「花燃ゆ」オープニングの歌詞は『留魂録』!? 心震えるその言葉の意味とは?【3分で学ぶリバティ日本史】
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NHK大河ドラマ「花燃ゆ」(全50回)が、21日放送の第25回「風になる友」で、ちょうど折り返し地点を迎えます。
ところで、そのオープニングテーマ曲ですが、「(歌詞が)なんと言っているか聞き取れない」という方も多いのではないでしょうか。実は、こういうことを言っています。
「愚かなる 吾れのことをも 友とめづ人は わがとも友(ども)と
吾れをも 友とめづ人は わがとも友(ども)と めでよ人々
吾れをも 友とめづ人は わがとも友(ども)と めでよ人々 燃ゆ」
(NHKホームページより)
「愚かな私のことでも、"あれは私の友であった"と思ってくれる人がいるなら、私の友達にも、私に向けてくれたのと同じような愛情を向けてほしい」という意味です。松陰の最期を思い出すと、なんとも味わい深い言葉です。
この「短歌」は、1859年(安政6年)、吉田松陰が処刑の前日、松下村塾の門下生に向けてしたためた『留魂録』の中にある歌です。松陰が"友"と呼んだ塾生たちへの万感の思いが、約5000字という長文でつづられています。
「大河を途中から観始めた」という方などは、「『留魂録』って何だろう?」と思われるかもしれません。劇中で、主人公の文(ふみ)や夫・久坂玄瑞などが、今は亡き松陰に思いをはせる時に手に取る、あの"小さな冊子"のことです。
実はこの『留魂録』、後に明治維新の志士たちの強力なバイブルとなり、行動の源泉となった点で、ただの遺書ではありません。では一体、どのようなものなのでしょうか。
投獄・取り調べの経緯と、塾生たちへの愛
『留魂録』は、「身はたとい武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」という有名な辞世の句から始まります。「仮に肉体は朽ち果てても、日本の行く末を思う魂だけでも留め置きたい」という意味ですが、「人間の本質は魂である」という確固たる宗教的信念がそこにあったことが伺えます。
投獄された経緯については、「『至誠にして動かざる者は、未だこれあらざるなり』という孟子の言葉を胸に幕府の役人の説得を試みたが、わかってはもらえなかった。しかし、誰を恨むということはない。自分の徳が薄かったのが原因である」と語ります。たとえ何があっても、環境や他人のせいにしないというリーダーとしての「潔さ」がひしひしと伝わってきます。
松陰はまた、できれば自分の意思を継いでほしいと述べ、「○○(塾生の名前)のことは、△△に話しておいた」と、自分亡き後の塾生たちの動きにまで気を配っている箇所が随所に見られます。松陰は、最期まで彼らの「先生」でありました。
松陰の「死生観」
さらにもう一つ大事なことは、松陰の「死生観」が、人間を「春夏秋冬を循環する作物」に例えて述べられている点にあります。以下、『留魂録』にある松陰の言葉を紹介します。
「今日死を覚悟して少しも騒がない心は、春夏秋冬の循環において得る所があったからだ。(中略)義卿(自分)は三十、四季はもう備わっている。成長もし、また実りもした。それがしいら(籾殻)であるか十分に身の入った穂であるかは僕の知るところではない。もし同志の士に、僕の微衷(真心)を憐れんで、それを受けついでやろうという人があるならば、そのときこそ後に蒔くことのできる種子がまだ絶えなかったということで、おのずから収穫のあった年に恥じないということになろう」
(『吉田松陰 著作選 留魂録・幽囚録・回顧録』奈良本辰也著)
「今生の己の使命は果たした」と、松陰は言いたかったのでしょう。肉体としての松陰は亡くなっても、魂としての松陰は永遠に生き続ける。そして、その意思を受け継ぐ者たちに志を伝え続けることで、次の時代の幸福の種となるということなのです。
松陰が生涯大切にした「志」や「誠」は、私たちの肉体に関係するものでも、周りの環境や他人の存在で決まるものでもありません。すべて各人の「心の問題」です。そのように考えると、松陰の生き様自体が、「人間は心の力によって、どんな逆境をも乗り越えていくことができる」という強いメッセージとなっているのではないでしょうか。
『留魂録』の内容は、私たちの心にも"留め置き"たい言葉です。(翼)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『愛の原点』 大川隆法著
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幸福の科学出版 『吉田松陰「現代の教育論・人材論」を語る』 大川隆法著
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