(すばる望遠鏡)
① ""すばる望遠鏡 ; TOPIC 00 イントロダクション””
すばる望遠鏡は1999年1月にファーストライトを迎えた。その後、調整・試験を経て、2000年12月より共同利用観測を開始した。一体いつの時点をスタートポイントとするかによって異論はあろうが、2019年はすばる望遠鏡の運用開始20周年である、と定義することとする。本ウェブサイトでは、この20年間にすばる望遠鏡を用いて達成された科学成果を振り返ってみたい。
TOPIC 01 星間物質の華麗な世界
すばる望遠鏡は、ファーストライト後の試験調整期間の間に、早くもその優れた性能を発揮した。最も初期から運用を開始した近赤外線観測装置CISCOは、星間に漂ういくつかの電離ガス雲の観測において、すばる望遠鏡の赤外線観測性能を見せつけた。オリオン大星雲の赤外線画像は、その鮮明さにおいて、すばる望遠鏡の華々しいデビューを印象付けるものであった。
- [ウェブリリース]オリオン星雲(1999年1月28日)
- [参考文献]Kaifu et al., 2000, PASJ, 5, 1, “The First Light of the Subaru Telescope: A New Infrared Imageof the Orion Nebula”
オリオン大星雲の赤外線画像。CISCO撮影。トラペジウムが放つ強力な紫外線によって電離されたガスが、視野全体にわたって青く淡く輝いている。(クレジット:国立天文台)
また、共同利用開始直後に撮られた星形成領域S106の美しい赤外線画像も、見るものに強烈な印象を与えた。この画像からは、600を超える生まれたての星が検出され、その空間分布から、質量の重い星ほど星雲の中心付近で生まれるという傾向が明らかになった。
- [ウェブリリース]すばるが見つめる星のゆりかご(2001年2月13日)
- [今週の一枚]星形成領域 S106 IRS4
- [参考文献]Oasa et al. 2006, AJ, 131, 1608, “Very Low Luminosity Young Cluster and the Luminosity andMass Functions in S106”
星形成領域S106 IRS4の赤外線画像。CISCO撮影。宇宙の不思議さ、美しさを象徴する天体として、米国のアル・ゴア元副大統領の著書・映画『不都合な真実』に取り上げられた。(クレジット:国立天文台)
さらにすばる望遠鏡は、近赤外線分光撮像装置IRCSと冷却中間赤外線分光撮像装置COMICSによって、星雲M17で生まれた若い星の周囲に広がる星間ガスの複雑な多重構造を暴き出した。生まれたばかりの星へのガスの流入メカニズムを探る貴重な観測結果である。
- [ウェブリリース]シルエットで浮かび上がった原始星エンベロープの全貌(2005年4月20日)
- [参考文献]Sako et al. 2005, Nature, 434, 995, “No high-mass protostars in the silhouette young stellarobject M17-SO1”
原始星M17-SO1の赤外線画像。IRCS+AO撮影。原始星を覆うガスと塵(ちり)の雲(エンベロープ)の姿が、シルエットとして鮮明に捉えられている。(クレジット:国立天文台)