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TPP協定が本県に及ぼす影響 (発表日:2011年11月8日 TPP協定締結による影響予測について から引用・編集)
知事記者会見(平成23年11月8日火曜日) 記録ページも公開されました。以下はPDFファイルから 1.本県各分野への影響 を引用したものです。
PDFファイルの最後の3ページは「◎TPPにおける分野別交渉状況」という横長の表ですが、山梨県庁各部署のご担当者の皆さんの力作です。数値で具体的に説明できる状況に無いことはTPP情報公開の有り様から分かる事で、ここでは定性的な分析にとどまるのですが、限られた情報からここまで処理されたことは素晴らしいと感じました。
背景色が黄色の部分が、「想定される本県への影響」として、「プラスの影響」と「マイナスの影響」に分けて一覧になっています。この部分がモニターでは読みにくい場合にA4用紙横で印刷すると読みやすくなります。


(1)関税撤廃による産業分野への影響

○ 関税撤廃に関しては、本県製造業ではプラスの影響を予想
 ◇ 関税撤廃の本県商工業への影響については、業種や経営規模等により異なると思われるが、本県製造業としては、対等の競争条件の下で、技術面での強み・独自性が活かせる環境が整い、メリットがあると考えられる。

○ 農業分野では、関税撤廃等によりマイナスの影響を予想
 ◇本県の主な農産物への影響については、米・畜産物を中心に大きな影響を受けることが予想されており、ぶどうやももなどの果樹についても輸入品の増加やワインなど飲料の原料となる果汁の輸入増加等で影響を受けることが予想される。
 ◇また、消費地として期待される中国の不参加や検疫等の関係で、プラスの影響は軽微なものに留まると予想される。

<本県農産物への影響>

 ・果樹では、関税撤廃により価格の低下したぶどう、ネクタリン、さくらんぼ、オレンジ等の輸入生果実が国産果実や本県産果実と競合することが懸念される。また、ぶどう等の果汁の増加は、本県産のワイン用やジュース用の果実と競合するほか、安価な果汁飲料等の増加が、本県産果実そのものの消費に影響することが懸念される。

 ・米については、ブランド米等を除き国内産の9割が外国産に置き換わると懸念されるなど、県内の米作農家への影響は大きいことが予想される。

 ・畜産については、生乳は、輸入乳製品の急増により、加工に回されていたコストの安い北海道産と競合し、非常に厳しい影響が懸念される。また、国内生産量の7 割以上が外国産に置き換わるとされる牛肉、豚肉についても非常に厳しい影響が懸念されるほか、2 割程度が置き換わるとされる鶏肉、鶏卵についても影響が懸念される。

 ・野菜や花き、茶などについては、輸入品の増加も見込まれるが、関係情報が少なく現時点での影響分析は困難な状況となっている。

 ・農産物輸出について本県主要果実の輸入関税は、TPP対象9ヶ国のうちの6ヶ国(シンガポール、マレーシア、チリ、ブルネイ、ベトナム、ペルー)とは、すでに経済連携協定(EPA)を締結済(0%か段階的削減・撤廃で合意)であり、EPA未締結のアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアについても低率もしくは0%となっている。また、消費地として期待される中国の不参加や検疫等の関係で、TPP参加によるプラスの影響は軽微なものに留まると予想される。

(2)貿易円滑化における影響

○ 貿易手続きの円滑化は、輸出面ではプラスの影響が想定される。農産物については、検疫の手続きも必要なことから影響は軽微なものに留まる。
<プラスの影響>
 ・輸出を行う本県製造業にとっては、手続き面でのメリットがあると考えられる。
 ・税関手続きの簡素化は、果実輸出にはプラス。しかしながら、農産物の輸出入には、税関と検疫の二つの手続きが必要であるため、税関の手続きが簡素化されたとしても、本県産果実の輸出促進のアドバンテージは軽微。

(3)衛生植物検疫分野における影響

○ SPS(衛生植物検疫)では、現在、農産物が検疫上輸出できない国の減少(輸出できる国の増加)というプラスの影響が考えられるが、交渉中の9ヶ国ではその影響は限定的。保護水準が下がる場合には、病害虫や伝染病の発生リスク、食品安全へのリスク等が高まる恐れ。

<プラスの影響>
 ・ぶどう、ももなどの本県産主要果実の輸出については、TPP参加対象国のうち、検疫証明なしで輸出可能なのは、シンガポール、マレーシア、相手国の輸入許可書が必要なのはブルネイ、ベトナム、その他の国については、検疫上輸出が困難な状況。交渉が進展することにより、輸出可能な国が増加する可能性があるが、鮮度保持、輸送コスト等が課題。

<マイナスの影響>
 ・国際基準との調和を義務付ける規定が盛り込まれ、日本が適切と考える検疫上の保護水準を確保することが難しい場合には、重要病害虫の国内発生リスクが高まる。
 ・家畜の衛生基準が一律適用され、検疫等の防疫措置水準が下がる場合には、家畜伝染病等の国内発生リスクが高まる。
 ・検疫のルールが一律に適用されることとなり、日本が適切と考える検疫保護水準の確保ができなければ県内においても食品安全へのリスクは高まる恐れがある。

(4)貿易の技術的障害及び貿易救済分野

○ TBT(貿易の技術的障害)及び貿易救済(セーフガード)の分野では、輸出関連産業等においてルールが統一される等のプラスの影響が期待される。

<プラスの影響>
 ・製造業・サービス業等においては、ルールが統一されることは有意義であり、特に日本の規格でルールが統一された場合はメリットがある。

(5)政府調達分野

○ TPP参加国の調達基準額は、現行WTO基準の中央政府で1/2 以下、地方自治体で1/3 以下が想定されているため、適用された場合には外国企業との競争による国内・地域企業の受注機会の低下、対象範囲の市町村への拡大、調達及び執行における地方自治体の事務負担増加等が懸念される。

<プラスの影響>
 ・現行のWTO政府調達協定よりも、政府や自治体の調達基準額が引き下げられた場合、外国企業・県外企業等の入札への参加増が見込まれ、競争性や透明性の向上や調達額の低下等が想定される。

<マイナスの影響>
 ・現行のWTO政府調達協定よりも、調達基準額の引き下げや市町村への適用範囲の拡大等があった場合、外国語による公告文書の作成など、公告・契約に係る県及び市町村の事務負担が増大する懸念。
 ・一般競争入札の増加に伴い物品等が納品されるまでの長期化・遅延の恐れ。
 ・建設工事の場合、県内業者振興施策として取り組んできた「県内企業への優先発注」が適用できず、県内企業の受注機会が減少。
 ・物品調達の場合にも、「県内企業への優先発注」が適用できず、外国企業等の参加拡大により、地元業者の受注機会が減少(現在検討されている調達基準額600万円以上に該当する発注案件は、情報機器等の物品調達において多い)
 ・設計業務の多くは国際入札となり、地域のコンサルタント業者に影響。

(6)知的財産分野における影響

○ 知的財産分野では、本県企業における優れた技術や研究実績保護等の面でプラスの影響が期待される。

<プラスの影響>
 ・交渉の過程で知的財産の十分で効果的な保護が図られる場合は、本県企業の優れた技術や研究開発の実績を守ることができ、プラスとなる(技術立国としての強みが生かせる)

(7)越境サービス分野

○ 競争性や透明性の向上、調達額の低下等が期待される一方で、競争の激化等による事業者の収益悪化、質の低下等が懸念される。

<プラスの影響>
 ・競争性や透明性の向上や調達額の低下等が想定される。

<マイナスの影響>
 ・医療・福祉・介護サービスの分野では、安価な人件費による外国企業の参入により、既存の事業者の事業収益、職員雇用や利用者への対応の低下が懸念。
 ・資格・免許の相互承認には、日本の国家資格制度の趣旨を踏まえた検討が必要。

(8)その他

○ その他の「原産地規則」「競争政策」「商用関係者の移動」「金融サービス」「電気通信サービス」「電子商取引」「投資」「環境」等の分野における影響については、国等からの情報提供が少ないため、現時点では不透明な状況


PDFファイルを開いた時の左目次で 10/24 からは、「TPP協定に関する資料・情報の整理」 として、
 1.TPP(環太平洋パートナーシップ Trans‐Pacific Partnership)協定の概要
 2.日本とTPPの関係
 3.TPP交渉における検討事項
 4.TPPが及ぼす経済効果の試算
 5.日本のEPA・FTAの状況
 6.主な関係団体の意向 ○ TPPに関する推進・反対の意見として、次のような例がある。
という大項目で整理されています。この最後に上記のテーブルがあります。

あるべき国(地域)の形はいかなるものであるかという理念、それを実現していこうとする政策、その経緯(過程)にあって、一つの問題をどのように扱おうとするかの説明。
このTPP調査資料は実に三位一体で遂行されるべき政治行政の理念型を、県庁さんの想いを、表現していると感じました。もちろんその内容については見解は異なるものがありますが、このスタンスを私は素晴らしいと感じています。
資料にはソースにリンクが付されていて、まさにブロガーが書く記事と同様、それ以上です。県庁さん達がそれぞれの得意分野でネットを調べながら資料を整理していく姿を想像して共感を覚えました。
空き缶氏からは見えなかったもの、泥鰌氏からも見えないものが、ここ山梨県にあるじゃないですか(^o^)

交渉に参加しなくてはダメだという意見もあるようですが、日本としてこちらのルールを各国(特に米国)に認めさせることができる切り札があるのでしょうか。それがあるから野田氏は出かけるのでしょう。今、国民に切り札を見せてしまったら勝負にならないというのもわかりますが、国益が守られてTPPのメリットを全ての国民が享受できるようになる切り札があることを期待したい。まさか昭和20年に戻って進駐軍と一緒に帰国するなんて事はないでしょうね。・・・

2011年11月10日 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、TPP「慎重判断を」=民主提言、異論受け修正―野田首相、10日交渉参加表明[時事通信社]



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