はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト2008(007:壁)

2008年03月12日 20時37分55秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
コンビニのSS袋揺らしつつふたりしずかに愛しあう壁
                     松下知永(題詠ショコラ)

「SS袋」という具体性が効いています。
缶コーヒーやチョコひとつなど、小さな物を買ったときに入れてくれる袋ですね。
そんなちょっとした物を買った帰り道、「ふたり」は「愛しあう」。

「壁」がその場所であるというのが、初めはよく分かりませんでした。
路地や空き地ではなく、壁。
壁際で抱き合っている、と読むのも無理があります。

何度か読んで、壁で愛しあっているのは「ふたり」ではなくふたりの影かな、と思いました。
そう思ったポイントは「しずかに」。
この言葉と、全体の雰囲気から、時刻は夜半と想像しました。
外灯に照らされ長く伸びた影が壁に映り、まるでパントマイムのように、しずかに愛しあっている。
それにつられて、SS袋も音もなく揺れている。

ちょっと深読みかとも思いますが、そんな光景が浮かんできました。