はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 039:乙女

2006年10月03日 20時48分24秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
闇に落ちゆく陽を浴びて踵(かかと)から「ごめん」と思う ようやく乙女
                      (西宮えり) (aglio-e-olio)

 「踵」からじわじわと感情が湧き、体を満たしてゆく。
 子ども時代にはなかった経験に、自分が次の段階
に進んだことが、おぼろげに分かります。
 その瞬間に自分を第三者として冷静に見つめること
は、とても難しいと思われるので、「ようやく乙女(に
なった)」と思ったのは、おそらく主体ではないでしょう
(少なくとも、その時点の主体ではないでしょう)。
 では誰か?
 思ったのは「闇に落ちゆく陽」、と考えるのも、楽しい
かもしれません。

  ----------------------------

名も知らず夫がかの日くれし花 乙女桔梗の紫やさし
                         (鈴雨) (鈴雨日記)

 「乙女桔梗」は「ベルフラワー」とも呼ばれる、直径2㎝
程度の群咲花。
 哀しくなるほど明るい、あるいは青い紫(白もあるそう
です)。
 鉢植えをプレゼントされたのでしょうか。
 いえ、野に咲いていた釣り鐘型の花弁をふたつみっつ、
摘んできて手渡したのでしょうか。
 「かの日」を、その人を象徴する花。
 「くれし」が、なぜか「暮れし」とも読めてしまい、一字あ
けとともに哀しさを増している気がします。