まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

フルモールからセミモールへ

2009-02-20 15:36:31 | 海外巡礼 Asia America

P1040673_2

 

 

P1040676 フランクロイドライトの町オークパークのマリオンストリート(歩行者モール)を紹介します。マリオンストリートは70年代に歩行者専用モールに改装したものを、近年車と共存するセミモールに再改造し成功しています。日本の地方都市にも参考になるのではないでしょうか。

 

オークパークはシカゴの20km程西にあり、鉄道でシカゴのダウンタウン(ループ)と結ばれています。シカゴのベッドタウンとして19世紀の後半から人口も急増し、中心街レイクストリートと駅前を結ぶマリオンストリートには商店や郵便局、ホテルが立ち並びました。1915年の時点ですでに街灯やレンガ舗装を完成させ、「モダン」な商業地区として周辺の町からも多くの人を呼んでいたそうです。

しかし、60年代から客は郊外ショッピングセンターに流れるようになり、商店街は寂れました。そこで郊外ショッピングセンターのインナーモールに対抗するため、レイクストリートとともに歩行者専用モールに改造したのが1974年のことです。

 

 

その後の経緯を詳しくフォローしようと思っていますが、少なくとも歩行者専用道路にしたことが商業的な衰退を留めることには結びつかず、90年代半ばにはまずレイクストリートが車の通行を再会しました。そして2007年にはマリオンストリートもセミモールへの改造を行い11月に開通式を行っています。

私たち東北公益文科大学の公益ビジネス調査チームが訪れたのが2008年の9月で歩道に埋め込まれた噴水が最終的に完成したのが2008年の5月ですから、改造直後でその成果がきちんと検証できるというところまで入っていないかもしれません。しかし、案内してくれた関係者は実現した歩行者空間の質に大変誇らしげであり、ダウンタウンをコミュニティにとってショッピングにも食事にも集まる場所に再構築するという目標の実現に自信を持っていました。

彼らには、単なる道路(Roadway)を超えたものをつくったという自負があります。歩道は3から4.8mあり、ゆとりのある戸外の散歩や食事、休憩スペースであり同時に駐輪スペースとなっています。照明は1920年代に時代を先取りしてつくられたデザインを再現しています。車道は20世紀前半の「モダン』な商店街といわれていたときの雰囲気を意識してレンガで舗装。これらの試みにより時を越えたダウンタウンの歴史的個性(Historic character)を継承しているのです。

ちょうど私たちが訪れた直後にアメリカ計画協会(American Planning Association)やニューアーバニズム会議(Congress for the New Uabanism)に高く評価され、表彰されることが決まったことが公表されました。

この計画の実現には地域の建物所有者や商業者により作られたダウンタウンオークパーク(Business Association)が行政(Village of Oak Park)とともに大きな役割を果たしています。また、オークパークには3つのTIFと3つのSSA(Special Service Area)がありますが、マリオンストリートを含むダウンタウンもSSAのひとつであり、ダウンタウンオークパークの活動財源になっています。このあたりのことは、時間があれば調べてみたいものです。

参考:http://www.oak-park.us/Community_Services/Planning_Marion_Street.htm

 

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani


ライト、ウィリッツ邸

2009-02-08 16:59:01 | 海外巡礼 Asia America

  シカゴ郊外、ウィリッツ邸

HidariMigikara

 

シカゴで見た建築の続きです。イリノイ州歴史保全局のアンソニーさんが、ミノルヤマサキのユダヤ教会(North Shore Congregation Israel)に続いて見せてくれたのがフランクロイドライトのウィリッツ邸です。

ウィリッツ邸は十字形の平面を持つ典型的なプレーリーハウスです。スタッコ仕上げの外壁は初期プレーリーハウスの特徴だそうですが、残念ながら中を見ることはできません。

オークパークのユニティテンプルもそうですが、壁の出隅には木の見切りがありません。そのため面材としての壁は角・コーナーで動きを止められることなく回り込んでいきます。ソリッドな「立体」としてではなく、伸びやかな「面」によりファサードが構成されているという印象がもたらされています。方立てなどがっちりとした竪方向の要素が多いにもかかわらず、水平・横への方向性が強く感じられるのは低く長い屋根の効果だけではないようです。

住宅があるのは、ハイランドパーク市でシカゴの40キロほど北になります。車でびゅんびゅん飛ばすので、気づきませんでしたが、後で地図で確かめるとずいぶん遠くまで案内してくれていたのでした。

Michi はやりここもミシガン湖沿いの高級住宅地で、左のような風景がずっと続きます。ちなみに道路と民地(宅地)の境界は明示されていますが、景観的には一体となるような管理が土地オーナーに義務付けられています。

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani


ミノルヤマサキ・ユダヤ教会

2009-01-22 15:03:37 | 海外巡礼 Asia America

P1040296 P1040295

 

 

オバマ新大統領の就任式を見ていたら昨年の秋に訪れたシカゴのことを思い出しました。

ここに写真を掲げたのは日系建築家ミノルヤマサキのユダヤ教会(North Shore Congregation Israel)でシカゴの北エバンストンの北郊のノースショアにあります。

ミノルヤマサキは悲しいことに彼の作品であるワールドトレードセンターの崩壊で一般の人に知られるようになりました。一連のニュースの中では、ミノルヤマサキが設計したプルーイットアイゴー(Pruitt Igoe)にも触れられていたことを思い出します。

プルーイットアイゴーはセントルイス郊外の高層集合住宅です。低所得者層のスラムをクリアランスしてうまれました。それは近代都市計画を主導したCIAMの理念を体現したものであり、緑・太陽・空気(広場)の溢れる理想の住環境であったはずです。

しかし60年代のバンダリズムや悪質な犯罪が増大する中で、高層の建築形式自体が維持できなくなり、白日のもとで爆破解体されました(下の写真;Wikipediaより引用)。

Pruittigoeoverview01 Pruittigoecollapses01

さて、ミノルヤマサキのユダヤ教会です。ノースショアの緑豊かな高級な住宅街のなかにあります。彼の装飾的な部材の用い方はモダニズムの精神とは距離を置くものですし、WTCのデザインも含め私もあまり共感するところではありませんでした。

 

しかし、緑のなかに、また今にもミシガン湖の爽やかな風が流れてきそうな広い敷地のなかにひっそりたたずんでいる姿はモダニズム云々を超えて大変美しいものでした。ここで用いている薄いボールト状の庇はPCシェルです。PCシェルの隙間はトップライトになっています。

彼は巨大建築を多く作っている反面、コルビジェ的な大きく人を包み込む彫塑的な空間よりも、ヒューマンな人のタッチできる細やかなスケール感を好んでいたそうです。PCの小部品をリズミカルに並べたオフィスビルなどの秀作があります。下(右)に写真をInternet http://www.bluffton.edu/~sullivanm/yamasaki/gas.htmlから引用します。

ちなみにこのレースのようなグリルワーク(Lacy Grillwork)のPC部材とまったく同じ形状のものが私の故郷高松の三越の外壁に取り付けられています(下左)。ちなみにヤマサキの作品Michigan consolidated gas buildingは1963年の竣工、三越は60年代後半わたしが中学校の頃建てられたものです。

  MitukoshiGasbasesm01

 

 

 

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani


ミレニアムパーク

2008-11-24 21:17:55 | 海外巡礼 Asia America

シカゴ建築を一望するならまちの東側を南北に走るミシガンアヴェニューに沿って歩くとよいようです。さらにその東側にはとても楽しいミレニアムパークがあります。

印象に残ったシーンを紹介します。

まずはF.ゲーリーの野外劇場。ステンレス製のリボンが踊るのは彼らしい造形だと思いますが、芝生席(4,000の固定席以外に7,000の芝生席)の上空にはステンレスのぶどう棚(Trellis)が飛び交っています。実はこれが野外劇場の音響システムなのです。

ゲーリーの作品はモニュメント的なものしか見たことがありませんでしたが、この「劇場」はファンタスティックです。巨大なのに妙に親しみを感じさせる、空間の存在を感じます。

なおこの野外劇場はJay Pritzker Pavilionといいます。あのプリッツカー賞の創設者、シカゴの実業家にちなむものです。

116millenium_park_ghery

115ghery

 

   

 

  

雲の門(Cloud Gate)という作品です。Anish Kapoorという英国人の作品です。高さは10mほど、長さも20m弱、ゲートとなっている人の入り込めるスペースも高さ3.6mもあります。

この巨大さがまずすごい。そしてその巨大さの中に入り込めること、さらにそこに入り込むと自分や周囲の人、そして誇るべきシカゴ建築を映しこんだ親密なスケール感があるということにおどろされます。

117millenium_park

119millenium_park

 

     

     

これまた印象的です。クラウンファウンテン(Crown Fountain)といい、Jaume Plensaの作品。両端にある高さ15mガラスブロックの塔には人の顔が映し出されます。これはシカゴ市民の顔です。これだけでも非常に不思議な感じがするのに、その口から泉が噴出してきます。普通だと彫刻の動物の口から出てくる水がシカゴ市民の口から湧き出てくるというのは素敵なアイデアです。

右の写真はこの公園の東(ミシガン湖側)にあるschool of the art institute of chicagoで、現在レンゾピアノの手で増築中。

 

124millenium_park

125piano_school_of_the_art_institut

 

 

 

 

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani