今、外出中の電車の中などバッグから取り出して、時々読んでいる文庫本があります。山田風太郎さんのエッセイ集”あと千回の晩飯”です。だいぶ前に、書名と同じ題名で、朝日新聞に連載されたものほか、雑誌類に掲載されたものをまとめたものです。どのエッセイも巧まざるユーモアにあふれ(ときにはブラックユーモアも)、読書中、ついクスクス笑ってしまいます。
老境に入り、あちこちに故障が出てきて、おれの命もあと千回程度の晩飯か、というテーマが主ですから、ご自身の病気の話しや(山田さんは医学校出で詳しいのです)、著名人の死生観など、一見暗い話題が中心です。でも前述のように、クスクスにやにやで少しも暗くありません。もちろん、はじめから明るい話題もあります。そのひとつ、”昭和の美女番付”を今回、紹介してみたいと思います。ついでながら、僕の選んだ”昭和の美女番付”も発表したいと思います。
山田さんの美女選定の基準は、二十代の一番きれいなときで比較する、だそうです。山本夏彦さんから、美人には骨美人と水美人がいて、前者は若い頃の美貌を老境まで維持するが、後者は”梅干しばあさん”になってしまう例が多い(笑)、という話を聞いて、そういう基準にしたようです。
さて、山田さんの選んだ第一位は美智子妃殿下。結婚パレードのときの美貌に驚嘆したそうです。たしかに文句なしです。そして第二位は轟夕起子。これは意外でした。僕らの世代では轟さんは、おばさん役でしかみていませんので、デビュー当時の美貌ぶりはよくわかりません。そして、高峰秀子を3位にあげています。彼女のフアン層の厚さ(梅原龍三郎や谷崎潤一郎もフアン)からして、これも大方、認めるところでしょうか。あれ、あの方がまだ出てこないと、思っていましたら、ようやく出てきました。原節子です。1位にするにはあたりまえすぎるので4位にしたと、弁明しています。そして、5位に、な、ななんと、うれしいことに吉永小百合さまをあげてくださいましたのでございます(笑)。戦後に成年式を迎えて世代の代表として選出したということです。えへん(ボクがいばることはない)。
さて、ボクはまだ三千回ぐらいの晩飯は食べたい、山田風太郎さんより少し若い世代ですが、同様に昭和の美女、5人を選出してみたいと思います。若いといっても、小津安二郎映画など古い映画も結構好きですので、山田さん世代に同感するところもあります。ボクの選出基準も、やはり一番輝いてるときの比較でゆきます。ただし皇室関係は除き、女優さんだけとします。
はじめに、山田さんが選んだ5人の中でボクの選出と共通する二人の女優さんをあげたいと思います。原節子と吉永小百合です。これはもう、文句なしです(笑)。そして、3番目には、一時、小津監督が原節子の後継者と目していたふしのある岸恵子をあげたいと思います。今でもおうつくしいですが、デビュー当時の美貌には文句がないところでしょう。
さて、4,5番目が難しいです。”秋日和”で原節子の娘役をした司葉子も輝くばかりの美しさでしたし、小津作品に出演した、そのほかの女優さんの顔が次々と浮かびます。でも、もう少し若い世代から採用したいと、ボクが参考にしたのが、ボクがほとんど観ている、山田監督の寅さんシリーズのマドンナ役に選ばれた女優さんたちです。昭和を代表する女優さんばかりです。たとえば、一番出演回数の多かった浅丘ルリ子のほか複数回、出演されている女優さんは、サユリストに対抗していたコマキストが応援する栗原小巻、そして松坂慶子、大原麗子、竹下恵子等々です(もちろん小百合ちゃんも岸恵子もマドンナ役で、出ています)。この中から一人、選びたいと思います。どなたが選ばれても、”納得”でしょうが、今回は、”篤姫”人気にあやかって、篤姫の教育係として存在感を示した、松坂慶子にしたいと思います。
さて、もう一人はどなたにしましょうか。ミス日本の肩書をもつ山本富士子、若尾文子もいいですね。でも、ボクは岩下志麻を推薦したいと思います。”極道の妻たち”シリーズ、良かったです。でも、前述の小津作品”秋日和”が映画デビューなのですよ。小津監督が”この人は、大変な逸材だから大事に育てるように”と言ったとか。結局、僕の美女選定も”小津好み”になってしまったようですね。
こんな、のんきな話題で、今年の歳末をすごせるのも、ありがたいことです。あと、3000回の晩飯、目指します。
。。。
平成の美女、5人(笑)。