はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト2008(004:塩)

2008年03月08日 14時44分11秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
粗塩を揉みこみながら思ひ出す大きな手をしていたひとのこと
                    空色ぴりか(美利河的題詠百首)

  「揉みこ」むという動作から、夕食用の肉塊に塩を塗しつけているのでしょうか(お腹の脂肪に、という読み方もありますが、ちょっとねえ…)。
  その作業中、ほんのちょっとした触感から、ある人のことを思い出す。
  この場合、あの人の「大きな手」ならこの作業も簡単にできるな、と思ったのではなく、その人自身の「手」の手触りがよみがえったと読むべきでしょう。

  その手の持ち主を恋人と読むこともできますが、僕は父親ではないかと思います。
  「していた」と過去形を用いているので、ひょっとして故人なのかもしれません。
  遠い昔に握って歩いた手の感触が、料理という日常の動作からふっとよみがえる。
  それをやさしく懐かしむ気持ちが、後半のひらがなの連なりで表現されています。