みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅥⅩⅠ

　1912年、バルカン同盟が突如として雪崩を打つように成立していきます。
まず3月、宿敵ブルガリアとセルビア、「俺たち同じスラブ人じゃねえかよ～～、なっ！、なっ！」と同盟を結びます。
その仮想敵は北の大国ハプスブルク帝国と南のヨーロッパの病人トルコです。
具体的に「対トルコ戦になったらブルガリア20万、セルビア15万動員、互いの領土紛争はロシアが仲介」と約束を交わします。
当然このお膳立てはロシアです。
ボアンカレ仏首相「これは戦争契約書だ･･･」と感想を述べています。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅥⅩ

　同年辛亥革命が起き、中華民国ができてしまうという人類の不幸がありました。
また同年、謀略大好きエーレンタール墺外相死去、後任にベルヒトルトが就任します。
そして同年、『明治天皇崩御！』、大正政変となり基本的に日本はバルカンに関わっている暇がありません。

　1913年、米大統領ウッドロー・ウィルソン就任です。
フロイト著『ウッドー・ウィルソン心理学的研究』より「こんな精神異常者は他にない･･･」。
う～～ん、フロイト･･･、蛇の道は蛇ってことでしょうかね･･･。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅨ

では注意深く、順を追って確認していきましょう。

　1910年、不幸が現在までも続いているコソボのアルバニア人が蜂起します。
同年メキシコ革命が起き、アメリカはそれにかかりっきりになってしまい第1次大戦に気が回りません。
1910年～20年までが大戦と言われますが実際には16年には落ち着いてきます。その後にアメリカは参戦してくるのです。
つまり初期にアメリカは手を出しません。

　そして1911年伊土戦争、イタリアがトルコに戦争を仕掛け、リビアをぶんどりに行きます。
これ、なぜか、あのイタリアが勝利してしまいます。
イタリアに戦争で負けるというのは国として末期症状といえるかもしれません。
因みにこの戦争は世界で始めて航空機が実戦投入された事で有名です。この時イタリアは航空大国でもありました。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅧ

　今回はセルビア＋モンテネグロ＋ギリシャ＋ブルガリア（バルカン同盟）VSオスマントルコ帝国となっていく流れですが、
その理由として通説では「バルカン諸国は同盟を結びトルコへの領土的野心をあらわにして開戦」とされています。
それは事実です。
でもなぜトルコの西部地域領土であるアルバニアおよびマケドニア地方に対して
バルカン同盟が侵略する必要があるのでしょう。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅦ

　そしていよいよバルカン同盟が成立してバルカン戦争を起こすことになります。
1912年のバルカン半島において大国としてオーストリア・ハンガリー帝国があり、
セルビアVSブルガリアが軸となって北東にルーマニア、その逆サイドに最強戦闘民族モンテネグロ、
南にギリシャがあり、それが東のオスマントルコと大げんかという配置です。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅥ

　ちなみにこの内田大使、後に日本を滅ぼす外務大臣となるのです。

国際連盟脱退時の内田外相の『焦土演説』が有名です。
「満州国承認はたとえ全世界を敵に回し、我が国が焦土となってもやりぬく･･･」

おかげで本当に日本が焦土となってしまいました。
彼はものの見事に公約を果たしてくれた比い稀な官僚なんです･･･。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅤ

　このころ日本では･･･
小村寿太郎外相「ブルガリア問題でヨーロッパ列強の協調は無理だ。内偵して報告せよ。
新聞論調でもいいので報告せよ。他の欧州大使にもそう伝えよ」と内田康哉駐墺大使に訓令を出しています。
そして
内田大使「スパイ雇ったんですが、試用期間半年で予算採れます～？」
小村外相「ＯＫ」

半年後
内田大使「この前雇ったスパイ、やっぱ使えないんで本給やる前に首にしときますわｱﾊﾊ～」
小村外相、ｿﾝﾅｺﾄ ｶﾝﾀﾝﾆ ﾃﾞｷﾙﾜｹ ﾅｲﾀﾞﾛ!! 無視･･･
といった公電のやりとり簿冊（バルカン半島状況等ニ関スル秘密通信員嘱託一件）が残されています。

スパイを気軽に雇って気軽に首にする内田大使の杜撰さに小村は頭を抱えたことだろうと思います。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅣ

結局オーストリア＋ブルガリアＶＳロシア＋セルビア、となるわけですが、
それをオーストリアＶＳブルガリア＋ロシア＋セルビア、にするためのプロパガンダが『汎スラブ主義』というわけです。
こうして不幸はバルカンからヨーロッパ中に拡散されていきます。
日本の教科書では世界情勢は大国の身勝手で小国が振り回されると言われがちですが、
少なくともバルカンでは逆です。小国の身勝手で大国が被害者となるのがバルカンです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅢ

　ロシアは露仏同盟を結びました。ロシアは慢性的財政難なので、ここぞとフランスに借款交渉で大忙しとなります。
そのすきに墺外相エーレンタールがロシアの手下のブルガリアを引き込んで三国協商を出し抜いてしまいます。
しかも同盟国のはずの独伊にも内緒で交渉を始めて事後報告です。
セルビアが墺を切って露へ行ったので墺は露の手下のブルガリアを引き抜いた格好です。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅡ

　そしてその2ヶ月後に露外相がハプスブルクに対抗するためバルカンブロック結成を議会で掲げます。
これまでケンカしていたスラブ人同士のセルビア人とブルガリア人、この二者を組ませようという作戦です。
セルビアとブルガリア、2者各自この案について世論調査をすることになります。


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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩⅠ

　オーストリア・ハンガリー帝国統一外相のエーレンタールがロシアに対してボスニア＝ヘルツェゴビアを併合宣言します。
その翌日、それまでトルコ主権下で事実上の自治を認められていたブルガリアがトルコからの正式な独立を宣言します。
ついでにブルガリア国王フェルナンドが自ら皇帝（ツァー：ロシア皇帝の尊称）を名乗ると宣言します。
その3日後、バルカンの南側クレタ島住民が勝手にギリシャ合同を宣言します。

　またもや騒ぎに乗じて関係の無いところで騒ぎが拡散するバルカン法則発動といったところでしょうか。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅤⅩ

　そして人類不幸の年、1908年がやってきます。
トルコで『青年トルコ党革命』勃発します。
大日本帝国憲法は東洋初の近代憲法と日本国内では言われますが、
トルコをアジア地域に入れるとすればトルコのミトハト憲法が先に存在します。
ただ、このミトハト憲法はすぐに停止されてしまいます。
ヨーロッパの人たちは大日本帝国憲法の制定時に「ふふっ、お前らもすぐ停止するよ」と揶揄しました。
伊藤博文と桂太郎は頭にきて何が何でも停止しませんでした。
そのいわく付きのミトハト憲法を青年トルコ党が復活させたのです。
するとこれをきっかけにバルカンの各地で勝手に騒ぎが起き始めます。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅣⅩⅨ

　逆にこの頃、苦しくなってきたオーストリアで「日墺同盟論」なる物が登場し、日本に伝わってきます。
日本にとって4カ国協商によって包囲している相手、しかも利害関係が無いのになんで同盟を結ぶ必要があるのでしょう。
ロシアは日本に蹴散らされ、バルカンにもどってオーストリアとやっとケンカ再開してくれたのです。
当然の事ながら明治の日本人はこんな事相手にしません！。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅣⅩⅧ

　1906年～1909年にバルカン半島でセルビア豚戦争が起こります。
セルビアは日露戦争前までは秘密同盟の元、オーストリアの保護国でした。
日露戦争前年、セルビアの親墺派の国王が暗殺され、1906年反オーストリアに方針転換します。
軍需品発注はオーストリアからフランスへ変更します。
セルビアは名産品の豚の輸出に対してオーストリアは報復関税を課します。豚はセルビア人の魂であります。
関税交渉は暗礁に乗り上げ、お互い経済制裁をかけ合うことになってしまいます。
ところがセルビアはオーストリアの同盟国であるドイツからの輸入によって
みごとオーストリアからの経済的自立を達成してしまうのです。

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みんなで学ぼう！バルカン半島ⅡⅩⅣⅩⅦ

1907年、日露戦争勝利でウイルヘルムⅡ世の陰謀を跳ね返し、
翌年4カ国協商を作ってドイツを逆包囲し、
日本だけが安全地帯という外交的に天国のような憂いの少ない時期がたった1年だけありました。

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