東アジアの秩序を日本がどうやって作っていくか”を明らかにして、ＪＯＣの様にプレゼンをして、”我々は自由でお互い繁栄できるアジアを作る”と日本が言えば、
アメリカのような理屈で動く部分のある国は、日本の発言に呼応すると思います。

こっちが何も言わないで事件が起きれば官房長官が『情報収集に全力を…』とか受け身の話ばかりとなっていることが問題なのではないでしょうか」

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日本國民が問われている拉致被害者奪還ⅤⅩⅧ

「海保も政府から『日本国民も尖閣に上陸させるな』と言われています。アメリカの強い命令が背後にあります。現状維持が絶対で、中国にも上陸させない意向です。
先日中国は香港船が来ると言っていましたが、機械の故障で中止になったとされました。実際は中国本国が止めさせたのだろうと思われます。
外務事務次官の佐伯さんが中国に行ったが、アメリカも行っています。『お互いにあそこは上陸させないで、うちも上陸させないからね』。
海保が私たちの乗った尖閣魚漁業船の周りを執拗にぐるぐる回るという過剰警備は強い態度で自国民を押さえているというアピールなのでしょう。
初期に河野談話の代わりに安倍談話を出すと言ったのを撤回したのは、日本の従属国化、アメリカに対して『日本は主権国家ではない』と屈している姿勢なのです。
評論家の伊藤寛さんは『安倍政権とは中国にとって最も危険な政権である』と評しています。
『もし2020年までこの政権が維持されると何するか分からない』『本当に戦後レジューム破壊を1つずつやってしまうかも知れない』と米中に思われています。
『今回TPPや増税をやらせて短期政権にしてやれ』『様々な失敗をさせて短期政権にしなければならない』。
米国はその後に石破さん、麻生さん、石原伸晃さんによる親米政権を作りたがっています。我々は河野談話の屈辱を知るべきです。
談話撤回、こんな事すらできないのです。我々はなぜTPP反対なのか、国柄を壊すからです。増税は？、景気を悪化させるからです。靖国神社に行くべきです。
国民の側でこれらを言っていかなければならないのです。そして『河野談話は間違っている』と言っていかなければならないのです。
役人や政治家に『根性出せ！』と叱咤激励するしかないのです。アメリカが政治家に『河野談話を見直したら東京裁判史観の否定となる』と圧力を懸けてきます。
もし見直しに進むようならアメリカは安倍政権をすぐに変えようと決意するでしょう。
国民の側で見直しを盛り上げて行かなければ政治家だけに根性を求めてみても難しいでしょう」


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日本國民が問われている拉致被害者奪還ⅤⅩⅦ

「事実は人を動かします。尖閣問題における一色さんのケースも、國民はみんな驚きました。
　”国内にいる拉致実行犯が一人も逮捕されていない”この事実を知らしめる必要があります。

　北のバックには中国や米国がいます。中国は自国の国益のために北に餌を与えながら様々な形で手先として利用しています。そこをよく観察する必要があります。
北が独自で動くだけではないのです。現在、米国自体が相対的に力が落ちてきています。
今、日中関係が緊張していることは米国にとって必ずしも嫌なことではないのです。戦争さえ起こさなければ緊張している方米国にとって都合いいのです。
日本と韓国、又は北と上手くいっていないことで、韓国は不安に陥ってアメリカにとって交渉しやすい状況です。
日本が中国からの圧迫を加えられていることはTPP交渉に関して米国に有利です。中国に対しては日本が核武装したら不味いでしょう。
この現状維持が米国オバマ政権にとって有利ではないかと思います。よって、日本にとっては問題解決に進みにくい現状なのだと考えられます。
中国はこれから日本に対し尖閣問題で挑発を仕掛けてくるでしょう。私たちは尖閣に行って逃げないで漁業活動をやります。
すると海保は私たちに『不測の事態が起きて中国に拿捕されて連行されたらどうするんだ』、『じゃあ私たちを連れて行かせるのか？』。
日中当局は武力衝突がいやだから領海内でお互いに『うちの領土だから出て下さ～～い』と呼びかけるだけです。
漁師に漁業させなければいいのなら、こんな楽な仕事はないでしょう。

　震災が起これば自衛隊が行って泥まみれになってでも救出に全力で取り組んでくれました。でも拉致は何十年も何もやらずに放置です。
拉致被害者の問題は戦後日本の宿痾です。何もできなかった我々自身の心象風景でもあるのです」

「従軍慰安婦問題における河野談話に関してです。政府の官房長官として河野さんが発表したものが未だに政府の公式見解です。
安倍さんも河野談話を見直すといったものの、その後『閣議決定でこれを継承する』となってしまい、
出先の大使館員が、本国の公式見解が『継承する』となっているため彼らは抵抗できません。『もう謝ってますから…』以上の事は言えません。
『事実じゃないのだ』という真実を主張できないのです。海上保安庁も同様に日本本国の姿勢に問題があるのです」

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