はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 007:揺

2006年03月15日 19時31分21秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
振り切れぬままだからいい空を見てつま先ついて揺らすブランコ
                      里坂季夜 (コトノハオウコク)

  大きく振りたいときは足を振る。ぼんやり揺れていたいときは足でつく。
  子どものころ感じていた、ブランコの感触を想い出します。
  「ままだからいい」が、意味としても、音感としても、とても気持ちいい
  です。

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揺さぶってすがりつくなどできなくてただ立ちつくすだけだった夜
                            ドール (花物語)

  初め、失恋の歌として読みました。
  「ドール」さんのブログを拝見し、お母様が亡くなられたときの風景だと
  知りました。
  そう知って、前の数倍の速度で歌意が体に染みこんで行きました。
  あの喪失感を、残酷なほど表しています。
  始めと終わり、そして「立」だけの漢字が、とても。

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待合いのストーブの上かたかたと貧乏揺すりしている薬罐
                 空色ぴりか (題詠100首blog/空色ぴりか)

  風景を想像させる歌に出会うと、僕の癖として想像力(妄想力?)が暴走
  します。
  青森の単線駅の待合室。夜。ひとりの旅人が次の列車を待っている。
  部屋の中には、背負い駕籠を下に置いた皺深いおばちゃんたち。
  語られている言葉は、まるで異国語のよう。
  さっきから薬缶はかたかたとうるさく、窓は結露が幾筋もしたたり落ちて
  いる。
  雪はさっき止んだようだ。
  …いやあ、思いきり妄想させていただき、ありがとうございます。

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窓ぎわに揺りかご在りきカーテンは夕陽の朱のまだらまだらに
                          みなとけいじ (海馬)

  「まだらまだらに」がとても想像力を刺激します。
  電線や電柱、建物などの影でしょうか。
  夕陽の暖かみが所どころ影になっている。
  揺りかごには赤ちゃん?しかし、ふつう西日の当たる窓際に赤ちゃんは
  寝かせません。
  なにか物語があるのでしょうか。想像させます。