民主党3代目の野田政権を「自民党以上に自民党的政権」と批判したのは27日、衆院本会議で行った日本共産党の志位和夫委員長。自民党政治を変えてほしいと言う政権交代の国民の期待をことごとく裏切る野田政権。国政を担う資格なし。衆議院を解散し、審判を仰ぐべし。
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2012年1月28日(土) 志位委員長の代表質問 衆院本会議
「政権交代」に託した国民の願いを裏切った自覚と反省はあるか
私は、日本共産党を代表して、野田総理に質問します。
2009年夏の総選挙での「政権交代」に国民が託したものは、「自民党政治を変えてほしい」という願いでした。それから2年半。3代を数える民主党政権によって、この願いは果たされたでしょうか。
野田政権がいま、その政治生命をかけて突き進むとしている、消費税10%への大増税も、米軍普天間基地の「辺野古(へのこ)移設」も、国民への公約を裏切るものであるとともに、自民・公明政権が始めた動きを、そっくりそのまま引き継いだものではありませんか。そのうえ、日本の食料と農業、国民生活をアメリカに売り渡すTPP(環太平洋連携協定)参加への暴走です。野田政権は、いまや自民党以上に自民党的政権と言っても過言ではありません。総理、あなたには、「政権交代」に託した国民の願い、「自民党政治を変えてほしい」という願いを、ことごとく裏切っているという自覚と反省はありますか。
なぜこうなったのか。それは、民主党政権が、“アメリカいいなり・財界中心”という旧来の政治の「二つの害悪」に縛られ、そこから抜け出すことができなかったからです。「政治を変えてほしい」という国民の願いにこたえようとすれば、この「二つの害悪」を断ち切る改革こそ必要です。私は、この立場から、国政の熱い焦点となっている問題について、総理の見解をただすものです。
大震災と原発問題――政府の姿勢の根本をただす
大震災への救援・復興――12万人を超える震災失業者に安定した働き場を
まず東日本大震災と原発事故についてです。
大震災から10カ月が経過し、被災地では復興への懸命の努力が続けられていますが、なお33万人を超える方々が仮設住宅などで厳しい避難生活を強いられています。仮設住宅での寒さ対策への万全の措置とともに、医療・介護の負担減免措置を3月以降も継続するなど、被災者の命と健康を守るために、あらゆる手だてをとることを強く求めます。
復興にむけて、さまざまな課題が山積していますが、大震災で失業した12万人を超える方々に、安定した仕事と収入を保障することは、待ったなしです。失業給付の延長をはじめ、職を失った方々が生活に困窮することのないよう、緊急措置を講じることが必要です。同時に、被災した中小企業、自営業者の事業再開は、雇用確保の最大のカギとなっています。事業再開と雇用確保への一体的支援を、急いで、かつ深刻な実態にそくした規模ですすめなければなりません。
国が行っている被災事業所へのグループ補助や、被災者を雇用した企業への賃金補助は、復興の力となっていますが、いずれもさまざまな条件や制限がつけられ、切り捨てられる事業者が多数にのぼっています。再建の意思のあるすべての事業所を支援する仕組みへの抜本的拡充を強く求めます。岩手県宮古市では、県と協力して、被災した店舗、工場などの修繕資金の2分の1を補助し、これが大きな力となって、被災した商工業者の8割が営業再開にふみだしています。こうした自治体の努力を、思い切って応援することこそ、国の責任ではありませんか。答弁を求めます。
原発事故の「収束宣言」を撤回し、除染・賠償に責任を――再稼働など論外
政府の原発事故への対応にたいして、福島県から、政治的立場の違いを超えて、不信と怒りの声が噴き出しています。総理が行った原発事故の「収束宣言」にたいして、福島県議会は、全会一致で意見書を採択し、「避難者の不安・不信をかき立てる」として、撤回を求めています。福島県知事は、政府が、全面賠償に背を向け、県南、会津、南会津の市町村を賠償の対象外としたことに強く抗議し、県内全域・全県民を対象に賠償を行うことを求めています。政府が、最終処分に至る除染の全体方針を示さず、除染が遅々としてすすまないもとで、「国と事業者は除染に全面的責任をもて」「国の責任で18歳までの子どもの医療費を無料にせよ」という強い要求が寄せられています。県内の原子炉10基すべての廃炉を求める意見書も、福島県議会で全会一致で採択されています。総理は、「オール福島」のこれらの痛切な声にどうこたえるのか。しかと答弁を願いたい。
総理が、「収束宣言」と一体に、原発再稼働に取り組むと表明したことも、きわめて重大です。政府は、ストレステスト(耐性試験)を再稼働の口実にしようとしていますが、「やらせ」を行った電力会社が実施し、「やらせ」を組織した保安院が審査したテストなるものを、いったい誰が信用しますか。原発事故の原因は多くが未解明であり、放射能被害がどこまで広がるかもわからない状態です。昨年9月の予算委員会で、私の質問にたいして総理は、再稼働について、「事故の究明がすべてのスタートの大前提」と答弁しました。この答弁にてらしても、再稼働など論外だと考えますがいかがですか。
「社会保障と税の一体改革」――三つの大問題と日本共産党の提案
大震災からの復興にどういう影響を及ぼすと認識しているのか
政府が、「社会保障と税の一体改革」の名で、2015年までに消費税を10%に増税する方針を決めたことにたいして、国民のごうごうたる批判が広がっています。
まず総理にただしたいのは、消費税の大増税が、大震災からの復興にどういう影響を及ぼすと認識しているのかということです。「大震災と原発事故で苦しんでいるさなかに、なぜ大増税か」。被災地のこうした怨嗟(えんさ)の声にどう答えますか。生活と生業(なりわい)の再建に立ち上がろうというときに、被災地も情け容赦なく襲う大増税を強行するなど、常軌を逸した冷酷な政治です。総理には胸の痛みさえないのですか。答弁を求めます。
消費税10%のどこが問題か――三つの大問題をただす
総理は、消費税大増税について、「どの政権でも避けて通れない」というだけで、「なぜ大増税か、なぜ消費税か」について、まともな説明はいっさいしていません。私は、つぎの三つの大問題について、総理の見解を問うものです。
第一
無駄遣いを続けながら大増税
第一は、無駄遣いを続けながらの大増税という問題です。なぜ「コンクリートから人へ」の目玉政策として、公約で中止を約束した八ツ場(やんば)ダム建設を復活するのか。なぜ過去に1兆円もの税金を投じながら事故続きで止まったままの「もんじゅ」を含め、原子力推進予算を4200億円も計上するのか。なぜ重大な欠陥が指摘され完成してもいない、1機100億円もの次期戦闘機を42機も買い入れようとするのか。なぜ年間320億円の政党助成金には、いっさい手をつけようとしないのか。そして、なぜ庶民には大増税を押しつけながら、富裕層と大企業には、年間1・7兆円もの新たな減税をばらまくのか。国民に納得のいく説明をしていただきたい。
第二
「一体改革」というが社会保障は切り捨てばかり
第二は、「一体改革」といいますが、社会保障で用意されているメニューは、切り捨てばかりではないかということです。年金では、まず総額2兆円におよぶ年金支給額の大幅削減をすすめ、つづいて支給開始年齢をさらに引き上げるとされており、高齢者にも現役世代にも大幅カットを押しつけようとしています。医療では、お年寄りを「姥(うば)捨て山」に追いやる後期高齢者医療制度を形だけ変えて温存し、2013年度には70歳から74歳までの医療費窓口負担の2割への引き上げをすすめようとしています。保育所探しを保護者の自己責任にするなど、保育への公的責任を投げ捨てる「子ども・子育て新システム」を導入しようとしています。これらは、民主党がかつてあれだけ批判していた自公政権時代の社会保障切り捨て路線の復活そのものではありませんか。
第三
国民生活に壊滅的打撃、経済も財政も共倒れ
第三は、消費税10%への大増税が、国民生活にはかり知れない打撃を与え、経済も財政も共倒れになるという問題です。
1997年の橋本内閣による消費税5%への増税など9兆円の負担増は、当時、回復しかけていた景気をどん底に突き落としたうえ、景気悪化による税収の落ち込みと、「景気対策」のための財政支出によって、国と地方の借金がわずか4年間で200兆円も膨らむという財政の大破たんも招きました。総理自身、野党時代の国会質疑で、9兆円負担増を、「もっとも愚かで、もっとも無意味で、破壊的な経済政策」と指弾していますから、この大失政の惨憺(さんたん)たる結果は十分承知しておられると思います。
ところが、あなたがいま強行しようとしている消費税10%への大増税は、1997年の9兆円負担増と比べても、はるかに「破壊的な経済政策」であります。まず、今回の負担増の規模は、消費税増税だけでも13兆円、年金支給額の切り下げなどを含めると総額16兆円にものぼります。そして、今回の大増税は、日本経済の長期低迷と大不況のさなかの大増税です。サラリーマンの年間給与は、97年と比べて55万円も下がっています。「働く貧困層」といわれる年収200万円以下の勤労者は1000万人を超え、赤字に苦しむ中小企業の割合は73%にも達しています。
世界経済危機のもとで、もはや外需頼みの経済成長は不可能です。そのときに経済再生の頼みの綱である家計、ただでさえ冷え込み続けている家計から、16兆円も奪い取って、どうして「経済成長」ができるというのですか。それは、日本経済をどん底に突き落とし、結局は、財政破たんもいっそうひどくする道ではありませんか。くわえて、複数の閣僚から「10%では足らない」という発言がされていますが、総理は、消費税率のさらなる引き上げが必要だと考えているのですか。答弁を求めます。
社会保障拡充と財政危機打開のために――三つの柱の政策の実行を提案する
それではどうやって、社会保障拡充と、財政危機打開のための財源をつくりだすか。日本共産党は、つぎの三つの柱の政策を実行することを提案するものです。
第一の柱は、無駄遣いの一掃と、富裕層・大企業優遇の不公平税制の見直しに、ただちに取り組むことです。浪費型の巨大開発、原発推進予算、米軍への「思いやり予算」をはじめとする軍事費、政党助成金など、無駄遣いに聖域なくメスを入れるべきです。株取引への特別減税をやめ、富裕層に応分の負担を求める税制改正を行うべきです。大企業への新たな減税を中止し、研究開発減税、連結納税制度など、特権的な優遇制度をやめるべきです。増税というなら、まず富裕層と大企業に応分の負担を――これが民主的な税金のあり方ではありませんか。
第二の柱として、社会保障を抜本的に拡充するためには、それだけでは足りません。つぎの段階では、国民全体で支えることが必要になってきます。その場合も、所得の少ない人に重くのしかかる消費税という不公平税制ではなく、「応能負担」――負担能力に応じた負担の原則、累進課税の原則にたった税制改正によって財源を確保すべきであります。
第三は、第一、第二の柱と同時並行で、国民の暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」に前進することです。労働者派遣法の抜本改正をはじめ正社員が当たり前の社会をつくる、最低賃金を大幅に引き上げ「働く貧困層」をなくす、大企業と中小企業との公正な取引のルールづくりに取り組むべきです。それは、大企業にたまった260兆円にのぼる内部留保を社会に還流させ、国民の所得を増やし、家計を温め、内需主導の健全な経済成長をもたらすとともに、着実な税収増をもたらすでしょう。
日本共産党は、暮らしも、経済も、財政も壊す消費税大増税に、断固として反対をつらぬくとともに、以上のべた税財政・経済の民主的改革に取り組むことを提案します。財界にいわれるままに、庶民の暮らしを踏みつけにする政治から、大企業・財界に、もうけにふさわしい社会的責任と負担を求める政治への大転換が、いまこそ必要であります。総理の見解を求めます。
民主党政権に国政を担う資格なし――衆議院を解散し、国民の審判を仰げ
消費税増税、TPP参加、「辺野古移設」など、あらゆる分野で、国民への公約を裏切り、暮らし、平和、民主主義を壊す暴走を続ける民主党政権に、もはや国政を担う資格はありません。衆議院を解散し、国民の審判を仰ぐことを強く求めて、質問を終わります。(記事全文はこちら)