多喜二の「蟹工船・党生活者」(新潮文庫)が例年の5倍の売れ行きで、2万7000部を増刷だという。多喜二の陰ながらのファンとしてもうれしい。
民主文学2008年6月号に、小林多喜二没後75周年「多喜二の文学を語る集い」が特集されています。
そのなかで、青年トーク・「蟹工船」を語るとして浅尾大輔(作家)さん、山口さなえ(首都圏青年ユニオン)さん、狗又ユミカ(フリーター全般労働組合)さんの3人のトークが紹介されています。山口さん、狗又さんは小説「蟹工船」のエッセーコンテストの入賞者です。
狗又さんは、昨年まで派遣労働者でした。「雇用期間の満了の為」「業務縮小の為」と不当な解雇の連続、労基署に相談すれば、「不安定な働き方をしているアンタが悪い」とどやされる。病気で働けなくなって生活保護をうけようと思えば水際作戦で追い返される。そんな彼女が「蟹工船」と現代の派遣や業務請負で働く人と状況が似ていると7つの共通点を挙げています。
1、文字通りの命だけでなく、「小刻みに殺されていく」という表現どおり、自己の尊厳をスタボロにされていく点。
2、「鼻紙や糞紙以下」という表現どおり、「モノ」あるいは「モノ以下」の扱い。
3、健康上の責任をもたない、つまり健康診断をいいかげんに行う点。(私は実際、トルエンやエタノールなどを使用する職場で働いていたことがあるんですが、必ず実施しなければならない「有機溶媒検診」を、しないで作業させられました)
4、中間業者がたくさんいて、マージンむしりとっている。つまり搾取しまくってる点。
5、「蟹工船」に出てくる浅川監督のようなボスハラ上司がはびこっている点。
6、有期雇用なので不安定。
7、政府機関が労働者を守らない点。
彼女は、以上の7点をあげながら一番共感できた点は、7番目に挙げた点を言ってます。彼女は、「蟹工船」の駆逐艦によって、団結した労働者がたちが散らされるくだりを読んで、駆逐艦イコール労基署だ!というんです。病気なって生活保護を受けようと思えば、「…自給800円でもいいから、働いてくださいよ」と追い返される。日本社会の異常さの典型がここに見てとれるのではないでしょうか。
彼女は、共通点を挙げたらきりがないと言いながら、続けてこう言います。「『蟹工船』の舞台となったカムサッカの海や、空一面の吹雪の方が暖かいです。そんな多喜二さんの言葉を借りてですら、もう表現しきれないほどに、想像以上に、雇用環境はかなりアナーキーになっています」「若い世代が雇用制度に従順でいても、生存が脅かされてきてるんで、きれいごとを言ってられない時代ですよ」と。
「蟹工船」に共感、希望というより、一言で言えば「呼応」の方と言います。「昔の蟹工船で働く400人の労働者と、現代の蟹工船に乗って働く自分と呼び合っているんだ!」と。
多喜二さんからこう言われたような気がしますと彼女は立ち上がって、
現代は問題が多様化し、連帯するのが困難だろうが、泣き寝入りしなければ、恐らく勝つことができるだろう。それだけは、忘れないでください。
決して諦めないでください。
それでも、くじけそうになったら、「蟹工船」を読み返し、ぜひ共感を覚えてほしい。…
そうやって、目の前で苦しむ者を、決して他人事だとは思わないから安心してください。
多喜二が現代に生きていることの実感をこう述べました。
今、読まれる理由がひしひしと伝わってきます。多喜二が呼びかけたもの、共有し、「呼応」し、「連帯」すること。
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困難にたじろがず、諦めないで、連帯してたたかうこと。