蝦夷鹿猟は内地の狩猟者にとって一方の頂点であろう。もちろん羆猟や鶉猟・ウサギ猟など好まれるハンターもいる。拙もかっては雉猟が好きで犬の芸を見ながら猟野を楽しんだ。さて現実の蝦夷鹿猟へ目を向けよう。定年退職後道東で蝦夷鹿猟を始めた。道東へは過去十年以上通い、それなりに蝦夷鹿猟を会得しているつもりであった。しかし1週間ほどの「お客さん」ハンターであった。今回全て自分でやってみて、そう結論付けた。
蝦夷鹿猟の代表的な方法は3つある。
1、車で牧場を流し、撃つ方法。
牧場主は牧草の状態が大切である。雨後の牧場は柔らかく(土、牧草)絶対に立ち入ってはならないし、刈り取り前も同じだ。そして、牧場は個人所有の土地であるから無許可で入ると警察へ電話される。検挙の対象である。鹿を発見後地主の許可を得に行く、許可を得て戻っても鹿はいない。しかし現地のハンターは牧場主と顔なじみである。地元の者同士なのだ。地元の者はOKでも内地の者はNOである。これは意地悪でない。地元のハンターは牧草の状態など理解し、牧場主に迷惑を掛けないで狩猟するからだ。得た鹿を回収する場合、ロープで引っ張るが血で牧場を汚さないようにする。内臓は穴を掘り処理するが、解体も含め適切な場所の確保が難しい。一部のハンターが牧場内や付近の山林で行い、30分後にはカラスの黒山が出現する。こうした事が重なるので「絶対お断り」の牧場が沢山ある。沢山あるがその旨の標識はない。
2、山林を流し、撃つ方法
山林には国有林が沢山ある。これらの入山許可を取得しているか。民有林なら山主の許可を得ているか。山林にはハンターだけでなく作業員がたくさんいる。不用意な発砲により殺人事件が発生している。矢先の確認ができるほど余裕があるか。林にいるエゾ鹿が発見できるか。1週間ほど来ていた時、やっと発見できるのは目が慣れてきた帰日間際である。走ればわかるがそれでは遅い、鹿は人間と車の接近を早くから知っている。ここでも残滓の処理が問題になる。羆の餌を提供しているからだ。
3、雪山で巻き狩りに参加する方法
これは地元に友人がいて、仲間に入れてもらえれば、可能の方法である。写真では、銃口をテープで塞いでいる。
4、その他、方法など
コール猟もあるが技術、場所時間など一般向きではない。そうなるとプロのガイドにお願いするのが一番良いが、ガイドもピンキリである。一日に一回も発砲しないと料金が取れないので遠距離、公道上でも発砲させるそうだ。鹿がたくさん出てくるのは日没後である。某有名ハンターも日没後に発砲し、御用となった。
現在1の方法に2をミックスして、やっている。しかし時間帯による鹿のいる場所、よく付く牧場、発見してから(約1000m)接近するまでの道順、天候(雪・風・雨)による場所の変化など要素が絡み合う。猟果はお客さんで来ていた時の1/10である。これが拙(内地ハンター)の実力だ。
少し自信が出来るには最低3年は必要である。ここに住んで最低3年である。牧場主に名前と顔を覚えてもらい「まあいいか」と言われるのはいつの日であろう。現在65歳である。