はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 043:曲線

2006年10月22日 15時36分34秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
曲線になれぬ光が分かつ地の日向の側を咲くいぬふぐり
                  (丹羽まゆみ) (All my loving ♪)

 日陰の側に咲くいぬふぐりもあるのでしょう。
 広場に群生して咲く小さな花の集落。そのすべてを取り囲んで照るべき日射しは、自然の法則により影を作らざるを得ない。
 陽の下にある花とそうでない花とでは、青の色合いも違って見えてしまう。
 同じ地に咲く、同じ色の花なのに。

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曲線で出来ているもの抱いている 今夜は雨が降ってさみしい
                      (ことら) (ことらのことのは)

 ひと、いぬ、ねこ、にんぎょう、ぬいぐるみ、まくら、くうき、ひざ…。
 人が抱きたいと思うものは、ほとんどが曲線で出来ています。
 でも、直線に囲まれて生きている現代に、そのことに気づくのはとても難しい。
 そして、どんなに抱きしめても、さみしい時のさみしさは減ずることがないのです。
 ストレートのようでいて、実は緩やかなカーブを描いて作られている。そんな歌です。
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ブランコの曲線で身に付けた知恵 不完全さもたまに快感
         (ケビン・スタイン) (In Other Words・別の言葉で)

 ブランコの登り終わり、降り始めに感じる、体が無くなったような、下半身がむずむずするようなあの感覚。
 あれは振り子による曲線運動だからこそ得られるのだということ。
 不安定さや不完全さがいつでも良いわけではないけれど、それ無しでは得られないものもあるということ。
 子どもたちは、そしてかつて子どもだった人たちは、それを経験で知っています。