はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 008:親

2006年03月19日 18時29分24秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
確率は1/1000000らしい親ゆび姫の棲むチューリップ
                           暮夜 宴 (青い蝶)

  漢字ではなく「1/1000000」と書いて、いちじゅうひゃくせん…と
  読む人に数えさせることで、自然にこの歌への移入を助けています。
  具体的に言われると、なんだか探してみたくもなります。
  では、桃太郎は?かぐや姫は?

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「親日」をふた言目にはひけらかす医者の後妻が切りわける菓子
                           謎彦 (ジャポン玉)

  このお医者さんはどこの国の方でしょうか?
  何国人でも、すっと嵌りそうな気がします。
  その斜め後ろで、少し若い日本人の奥さんが、無言でお菓子を切り分けて
  いる。
  伏し目がちな奥さんの横顔、包丁の鈍い光が見えるような気がします。

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親ゆびの指紋の天気図によれば夜はしばらく明けないらしい
                       かっぱ (きゅーりをこのむ)

  深夜、窓から暗い闇を眺めながら、無意識にガラスに掌を置く。
  冷たさに手を離すと、親指の指紋がガラスに付いている。
  その指紋越しに、また闇を眺める。
  ひとり勝手な読みですが、そんな情景が頭に浮かんできました。

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親愛なるわたくし様へ日だまりは今でも不得手ですの貴女は?
                         ハナ (象の求愛ダンス)

  自問自答、と簡単には読めない緊迫感が、敬語によるユーモアに包まれて
  います。
  声に出して読んでみると、リズムの良さとともに、そのことがいっそう
  際だちます。
  特に始めの二句がお気に入り。最後の「貴女は?」も極まってます。