はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

Robin's Blue

2012年09月09日 18時25分36秒 | 日詠短歌

     Robin's Blue



春寒の湖のあお鳥はなぜ翼を閉じたまま死ぬのだろう

宝石をひとつ落とせば岸辺まで波紋が届くはずの霞の

弦楽器鍵盤楽器打楽器の前身たちが織りなす色は

鏡などここに無いのに霧のなか翠の瞳がそこここに浮く

水に掌を地に足を着き天を見る空いた喉から零れ出るもの

寒さとは指の感じることであり水に犯されてゆく草原

これは花 あの冬の日の屋根裏で嘴を翼に埋めつつ見た

白磁器の錬金術に穿たれて紅を濃くしてゆく茶の雫

名前とは呪いのひとつ スプーンで Diddle Diddle 皿を砕いて

傷がまた経験となりわたくしは月を射落とす矢を蓄える

射られるのならばそれでもかまわない空と水とが私を染める

浪々とけものが草を食んでいる笑みとは人の特権ではない

遠吠えは敵意の故か全身にまとわりついた月の油の

疾走を始める獣わだかまる茨の下にこそ道はある

走るはしる奔る光は影であれ空間であれ貫く蛟

少女の羽根が舞い散るところまで落ちて動かなくなる所まで

鳥たちは腹を裂かれる自らが飛べなくなった償いとして

流木は打ち上げられてまた退いて共に引きずられる羽根の陰

揚がるには泥の岸しか目につかず羽根を休めるには木が見えず

牙はただ牙としてのみ使うだけ希望というは呼ばれたとたん

死ぬるにも対価を払う今の世か小指ひとつを彼に差し出す

魔女たちが跋扈するほど夜は無く淡さに沈む街の峰々

古来魔女はけものと共に住むからに亡骸ばかりそばに置くきみ

失ってゆけるのならばそれもまたあなたの山は街に囲まれ

首輪すら受け入れてなお君たちは星と陽のみを光と呼ぶか

かつてこの果てなる郷に「惑星は瞬かない」と言う人がいた

刮目せよ我は無色の力なり同心円に星を包もう

辺境の中心という矛盾すら叶えられることこそ魔法

削ぐものは数あまたあり削がれぬと抗するものも たとえばひかり

交わりはもうすぐそこに横たわる鳥と獣はいま、蒼のなか


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