国体論と戦後日本ⅥⅩⅤ

　日本人は世のため人のためと倫理観として当たり前のようにそれを言ってきました。
日本ではマズローの言うように高度に安定した社会が実現できたからこそ人間の要求が生存、安全、自己実現などのレベルの低い所に止まらず、
社会に貢献したい要求が自然に持ち得る状態まで社会が発展したということなのです。
日本人が唱えるべき自由は社会に貢献する自由であり、主が自分を犠牲にするのは強制されたからではなく自分の自由の発露だからなのです。
「たとえ命を賭けることになっても社会に対して貢献したい」こういう自由があるのだと言うことを世間に知らしめることが必要です。

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国体論と戦後日本ⅥⅩⅣ

　自由という言葉が重要視され、自由競争が市場の原則となっています。
この場合の自由とは個人を主体とした自由というように、極めて自由という物を限定しています。日本国憲法に書いてある自由も主体は全て個人なのです。

アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した人間の『欲求５段階説』の中で、
人間の要求というものをフロイトのような性悪説では無く性善説で見ていくアプローチをしています。
生存、安全、集団への帰属、被承認、自己実現の5つの要求が存在するとしています。
そしてその上に「自己超越の要求」、つまり社会に対して貢献したいと言う要求があるのだと彼は整理しています。
しかしアメリカではお国柄として自己実現要求が一番上位でないといけないのか、自己超越の要求は学会で広まりませんでした。
また、同時に「社会に高い協調性があって、社会慣習において協力を値打ちのある物だと見なすような高度に文化が発展し、
平和で安定している社会では人々は社会に貢献したいという要求を持つものだ」と言っています。

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国体論と戦後日本ⅥⅩⅢ

　安倍内閣も道徳教育を推進しています。その時に国体論がきちんとしていないとどう教えられるのか分かりません。
どういう国民であるべきかはっきりさせておく必要があるのです。文科省に任せておくと西欧的な自由平等博愛で道徳を語られる可能性があります。

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国体論と戦後日本ⅥⅩⅡ

　明治時代から日本に来た外国人が如何に日本をよく発見し、見ていたか紹介されている文献が多く存在します。
そこから日本の国民性、文化について客観的にも深い研究がされてきて、これらを広い意味での国体論でまとめて構わないと思います。
国体論を深めていかない限り憲法改正などできはしないでしょう。ただ、残念ながら間に合いません。
国体論を極めて、1億の国民が皆、私はそう言う人間なんだと自覚を持ってから憲法改正なのだといったらとうてい間に合いません。
ではどうしたらいいのでしょうか。両方同時に進めるほかはないでしょう。
まず法律事実として緊急必要な憲法改正、そして憲法以前の、不文の憲法であった国体をよく認識して、その上に新しい憲法を築くのです。
この認識を広めていくほか仕方ないと思います。

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国体論と戦後日本ⅥⅩⅠ

　日本の国体が仏教を受け入れました。もちろんその時には蘇我氏と物部氏の政治的争いがあった訳ですが、全て飲み込んでしまいました。
まずその時に日本の国柄があったのです。後にキリスト教ですら受け入れてしまいます。そのキリスト教は日本化してしまいました。
しかしキリスト教は何年経とうが信者が１００万を超えることがありません。その点は仏教と違います。その仏教は神道との共存においてほとんど違和感がありません。
同じと言ってもいいでしょう。キリスト教は神と契約をすると言う点で日本の風土に合わないのです。
現代の仏教、浄土教から禅宗に至るまで堕落していると言われるのは現世利益を求めすぎです。
鎌倉仏教から日本の仏教として発展していったがその良さも失われていきつつあります。戦後の仏教界の堕落は国体を失った日本と同様です。
個人宗教だけを考えるようになってしまったのが原因でしょう。
仏教哲学者鈴木大拙の「私が無ければ皆私」と言う名言があります。私の概念は全体の私と繋がっていて不可欠なのだということです。
私とは、私だけで無く全体を私としています。
この概念のために最近の爆買い中国観光客や日本マニアの白人観光客が政治体制を越えて、
日本の良さ、風土、国民の親切な人柄を感じています。日本嫌いで買い物だけしに来た中国人も極楽浄土のような日本に感嘆しているのです。

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国体論と戦後日本ⅥⅩ

　個人と共同体の中の個人、この二つの概念を知恵によって常に結合していかないといけません。
今の日本の仏教は個人ばかりを考えるから少々社会から乖離し始めていると思います。言い換えれば左翼っぽくなってきていると感じます。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅨ

　社会には共同宗教と個人宗教の両方なければなりません。
実を言うとキリスト教も旧約でユダヤ民族という共同宗教をいい、キリスト一人である個人主義、キリストの愛が個人を救うという２つを作りました。
ところがこの２つは矛盾しています。
「目には目を」、「右の頬を打たれたら左の頬を出せ」と完全に違うことを言っているにもかかわらず、これがキリスト教だと言っています。
日本人もちゃんと共同宗教と個人宗教の二つ持っていて、神道というアマテラスを中心とした共同宗教、仏教は日本では個人宗教です。
聖徳太子はそれを理解されて個人も大事だと考えました。煩悩を持っている個人を言葉で助ける必要性を感じて仏教を取り入れたのです。
聖徳太子の知恵は大変すばらしく、それ以来仏像が非常に個性豊かになっていきました。多くの仏像のそれぞれの顔が違うのです。
ヨーロッパ人の知恵では共同と個人お互いに矛盾しても構わない、それが宗教です。日本では神道と仏教を両方取り入れて行き渡らせる事が行われました。
おそらく仏教の代わりにキリスト教を入れても良かったのでしょう。哲学でも良かったのかも知れません。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅧ

　同じユダヤ系の言論人でジャック・アタリと言う人物がいます。
彼の本によると市場の力が世界を席巻していると、市場の勝利とは個人主義の勝利だと、市場とはマネーだと断言しています。
彼によれば個人主義、マネー、市場は三位一体なのです。善悪はともかく、これが彼らユダヤ人の考えなのです。
日本でも今では個人主義を崇拝し、個性を伸ばす教育が重要だと言われています。でも、それはユダヤ思想であると言うことを知っておかなければなりません。
自由、平等、博愛もユダヤ思想なのです。その上で本当の意味での自由、本当の意味での平等社会を目指すべきなのです。
彼らは個人主義の基づいた自由であり平等であり博愛です。そこが日本の国体とは全く合いません。日本には個人主義はありません。
個人はあってもそれは主義ではありません。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅦ

　ハイデッガーの弟子であるアーレントはユダヤ人に対し「あなたたちはイスラエルを持っているしシオニズムを持っているじゃないか」と徹底的に批判しました。
結果アーレント自身がユダヤ人なので身内からも嫌われてしまいましたが、ユダヤ人にはこういう人もいるのです。
ユダヤ人自身はけっして人種差別してはいけないと考えています。
しかしディアスポラの中で、少数派の彼らが作った思想があたかも世界の思想であるかの如く作り上げたのが近代なのです。
ハイデッガーはこのように見抜いていたのです。我々もそういうことを知らなくてはいけません。
近代だ、自由だ、平等だと言う概念があたかも正しい事のように、国民、民主主義と言う言葉が入って来たことにより我々が呪縛されたことを、
そろそろ日本の国体あるいは日本の思想で批判しなければならない、そう言う時代が来たのです。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅥ

　ハンナ・アーレントも言うように国がないと言うことは世界がなく、個人の意識しかないということです。神と個人しかありません。
これでは世界観にはなりません。
ところがそれがグローバリゼーションだとか近代と言う名前で、平等、自由として流布され、そして最後にはお金の社会だと平気で言うような世になったのです。
これがユダヤ的な発想なのです。こういったアーレントの批判をユダヤ人は偏見であると、陰謀論だと批判します。
しかしもっと本質的に、彼らの世界観を正直に考えるとそう見えてきます。
世界各国にいるけれど自分の国家がない人々。逆にどこを流浪しても大丈夫でそこが世界であると考える事ができる人たち。ところが今イスラエルがあります。
それがあることによって彼らのグローバリゼーション、インターナショナリズムが言えなくなりつつあるのです。そこに分裂が生じてきています。
やっとユダヤ人は議論しやすくなってきています。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅤ

　ユダヤに対しては2つの考え方があり、人種憎悪はいけないことだというのは当然です。
ところが彼はユダヤ主義が持っている本質をきちんと説いて、ユダヤ人しか持つ事のできないディアスポラの思想がグローバリゼーションであり、
世界のあらゆる場所で個人が基本で、個人主義を前面に立たせる思想なのです。、
これをハイデッガーは見抜いて「ユダヤ人達には世界がない」つまり共同社会に対する責任感がないと看破したのです。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅣ

　ハイデッガーの話をさせていただきます。
近年ドイツでヒトラーのマインカンプ（我が闘争）が解禁となりました。多くのドイツ人が飛びついてそれを読んでいます。
同時にハイデッガーが”黒いノート”と言う著書が発刊されました。
彼には100ほどの著作がありますが、彼の遺言によってこの”黒いノート”は最後に出版することになっていました。
この本はドイツ人にとっては非常に深刻なユダヤ人問題を扱った著書で、
彼のナチ寄りの姿勢を鮮明にしてしまうために彼自身が戦後発刊を用心して最後に出してくれと言い残していたのです。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅢ

　自然は本来そのようなことをやっています。
西洋人、中国人は譲ったり負けたりという事が大嫌いです。ところが自然は勝ち負けではない采配をやっています。それを示すことで全てが分かり始めます。
世界の中における日本の役割と、日本の思想は国体も当然そういう問題に関わっています。
こういう本来の思想が、社会を階級としてみる、対立としてみる戦後マルクスによって作られた考え方が日本人の中にも入り込みすぎてしまいました。
国民というものが何かに対立する概念のように思われ、特に市民という言葉がはやり、国家権力に対向する存在が事実であるかの如く入り込んで、
左翼の基本的行動は市民運動と呼ばれます。
市民と言えば国家権力に対向する階級であり自分たちの思想の根拠であると市民運動は言っています。しかしそんなものは実際にありません。
市民の中には国体意識はなく対立しかないのです。市民などと言う意識は絶対に日本では作られていません。
それは西洋で作られた概念であるとしてもブルグという擁壁に囲まれた中の人、ブルジョアです。日本では奈良も京都も城塞がありません。
最初から国家です。国家という概念も家であり、人々は皆親戚です。例えばアフリカから発見された人骨もどこかで繋がって同じ祖先でありうるという思想です。
日本の和の概念です。日本の中では対立概念が元々嘘です。対立概念は一神教のもので、神と悪魔が登場し、神と自然が対立し、無駄な対立をする考え方が出てきます。
それが無効だと言い始める根拠が科学なのです。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅡ

　国体の中にある重要な要素である武というものについて、そこには敵を殲滅しようという発想がありません。
それを示した上で日本の安全保障と防衛はどう考えたらいいのでしょうか。
違う考えの者を排除するのではなく如何に世界に平和的な秩序を構築するか、
そのために献身努力して自己犠牲をいとわず立ち向かうのが日本人であるというのが武なのです。
こういうことを示していくことが海外の人に説明する上で理解しやすいと思います。

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国体論と戦後日本ⅤⅩⅠ

　武に関してお話しさせていただきますと、何故日本の軍隊が敵殲滅ではなくてむしろ自己犠牲をしても秩序構築を重視したのでしょうか。
国体論から言うと神話の中の国譲りの話の中に日本の武の神様、建御雷之男神（たけみかづちのおのかみ）が 大国主(おおくにぬし)神と国譲りの交渉をされ、
建御名方神（たけみなかたのかみ）と戦うことになってしまいます。その結末はそれぞれのお社を建てて永遠にお祀りする約束をして交渉が終わります。
戦いは建御雷之男神が圧倒的な力で勝ってしまいました。しかし建御名方神でさえ諏訪の大社を建てて武の神様としてお祀りされています。
大国主の神は出雲の神としてお祀りして、その時の天穂日命（あめのほひのみこと）が永遠にお祭りをするという約束が未だに継続しており、
千家さんという宮司さんが今でも現実にいらっしゃるのが我が国なのです。

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