はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト2008(012:ダイヤ)

2008年03月19日 18時45分18秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
ゆっくりと降りる光だ さんざめくダイヤモンドダスト、シーユー ・
                           斉藤そよ(photover)

 「ダイヤモンドダスト」の形容に「さんざめく」が使われたのは初めて見ました。
 「さんざめく」の語感はなんとなく静謐なイメージもあり(「さ」行の効能でしょうか)、不思議に合います。
 初二句も、ダイヤモンドダストの運動に似合っていますね。

 迷ったのが「シーユー ・」です。
 その直前に読点があるので、三・四句と繋がる語だとは分かるのですが、誰に向かっての言葉なのか。
 普通に読めばダイヤモンドダストに対してですが、この歌に登場していない誰かに言っている可能性もある。
 最後の「・」も意味深です。
 シーユー・アゲイン、・ネクストウィークなど時勢にかかわる言葉が続きそうなところを、まるでぶった切るように唐突に終わっている。
 色々と深読みができそうです。

 でもこれは、無理に読み込むお歌じゃないですね。
 むしろすっと読んで、その涼しげな輝きを胸の上で転がして楽しむのが、正しい読み方のような気がします。
 ここまで無理に読み込んできて、いまさら言うのもなんですが。
 中村の趣味だとお思いください。

鑑賞サイト2008(011:除)

2008年03月18日 18時58分09秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
除光液にマネキュア落とし明日よりはふたたび愛を語らぬ戦士
                           橘 みちよ(夜間飛行)

 主体の静かな覚悟と緊張感が伝わってきます。
 「明日よりは」から、歌われている時刻は夕方から夜にかけてと推測します。
 その暗闇と「除光液」、さらには明日から始まる光(希望)のない戦いの予感が呼応します。
 ただ、上の句の読みにちょっと迷いました。

 「マネキュアに除光液落とし」ならば分かりやすいのですが、「除光液」に「マネキュア」を「落と」す。
 まず思い浮かぶのは、器に汲んだ除光液に、マネキュアを1,2滴落とす。
 場面としてはおもしろいですが、「だから?」となって、下の句につながりません。
 次に考えたのは、除光液を塗って普段の爪に戻していた指先に、再度マネキュアを塗ったという解釈です。
 これなら下の句の「ふたたび」につながるし、風景も見えてきます。
 ただ、マネキュアを指につけるとき「落とす」という形容をするのか?
 お化粧関係には詳しくないんですが、確か小さい刷毛のようなもので塗っていた気がします。

 そう考えると、この読みも違うかなあ。
 違う読みをされた方、教えてください。

鑑賞サイト2008(010:蝶)

2008年03月16日 19時57分39秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
(蝶っぽい)フーッと伸びたくるくるがしゅるっと戻るアレないですか
                         穴井苑子(猫のように純情)

 一読して好きになりました。
 丸々会話調で短歌をつくるって、意外に難しいのです。
 僕も何度か挑戦しましたが、ダメでした。
 どうしても説明っぽくなったり、文法がそろったりしてわざとらしくなるんです。

 この歌では、
「フーッと(息を吹き込むと)くるくる(したものが)伸び(て、それが)しゅるっと戻る」
 そう表現したいところを、わざと舌足らずにして、単語の配置も置き換えている。
 それによって、店頭でもどかしげに説明している主体の焦りが、リアルに伝わってきます。

 また、擬音がそのままタイポグラフィーのように形を表しているのも楽しい。
「フーッ」が、あの「くるくる」がピーンと伸びたように、
「る」が、それが幾重にも丸まっているように見えます。

 正直、ここまできたら初めの( )も無くして、全編もどかしげな説明調で迫ってほしかったなあ。
 まあ、このへんは完全に好みの問題ですが。
 あるいは、この「(蝶っぽい)」は主体の言葉ではなく、第三者の囁きなのでしょうか。
 だとすれば、また違った読み方が出てきますね。

 それにしても「アレ」、なんていう名前でしたっけ?