落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

The Last SAMURAI

2003年12月01日 | movie
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観ちゃいましたー。
コレ一般公開は今週土曜からですね。私が観たのは先行オールナイト。
先行オールナイトって結構オススメです。意外と空いてるし、オールナイトだからレイト料金。オトクです。客層もまぁ悪くないし。

すごーく、真面目!!!な映画です。
脚本から時代考証から細かい演技のニュアンスから、これ以上真面目にやれないだろって限界まで真剣に追求した映画です。ハッキリ云ってそのへんの日本映画よりも全然真剣です。そりゃもうコワイくらいおカタイ。
かと云って完璧かっつーとそうでもない。そらそうですな。完璧な文学も芸術もあり得ないし、同じ意味で完璧な映画もない。でも限りなくそれに近づけようとした情熱は大変よく分かるし、同時にエンターテインメントとしてはこれは相当よく出来た映画だと思います。

この映画を観ていていちばん強く感じたのは、「日本映画」「アメリカ映画」「ハリウッド映画」と云うような“括り”“ジャンル分け”が、この作品においては完全に無意味なんだなと云うことです。
逆に云うと、そう云う“括り=国境”を超越した真剣さと云うものが、この作品にはちゃんと発揮されて、きちっと表現されている。他の部分ではどうあれ、その点ではこれまでの映画が辿り着けなかった領域に大きく一歩を踏み出していると云うことが出来ます。
ぶっちゃけた話、表題の「LAST SAMURAI」とはオールグレンのことでも勝元のことでもなくて、この映画に挑んだ人たちのことだったんじゃないかと思うくらいの情熱作です。

単純に云ってもフツーに面白い映画です。
実を云うと史実にはそれほど忠実ではないです。実在の人物は明治天皇くらいで他は全員架空の人物、物語は西南の役を背景にしているようですが、実際の西南の役に似せてつくられた部分はほとんど見受けられない。
例えば舞台となっている地域も違うし、大体が武士の装備が古過ぎる。実際には当時の反乱士族は銃も大砲も持ってたけど、映画の武士は弓矢に刀に槍に甲冑姿と云う戦国武将並みの状態です。明治政府側の人物として登場する大村(原田眞人)をはじめ政府の体制の設定も曖昧で大雑把です。
これは状況を「新時代VS旧時代」と云う分りやすい構図にして、描かれるべきポイントを主人公の人間性の再生と云うパーソナルな部分に絞ろうとしたからだと思います。大胆ですね。要するに史実=歴史的なディテールを排除してファンタジー化した時代劇の中で、「武士道」と云う精神論を最大限に語ろうとした訳です。コロンブスの卵的発想、まさに日本人には出来ない発想とも云えます。

それだけに、目に見えない精神論をメインにしていながら非常にストーリーは分りやすいし、チャンバラアクションとしても見事なスケールだし、「武士」を演じたい・撮りたいと云うつくり手の熱意もよく伝わる完成度になっています。その熱意がどれだけの観客に受入れられるかはさておき。
ぐりは実は幕末史が好きだった時期もあって、この時代の物語にはビミョーにウルサイんですが(笑)、そんなぐりから観てもまず文句ないです。
幕末、明治維新の何が人の心を動かすのか。それは先にも書いた通り、時代と時代の争いだからです。つまり勝ち負けは最初から決まっている。時代の歯車は決して逆には回ってくれない。
当事者にもそれはよく分かっている。彼らは自分たちが負けることを知っていながら、それでも戦いに臨む。その勝負において、彼らにとって“勝ち負け”は既に問題ではない訳です。問題は、彼ら自身がいかに「武士道」を貫き通せるかと云う点にのみある。それは武士としての生涯を全うし通すこと、自己にうち克つことが第一に重要なのであって、結果は彼ら自身の中にだけ存在している。たとえ彼らの信念が時代の中で既にその機能を失っているとしても、彼らだけはその意義を死ぬまで信じ通そうとする。
とは云っても、私たちは歴史的には国軍が勝ち反乱士族が負けたことを知っている訳で、負けることを知ってはいても本心では負けるとは思っていない反乱軍の真摯さとあまりのカッコよさに、思わず心うたれてしまうのです。不覚にも。周りのお客さんもそのへんでしくしく泣いてました。ハイ。

ひとつ気になったのは、明治天皇の人物描写がややステレオタイプだったこと。若く聡明で野心に溢れてはいるけれど、近代化とナショナリズムの間で揺れるナイーヴな青年天皇・・・っつーとそれだけでかなり難しいキャラクターだと思うんだけど・・・演じてる中村七之助くんはハマリ役ですね。神秘的で気品があって、これを彼以外の人が演じるのはちょっと想像出来ないです。
思うに台詞が多過ぎたんじゃないすかね。お上はそんな喋んなくてもいんじゃないのかねえってとこがやっぱアメリカ人にはよく分かってなかったのかもしれません。ただこう云う描写も日本映画では出来なかったことだと思えば新鮮ではある。
あとエキストラの方々のヘアメイクとか衣装がすっごくリアルなのは感心しました。ハリウッドのスタッフが明治・幕末期の写真を参考に制作したそうですが、それだけにむしろ日本の時代劇に見られるような変に美化され様式化された人物造形にはなってなくて、却って人間らしいビジュアルになってて良かったです。聞けばカツラを使わず地毛でマゲを結ったりしたそうで、ナルホドそれもリアリティに一役買ってそうです。

とりあえずですね、痛快時代劇アクションとしても、歴史スペクタクルロマンとしても、ひとりの人間の心の旅の物語としても、単純に楽しめる娯楽大作です。渡辺謙、真田広之、メチャクチャかっこいいです。トム・クルーズ食われてます。それは云えてる。
大丈夫、日本人なら観て損はないことうけあいです。なにしろ総制作費300億円(絶対嘘だと思うけど)。300億かかっててトム・クルーズが出てる時代劇、ってだけで結構じゃありませんか。
お時間のある方は是非劇場へどうぞ。

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