落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

サモワール・トーク

2008年01月29日 | book
『刺繍―イラン女性が語る恋愛と結婚』 マルジャン・サトラピ著 山岸智子監訳 大野朗子訳
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映画『ペルセポリス』の原作/監督のマルジャン・サトラピによるグラフィック・エッセイ。
「刺繍」なんてガーリーなタイトルからしてもっとカワイイ内容を想像してたんだけど、いやあ〜ぜーんぜん、違かったよ〜。これはこれですっごいおもしろかったけど〜。
映画と違ってこの本には一貫したストーリーのようなものはなくて、食後のお茶の時間に女性たちが交わす四方山話─話題はすべて結婚と恋愛─がおもしろおかしくコミック風に綴られている。
登場する女性たちはみなマルジの親族や隣人たちで、年齢はマルジと同じくらい(20代?)から祖母の世代まで幅広く、全員が上流の都会人ばかりである。なのでイスラム圏といえどもそれぞれに考え方や価値観にもかなり幅がある。4人も娘を産んでおきながら男性器をみた経験が一度もない女性もいれば、よその若い女に目移りしはじめた夫の関心をひくために豊胸手術をした熟年女性もいるし、マルジの祖母のように恋愛上手で3度も結婚した女性もいる。他のアジアやアフリカの保守的な地域と同じくイランでも花嫁の処女性が尊ばれるが、マルジたちは現実にはそんなものに意味はないということを知っている。意味はないがさりとて重要視する人間─主に男─の考え方を無下にするのも現実的じゃない。だから「刺繍」などというイタイ隠語が生まれたりする。

しかしこの本を読んでいていちばん新鮮だったのは、親族も含めて年齢の離れた女性同士があからさまな下ネタトークに無邪気に盛り上がってるってこと。
少なくとも、ぐりのうちでは、母や姉妹はもちろん親戚や隣人とでも、女性同士でセクシュアルな話はまずしない。セクシュアルどころか、恋愛ネタもほとんど話題にならない。あるとしたら結婚&出産か離婚に直接関わる場合のみだ。つーか、Hな話ってキホン彼氏くらいとしかしないものだと思うんだけど(職場などでのセクハラは除く)。女の人って。あれ?違う?そーいえば周りの女の人とかに聞いたことないなー。どーですか?女性の皆様?
ところがマルジたちは実に天真爛漫と「白いモノって何?」とか「ちんちんはもともと見た目のいいものじゃない」とか「あそこにメーターなんかついてない(>それをいうならカウンターでは?)」とかいいあって大笑いしている。オープンだ。楽しそう。
てゆーかね、上品とか下品とか以前に、女性の心と体を守るためにも、異世代同士での下ネタトークってけっこう重要なんじゃないかな?という気がしてくる。この本読んでると。
処女性を尊ぶかどうかも女性自身に選択の自由があって当り前だし、選択の自由のためには多様な価値観の存在を知っておくことは不可欠だ。それが人権というものだろう。夫のためにというよりも、女性が自分で自分の生き方をちゃんととらえるうえで、先輩後輩との意見交換は大切なものだと思う。
なんでぐりのうちの女の人はやんないのかな?下ネタトーク?

下ネタといっても下品に感じるほどエグイとこまでは書いてないので、女性なら誰でも気楽に読める楽しい本です。雰囲気的には大田垣晴子のコミック・エッセイにかなり近いです。
画風は映画とよく似てるけど、線が筆で描かれててもっと情緒的な、絵本っぽい雰囲気。
この人の本、他にももっと読みたいんだけど、邦訳は映画の原作本2巻とこれと、合計3冊しか出てないんだよねー。フランスでは他にも何冊も出てるみたいなんだけど。