はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 040:道

2006年10月06日 19時55分53秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
夕立がにおいも消した ついさっき君と歩いた道はもうない
                    (かっぱ) (きゅーりをこのむ)

 ふと景色に目をやり、となりを歩いていた人にすぐ目を戻した
とき、すでに顔が判じがたいほど暗さが増している。
 世界が別の世界に移行してしまう時間帯。
 西洋では「トワイライト」、日本では「逢魔が刻」。
 放っておいても消えていくはずの旧世界に、ほんのひとときの
夕立がとどめを刺した。
 後ろに伸びているはずの道を振り返らなくても、主体にはそれ
が解ったのでしょうか。

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砂利道をならさぬように靴を脱ぐそれだけ夜空は高いところへ
            (末松さくや) (旅人の空(待ち人の雪別館))

 「ならさぬように」は「鳴る」と「均(なら)す」の二つの意味が込
められているように思います。
 ほんの少しの音、または地形の変化も見逃さぬほど、今夜の
空は澄みきって高い。
 そんな夜空にかろうじて対応できるのは、生まれ持った素足
だけ。
 あらゆる理屈を超えてそれを理解した主体は、そっと靴を脱い
だのでしょう。

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歩道橋 錆びた手すりに耳をあて 極秘の通信している少年
                   (幸くみこ) (そこそこがんばる)
 
 やりましたねー、この遊び。
 錆の匂いのする歩道橋を小石で叩いたり擦ったりすると、反対
側で耳を当てていた友達が
「聞こえる聞こえる!」
と大声ではしゃぐ。
 ときどき、ひとりで手すりに耳を当てていても、様々な音が聞こ
えてきました。
 車の振動、歩行者の足音、それからどうしても説明できない不
思議な物音…。
 未知の生命と「極秘の通信」をしていたのかもしれません。

 個人的には、2つの文字あけは無くても大丈夫かな、と思いま
した。