はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト2008(010:蝶)

2008年03月16日 19時57分39秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
(蝶っぽい)フーッと伸びたくるくるがしゅるっと戻るアレないですか
                         穴井苑子(猫のように純情)

 一読して好きになりました。
 丸々会話調で短歌をつくるって、意外に難しいのです。
 僕も何度か挑戦しましたが、ダメでした。
 どうしても説明っぽくなったり、文法がそろったりしてわざとらしくなるんです。

 この歌では、
「フーッと(息を吹き込むと)くるくる(したものが)伸び(て、それが)しゅるっと戻る」
 そう表現したいところを、わざと舌足らずにして、単語の配置も置き換えている。
 それによって、店頭でもどかしげに説明している主体の焦りが、リアルに伝わってきます。

 また、擬音がそのままタイポグラフィーのように形を表しているのも楽しい。
「フーッ」が、あの「くるくる」がピーンと伸びたように、
「る」が、それが幾重にも丸まっているように見えます。

 正直、ここまできたら初めの( )も無くして、全編もどかしげな説明調で迫ってほしかったなあ。
 まあ、このへんは完全に好みの問題ですが。
 あるいは、この「(蝶っぽい)」は主体の言葉ではなく、第三者の囁きなのでしょうか。
 だとすれば、また違った読み方が出てきますね。

 それにしても「アレ」、なんていう名前でしたっけ?