はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 012:噛

2006年03月22日 20時16分15秒 | 題詠100首 鑑賞サイト

校庭の角で唇噛みしめる天下無敵の鉄棒少女
                          野良ゆうき (野良犬的)

  読み方が、いくつかありますね。
  鉄棒なら誰にも負けない少女が新技に(あるいは基本的な技に)失敗し、
  悔しがっている。
  あるいは、かけっこや言い争いに負け、「鉄棒なら…」と思っている、
  とか。
  他にもいろいろあるのでしょうが、いずれにしても一芸に秀でた人は負
  けず嫌いですよね。
  それが魅力でもあり、あるときはマイナスにもなるのですが。

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あんぱんを噛んだ形の美しさ些細な場所に愛は佇む
                      みにごん (MINI'S LIFE blog)

  好きな人は噛み跡さえも美しい、と最初は読んでしまいましたが、そう
  ではなく、その人のあんぱんを噛んだ形を見て、「ああ、美しいなあ」
  と思ってしまったのですね。
  これが恋愛に発展するかどうかはともかく、こういった形の「愛」は、
  びっくり箱のように日常に潜んでいるのでしょう。

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噛み終えたガムを譜面の一枚に包んで放り投げる日曜
                佐原みつる (あるいは歌をうたうのだろう)

  佐原さんの歌は、いつも「リズムがよいなあ」と思います。
  意味を考えるよりも、まず何度も口ずさみたくなるような。
  で、口に出した後に、ちょっと「ん?」と立ち止まるところがある。
  この歌で言えば「譜面」。なかなか見つけられない言葉ですよね。
  これが、歌人の穂村弘さん言うところの「くびれ」なのでしょうか。

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あぎあぎと噛めば毛糸は甘くなりからまってゆく君の首筋
                        西宮えり (aglio-e-olio)

  子どものころ、毛糸に限らずよく糸って噛んだ記憶があります。
  噛んでいくうち微妙な味がしてくるんですよね。
  本当に甘いわけじゃないけれど、あの味がよみがえってくるような気
  がします。
  下二句は、残念ながら読み切れませんでした。
  雰囲気としては伝わってくるものがあるんですが…。申し訳ありません。