◆生命脅かす腎不全
糖尿病性腎症は、高血糖が原因で腎臓の中の細い血管の塊(糸球体)に
異常が生じる。糸球体は血液をろ過して尿を作る場所。
槇野博史・岡山大教授(腎・免疫・内分泌代謝内科)によると、
高血糖状態が続くと糸球体入り口側の血管が開き、出口側の血管が収縮しやすく
なる。その結果、糸球体に大量の血液が流入して負担がかかり、ろ過機能の異常
を招くという。
◆過剰ブドウ糖で血管障害--分解処理、間に合わず
高血糖が続くとなぜ血管に異常が生じるのか。
体内の細胞は、栄養として取り入れたブドウ糖を化学的に分解し、エネルギーに
変換する。ところが、血中のブドウ糖が増えすぎると処理が間に合わなくなる。
門脇孝・東京大教授(糖尿病・代謝内科)は
「大量のブドウ糖を処理しようとした結果、過剰な化学物質が作られ(細胞に
ダメージを与える)酸化ストレスも増える。その結果、血管に異常が起きる」と
説明する。
異常が生じる仕組みには、複数の仮説がある。
(1)糖の一種「ソルビトール」が細胞内で過剰に生成され、それを薄めるために
たまった水分が細胞を変質させる
(2)血管の壁の細胞機能を調節する酵素(プロテインキナーゼC)が過剰に生成
される
(3)細胞のたんぱく質に糖が結びついて変質する
(4)酸化ストレスが増加する--などだ。
酸化ストレスは、(1)~(3)を悪化させるという悪循環にもつながる。
合併症の治療は、血糖を低く抑えることが基本だが、
門脇教授は「特定の細胞で 酸化ストレスを抑える薬剤が開発されれば、複数の
仮説に対応する治療薬になりうる」と話す。
◆治療先延ばしは禁物
合併症は、毛細血管が傷つく「細小血管症」と、動脈硬化を起こす「大血管症」
に分けられる。
いわゆる「3大合併症」(神経障害・網膜症・腎症)は、細小血管症だ。
毛細血管の構造は、壁の内側が「血管内皮細胞」、外側が「周細胞」と呼ばれ
る。高血糖が続き、さまざまな要因で異常が起きる際、最初に影響を受けるのは
周細胞だ。
周細胞に異常が生じると、血管が緩み、コブのようなものができて出血しやすく
なる。さらに悪化すると、内皮細胞の機能に異常が生じ、血流を阻害したり血栓
を作る。血流が悪く低酸素状態になると、酸素を取り込むため新しい血管(新生
血管)ができる。だが、新生血管はもろく、出血しやすいため、さまざまな障害
の原因になる。
網膜症や神経障害は高血糖状態が続くと、発症の可能性は確実に高まるが、腎症
には、遺伝などの要因も複雑に絡むとされる。いずれにしても治療を先延ばしに
し、高血糖状態を放置すれば、血管が傷つき合併症が発症するのも時間の問題と
いうことになる。
(2007年2月5日 毎日新聞より抜粋)
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糖尿病性腎症は、高血糖が原因で腎臓の中の細い血管の塊(糸球体)に
異常が生じる。糸球体は血液をろ過して尿を作る場所。
槇野博史・岡山大教授(腎・免疫・内分泌代謝内科)によると、
高血糖状態が続くと糸球体入り口側の血管が開き、出口側の血管が収縮しやすく
なる。その結果、糸球体に大量の血液が流入して負担がかかり、ろ過機能の異常
を招くという。
◆過剰ブドウ糖で血管障害--分解処理、間に合わず
高血糖が続くとなぜ血管に異常が生じるのか。
体内の細胞は、栄養として取り入れたブドウ糖を化学的に分解し、エネルギーに
変換する。ところが、血中のブドウ糖が増えすぎると処理が間に合わなくなる。
門脇孝・東京大教授(糖尿病・代謝内科)は
「大量のブドウ糖を処理しようとした結果、過剰な化学物質が作られ(細胞に
ダメージを与える)酸化ストレスも増える。その結果、血管に異常が起きる」と
説明する。
異常が生じる仕組みには、複数の仮説がある。
(1)糖の一種「ソルビトール」が細胞内で過剰に生成され、それを薄めるために
たまった水分が細胞を変質させる
(2)血管の壁の細胞機能を調節する酵素(プロテインキナーゼC)が過剰に生成
される
(3)細胞のたんぱく質に糖が結びついて変質する
(4)酸化ストレスが増加する--などだ。
酸化ストレスは、(1)~(3)を悪化させるという悪循環にもつながる。
合併症の治療は、血糖を低く抑えることが基本だが、
門脇教授は「特定の細胞で 酸化ストレスを抑える薬剤が開発されれば、複数の
仮説に対応する治療薬になりうる」と話す。
◆治療先延ばしは禁物
合併症は、毛細血管が傷つく「細小血管症」と、動脈硬化を起こす「大血管症」
に分けられる。
いわゆる「3大合併症」(神経障害・網膜症・腎症)は、細小血管症だ。
毛細血管の構造は、壁の内側が「血管内皮細胞」、外側が「周細胞」と呼ばれ
る。高血糖が続き、さまざまな要因で異常が起きる際、最初に影響を受けるのは
周細胞だ。
周細胞に異常が生じると、血管が緩み、コブのようなものができて出血しやすく
なる。さらに悪化すると、内皮細胞の機能に異常が生じ、血流を阻害したり血栓
を作る。血流が悪く低酸素状態になると、酸素を取り込むため新しい血管(新生
血管)ができる。だが、新生血管はもろく、出血しやすいため、さまざまな障害
の原因になる。
網膜症や神経障害は高血糖状態が続くと、発症の可能性は確実に高まるが、腎症
には、遺伝などの要因も複雑に絡むとされる。いずれにしても治療を先延ばしに
し、高血糖状態を放置すれば、血管が傷つき合併症が発症するのも時間の問題と
いうことになる。
(2007年2月5日 毎日新聞より抜粋)
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