1月29日の鳩山由紀夫首相の、就任後初の施政方針演説。冒頭からむすびまで「いのちを守りたい」と。けれど、伝わってこないの。ふと、安倍晋三元首相の施政方針演説を思い出す。冒頭からむすびまで「美しい国創り」だった。どちらも美辞麗句をちりばめて具体性がない。
鳩山首相はガンジー師の言葉を引用した。安倍元首相は福沢諭吉の士の気風“出来難き事を好んで之を勤るの心”と引用し、「様々な改革の実現に向け、全身全霊を傾けて、たじろぐことなく、進んでいく覚悟であります」と述べたのだが、意に反してたじろいで政権を投げ出してしまった。
二人とも自分の願望は、語ったが国民の切実な願いをどう実現していくのか具体的方針を語らず。鳩山首相は、小沢幹事長の土地購入資金の疑惑についても一言も触れずじまいで、国民が一番、回答を求めている問題について避けている。
29日に厚労相が発表した非正規労働者の雇い止めの状況は、昨年10月から2010年3月末までの失職・失職予定者は25万6731人にのぼる。年末年始の「公設派遣村」には昨年の2倍近い800人以上がつめかけた。「(失業者らの)いら立ちのようなものを感じた」派遣村を視察した鳩山首相の感想である。であるならば、正規・非正規労働者が汗水流して生み出したもの、莫大な内部留保をため込んでいる大企業に解雇・雇い止めをしないよう求める姿勢が必要なのだが、それは示されていない。
演説では、派遣労働について「抜本的に見直し、いわゆる登録型派遣や」製造業への派遣を原則禁止」と明言したのだが、常用型(労政審の答申では、製造業の派遣について1年以上の雇用が見込まれれば、短期切れの雇用契約反復でも容認)は容認。しかも、その実施は3年から5年先という原則禁止の名の下に“大穴”が空いている。これでは「働くいのち」は守れない。
鳩山首相は演説でマハトマ・ガンジーの「7つの社会的大罪」※を引用した。その1つに「労働なき富」がある。日本共産党・志位委員長の記者会見での記者とのやりとり。記者の一人が「労働の富」とは、母親からの資金提供問題を彷彿させるような表現だったが…」と、実母からの12億6000万円の資金提供を受けた鳩山首相とだぶらせて質問したそうな。
これに対し、志位氏は「引用というのは、時と場合によっては非常に効果的で、その人の知性や理性の深さを示すももになるが、あわない引用をすると自らに降りかかってくる。その典型のような引用だったという感じをうけています」と。
安倍元首相は、「たじろぐことなく」と演説したが、自らに降りかかってきて「たじろいだ」。鳩山首相も自らに降りかかってきて、たじろがないように。大罪だから。
志位氏は、政府の「新成長戦略」でも一部の企業に富が集中したと分析していることをあげ、「では集積した富をどう社会に還元するかは景気問題の対応の焦点だ」と。今後の国会で追及するそうだ。
※インドのマハトマ・ガンジーの慰霊碑に刻まれている「7つの社会的大罪」
「理念なき政治」「労働なき富」「良心なき快楽」「人格なき教育」「道徳なき商業」「人間性なき科学」「犠牲なき宗教」
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