Robin's Blue
春寒の湖のあお鳥はなぜ翼を閉じたまま死ぬのだろう
宝石をひとつ落とせば岸辺まで波紋が届くはずの霞の
弦楽器鍵盤楽器打楽器の前身たちが織りなす色は
鏡などここに無いのに霧のなか翠の瞳がそこここに浮く
水に掌を地に足を着き天を見る空いた喉から零れ出るもの
寒さとは指の感じることであり水に犯されてゆく草原
これは花 あの冬の日の屋根裏で嘴を翼に埋めつつ見た
白磁器の錬金術に穿たれて紅を濃くしてゆく茶の雫
名前とは呪いのひとつ スプーンで Diddle Diddle 皿を砕いて
傷がまた経験となりわたくしは月を射落とす矢を蓄える
射られるのならばそれでもかまわない空と水とが私を染める
浪々とけものが草を食んでいる笑みとは人の特権ではない
遠吠えは敵意の故か全身にまとわりついた月の油の
疾走を始める獣わだかまる茨の下にこそ道はある
走るはしる奔る光は影であれ空間であれ貫く蛟
少女の羽根が舞い散るところまで落ちて動かなくなる所まで
鳥たちは腹を裂かれる自らが飛べなくなった償いとして
流木は打ち上げられてまた退いて共に引きずられる羽根の陰
揚がるには泥の岸しか目につかず羽根を休めるには木が見えず
牙はただ牙としてのみ使うだけ希望というは呼ばれたとたん
死ぬるにも対価を払う今の世か小指ひとつを彼に差し出す
魔女たちが跋扈するほど夜は無く淡さに沈む街の峰々
古来魔女はけものと共に住むからに亡骸ばかりそばに置くきみ
失ってゆけるのならばそれもまたあなたの山は街に囲まれ
首輪すら受け入れてなお君たちは星と陽のみを光と呼ぶか
かつてこの果てなる郷に「惑星は瞬かない」と言う人がいた
刮目せよ我は無色の力なり同心円に星を包もう
辺境の中心という矛盾すら叶えられることこそ魔法
削ぐものは数あまたあり削がれぬと抗するものも たとえばひかり
交わりはもうすぐそこに横たわる鳥と獣はいま、蒼のなか
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます