09年2月24日の衆院財務金融委員会でのこと。「一時期、会社は株主のものという誤った考えが広まった。会社は株主のものという考え方は私にはなじまない」との与謝野馨財務、金融・経済財政担当相の発言が波紋を呼んだ。
「非正規社員切り」など、リストラの背景には、与謝野大臣でさえ指摘せざるを得ない「株式資本主義」の問題が横たわっている。「会社は株主のもの」として株主の利益を最大限にし、配当を高め、株価を上げるためにリストラや企業の合併・買収も大いにやるべきだ、という圧力である。
この背景には、一連の金融「自由化」と大企業の利益を最大限に追求しようとする「構造改革」路線がある。
「金融ビッグバン」と呼ばれる動きが、90年代後半から本格化する。外国為替の自由化を突破口に、銀行と証券の垣根の撤廃や、株式売買手数料の自由化、投機性の高い金融商品の解禁など、金融全般に関わる規制緩和がその内容である。日本で自由に金儲けができることを狙った米国政府の強い要請をうけたもので、日本の資金が米国にながれやすくする仕組みがつくられた。
この時期、外国人投資家の日本市場への参入を急激に増やすことになった。2003年度版「通商白書」も当時、株式保有比率を拡大した外国人投資家に注目し、背景に「一連の金融規制緩和が行われたことが考えられる」と書いたのである。
さらに、長期間続く日本の超低金利・金融緩和政策が、投機資金の調達を助け、市場の投機化を加速させた。
企業経営には関心はなく、短期的売買で利益を上げることだけが目的であるヘッジファンドなど投機集団の進出によって、日本の株式市場は、乱降下を繰り返す不安定な市場に変貌したのである。こうした背景に沿って、企業の要求は、1990年代半ばからの労働者派遣法などの自由化として実現されていったのである。
株主への情報提供を名目とした企業の決算開示がそれまでの年1回から4半期(3ヶ月)ごとになることで、短期的な利益を株価上昇を求める株主の圧力はさらに高まることになった。加えて、会計時の価格で資産を評価する時価会計が行われたことで、株価などの金融資産の価格が、企業業績にも直接影響するようにもなったのである。
金融「自由化」、規制緩和路線の害悪は、企業に「誤った考え方」をまん延させ、雇用という日本経済の土台をむしばむ羽目に陥し入れているのである。 〈続く〉
※参考 しんぶん赤旗
▼投資ファンドの圧力ールールある経済社会めざし 5
▼短期期利益追求型の圧力ールールある経済社会めざし 4
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