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落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

彭浩翔ブラボー

2007年10月21日 | movie
『出エジプト記』

彭浩翔(パン・ホーチョン)、サイコー。天才。毎回思うけど、今回は、間違いない(古)。この人、ヤバいですよ。
この物語を思いついた直接のきっかけは、子どものころから「どうして女の子は誘いあわせて連れ立ってトイレにいくのか?」とゆーのがとっても疑問だったことだそーだが、それだけなら誰でも思いつく。ぐりだって不思議だ(ぐりは“連れトイレしない派”だった)。
けどそこから「もしかしたら男に聞かれたらまずい陰謀でもあるんじゃないか」なんて妄想が膨らんで、挙句にこんな傑作娯楽映画をつくっちゃうってのはまったくフツーじゃない。そんなことあるわけないでしょ!
だからこの映画は見た目はすっごくシリアスなサスペンスなんだけど、設定がコメディなんだよね。たまたま主人公ジム(任達華サイモン・ヤム)が尋問したトイレの覗き犯(張家輝ニック・チョン)が「女が男を殺す計画の打合せをしていないか捜査していた」と供述したところから物語は始まる。そんなことあるわけない。彼は覗きでつかまった言い訳に奇想天外な作り話をしているだけだ。フツーはそう思う。

ところが、映画の冒頭のシュノーケルと足ひれをつけた水着の警官たちが容疑者をリンチするシーンは、実際に香港の警察でかつて行われていた拷問方法を再現した映像だという(監督の父親が以前警察の仕事をしていて聞いた話だそうだ)。つまり、裁判で容疑者が警察の取調べ方法が違法だと主張しようとしても、水着の警官たちにボコられたなんて証言は裁判官が信じてくれない。そんなことあるわけないでしょ、と。
この「そんなことあるわけない」な実話と、「女はトイレでなにをしているのか」というナゾが結びついちゃうってのが天才の天才たる所以だよね。フツー結びつきませんから。

ストーリーがシンプルなぶん、シナリオも演出も無駄を極力そぎ落とした、非常にストイックな映画にもなっている。
任達華なんか全然喋らない。セットには装飾品がほとんどない。エキストラも必要最低限しか使われていない。この何もなさが画面の緊張感をさらに高めているのだが、実はこういうシンプルな画面をきちんと演出するのにはものすごい技術とセンスが問われる。いろんなモノや情報を加えて画面を満たして間を持たせるのは誰にでもできる。
劉心悠〈アニー・リウ〉はきれいだけど色気もそっけもなくて女優というよりモデルのようだけど、この異様な「さっぱり感」がまた作品の世界観とちゃんとあっている。演技も意外に(爆)上手いし。
任達華はあいかわらずセクシーだよね。喋らないしさほどエロなシーンがあるわけじゃないのにしっかりフェロモンむんむんでございます。ステキ。やっぱ男は50代だよね(確信)。

ゴージャスチャイナ

2007年10月21日 | movie
『雲水謡』

ものすごおおおく、立派!!な映画でびっくり。
目の調子が悪くて海外のニュースサイトをみなくなってたのと、観る予定の映画の情報を意図的に遮断する習慣のせいで、この映画がどういう作品なのかまったく!さっぱり!知らずに観たんだけど、しょーじき、こんなに壮大な映画だとは想像もしてなくて驚きました。
とりあえずあのオープニングはまるっきり『ALWAYS 三丁目の夕日』そっくりだよね(※ぐりはこの映画を観ていない。オープニングだけTVで観た)。VFXを駆使した長回しのクレーンスケッチで、1940年代後半の台北の住宅街の風景が画面に展開する。エキストラはいっぱいいるしセットも豪華だし、このシークエンスだけでもこの映画が並々ならぬ大作だということがわかる。全体にVFXはけっこう贅沢に使用されてたけど、これまでの中国映画にはない完成度だったと思う。クレジットをちゃんとチェックしなかったのでどこの会社がVFXを担当してたかまではわからないけど(だめじゃん)。

40年代の台北。恋に落ちた秋水(陳坤チェン・クン)と碧雲(徐若瑄ビビアン・スー)だが、左翼運動に燃える秋水は国民党政府の追及を逃れて大陸に渡り人民解放軍に加わる。結婚の約束を信じて彼の母親(楊貴媚ヤン・グイメイ)の世話をしながら秋水の消息を探し続ける碧雲。一方朝鮮戦争の前線で軍医として働く秋水は金娣(李冰冰リー・ビンビン)という看護師と出会う。
台湾に始まってチベットで終わる、40〜50年代を舞台にした大恋愛大河ドラマ。壮大です。ここまで壮大にする必要があったかどーか疑問に感じるくらい壮大。しかも物語の始まりが台湾で終わりがチベットってなんか象徴的じゃないですか?はてしなーく、国策映画のにほひをぷんぷんと感じます。個人的に。個人的にね。日本の統治が終わった直後の台湾なのに、日本の面影がきれいさっぱり画面から抹消されてるのも不自然だし(台北とゆーより上海に見える)。
こーゆー大袈裟な映画って趣味じゃないし好きにはなれないけど、作り手の熱意は伝わるし決して悪い映画ではない。単にぐりの趣味にあわないだけ。映画を観た!という満腹感はしっかりあります。観て損するよーな映画ではありません。そこは大丈夫です。
ぐり的にはやはり台湾の女(=碧雲)が愛に敗れ孤独な生涯を送り、解放軍の女(=金娣)が愛する人と添い遂げてともに国家のために殉死する、という結末にも中国映画お約束の価値観のよーなものを感じましたです。

物語が気に入らなくても台本や編集が古くさくてもちゃんと入り込んで楽しめたのは、ひとえに出演者の熱演のおかげだと思う。
ぐりは陳坤にはキョーミぜんぜんないし演技もうまいとはとても思えないけど、眼力は確かにスゴイと思う。芝居がマズくても眼力でオールOK、みたいな(爆)。
ビビも最初の女学生パートのぶりぶり大根演技は学芸会かよ!!なツッコミどころ満載だけど、もおおおおおおお、とーにかく、かわいくってかわいくって、どーでもいっか♪な気分になってくる。ほんっとにかわいい。彼女が画面に映ってるだけで顔がにやけるぐりはヤヴァいですか(ヤヴァイね)。
李冰冰は自己主張の強い活発な女性という、今回ちょっとイメージと違う役柄を体当たりで演じててすごく好感持てました。陳坤、相手役がビビと李冰冰ってええなあ〜。
楊貴媚や梁洛施(イザベラ・リョン)以外にも、見覚えのある俳優がいっぱい出ていて、キャスティング的にもゴージャスでした。