実際にババは金銭を乞い求めたことはないし、バクタが施しを乞うことを許可したりもしなかった。彼は、金は霊的な成長にとって危険で障害になると考えており、バクタたちをこの危機に陥らせるようなことを許さなかったのだ。
バガット・マルサパティはこの例に当てはまる。彼は非常に貧しくて、生計を立てるのが厳しかった。ババは彼に金策をすることを許さず、ダクシナ貯金から彼に金を与えることもしなかった。ある時、親切で気前の良いハンスラジという商人が、ババの目の前で大金をマルサパティに渡そうとしたが、ババは彼が受け取ることを許さなかった。
それから二人目の客が自分の話を始めた。「私のブラーミンの料理人は忠実に35年間私に仕えていました。残念ながら彼は道を誤り、悪い考えを起こして私の財産を盗みました。食器棚が据え付けてある壁から紅土の厚板をはがして自宅に忍び込み、私たちが皆寝ている間に私の全財産30,000ルピーの札束を持ち去ったのです。
私にはどうやってババが正確な金額を知ったのか分かりません。私は夜も昼も泣きながら座りこんでいました。捜査をしても無駄でした。私は二週間の間、悲嘆に暮れていました。私はベランダに座って悲しみ落胆していると、通りかかったファーキルが私の様子を見てどうしたのかと尋ねてきたのです。
それで私は彼に全てを話しました。彼は私に、コペルガオン・タルカのシルディにサイという聖者が住んでいると教えてくれました。彼に頭を下げて一番好物の食事を絶ち、心の中で「私はあなたのダルシャンを受けるまで、この食べ物を絶ちます」と言うようにと言われたのです。そこで私は頭を下げて米を食べるのを絶ち、「ババ、自分の財産を取り戻して、あなたのダルシャンを受けたら米を食べます」と言ったのです。
それから15日が過ぎました。ブラーミンは自分から私のところへやってきて私の金を返し謝罪をしてこう言ったのです。「私は頭がどうかしていて、こんなことをしてしまいました。今、あなたの足元に頭を下げます。どうかお許し下さい」それで全てがうまく収まったのでした。私の前に現れて助けてくれたファーキルは二度とやってきませんでした。
ファーキルが私に教えてくれたサイババに会いたいという強い気持ちが私の心に生まれました。私の家にやってきたファーキルは、他でもないサイババだったのではないかと思ったのです。私を見て、失った金を取り戻すのを助けてくれた彼が35ルピーを欲しがるでしょうか?それどころか、彼は私たちには何も求めることなく、常に霊的な成長の道へ私たちをいざなっているのです。
私は盗まれた財産を取り戻した時あまりの嬉しさに、自分の誓いを忘れてしまうという無知ぶりでした。しばらくして私がコラバにいるとき、ある夜サイババの夢を見ました。この夢が私がシルディを訪問すると約束したことを思い出させてくれたのです。私はゴアに行き、そこから汽船でムンバイまで行き、そこからシルディ行こうと思いました。しかし私が港に行くと、汽船は乗客でいっぱいでもう乗れないことが分かりました。
船長は私の乗船を許可しなかったのですが、見ず知らずの水夫が私を仲介してくれて、ムンバイ行きの汽船に乗船することができたのです。そこから私は列車に乗りました。私はババは遍在していて全てを知っていると確信しています。私たちは何者か、私たちの家はどこか?ババが私たちの金を取り戻してくれ、彼自身の元へ連れてきてくれるとは、私たちはなんと幸運なのでしょう。シルディの人々は、私たちより遥かにまさっていて、より幸福に違いない。
だってババがこれほど長い間、ここにいて、笑い、話し、あなた方と共に暮らしているのですから。あなた方の積んだ徳は無限に大きいに違いありません。サイは私たちのダッタ(ダッタトレヤ神)です。彼は汽船に乗船する私に席を作ってくれ、ここへ連れてきてくれ、彼の全知と全能を証明してくれたのです」