むかしは、九月に入ると、上野の東京都美術館で院展と二科展がはじまり、”芸術の秋”の到来を実感したものだった。現在、二科展は六本木に移り、院展だけとなり、ちょっとさびしい感じがする。それでも、”ボストン美術館の至宝展”をはじめいくつもの展覧会がここで開催され、多くの人々で賑わっている。
ぼくの”芸術の秋”は、今年も、まず院展から。
第一室に入ると、同人の作品が並ぶ。河口湖の富士山の早朝を描いた、下田義寛の”早晨/氷結する湖”、小野田尚之の”小さな駅”(内閣総理大臣賞)、田淵俊夫の”吉野”、那波多目功一の”古都の春”等、ぼくの好きな富士山や桜の風景にうっとり。いつまでもこの部屋に佇んでいたい気持ち。慣れ親しんでいた後藤純男、鎌倉秀雄両画伯の絵がなかったのがさみしい。お二人とも最近、亡くなられた。昨年は、後藤純男が”夕秋大和”、鎌倉秀雄が”梅花早春”だった。絵ハガキも買っている。
下田義寛の”早晨/氷結する湖”
田淵俊夫の”吉野”
五室の同人作品は、西田俊英の”瀕死の白鳥”。バレリーナと白鳥を並べて描いている。手塚雄二は”新緑の沼”、など素晴らしい作品が並ぶ。梅原幸雄の”おわら/風の騒ぐ”や福王子一彦の”朝陽と三日月”もここ。
梅原幸雄の”おわら/風の騒ぐ”
そして、十一室では、伊藤髟耳の”つぶらじいの木の下”、高橋天山の”春秋遊楽図”、川瀬麿士の”北辺”など。
同人以外では、巨樹が好きなぼくが毎年、楽しみにしている石村雅幸の”一目両曜”。久保孝久の”雪林に差す”、手中道子の”森々”、永井健志の”ゆかり”、村田林蔵の”夕暉”など木々の風景も好き。シロクマの親子の、武蔵原裕二の”歩み”も良かった。
分厚い図録を買わない主義のぼくだから(笑)、ちょっとメモ代わりに写真を撮りたいと思うことがままある。写真撮影を許可してくれるとうれしいのですがね。ブログに載せているのは絵ハガキからのもの。毎年、お気に入りを数枚、買って掲載している。
最後に紹介するのは、分厚い図録の表紙と小さなチケット(写真はこちらから)を飾る絵。今年は川瀬磨士の”白銀”。富士山の絵で締められてうれしい。