ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

九十九谷

2016-02-21 19:42:56 | 風景写真

 九十九谷は、その幾重にも連なる房総の山並みが墨絵のように霞むさまを、近代日本の随筆家である大町桂月(1869-1925)が「鹿野山の九十九谷の眺めは天下の奇観なり」と絶賛し、昭和63年には「房総の魅力500選」に、平成19年には「ちば眺望100景」にも選定されている景勝地である。また、日本画家の東山魁夷(1908-1999)の出世作「残照」は、この眺望を基に描いた作品で、「夕暮れ近い澄んだ大気の中に、幾重もの襞(ひだ)を見せて、遠くへ遠くへと山並みが重なっていた。」と述べている。
 私は、夕暮れではなく雨後の早朝を選んだ。九十九谷の連なりを美しく強調するものは、山肌から沸き立つ靄、または朝霧だと思ったからである。2月7日にロケハンを済ませ、タイミングを待っていたところ、この週末にチャンスが訪れた。21日。午前2時半に自宅を出発し、4時半に一番乗りで到着したが、なんと濃霧で何も見えない。天気予報では、朝から晴れマークであるから、それを信じて車内で夜明けまで仮眠することにした。
 午前6時。空も白々してくると程よい風が霧を少しずつ流し、眼下の山並みが薄っすらと見え始めた。時間とともに変化する景観。上総(かずさ)の里山を感じる現実的な風景と九十九谷らしい日本画的な光景を撮ろうと、あちこち走り回る。少々残念なことに、千葉県は日本で二番目にゴルフ場が多く(ゴルフダイジェスト社刊によると159コース)しかも上総に集中しているため、山を切り開いて造ったコースとクラブハウス、そして舗装道路が景観を損ねてしまうが、動く霧が上手に隠してくれる瞬間を狙ってシャッターを切った。 あいにく東の空に雲があり、太陽がなかなか顔を出さなかったために光芒は見られなかったが、一期一会の光景に感謝しなければならないだろう。

 東山魁夷は、九十九谷について次のようにも述べている。
「刻々に変わってゆく光と影の綾を、寒さも忘れて眺めていると、私の心の中にはいろいろな思いが湧き上がってきた。喜びと悲しみを経た果てに、見出した心のやすらぎともいうべきか、この眺めは、対象としての、現実としての風景というより、私の心の姿をそのまま写し出しているように見えた。」

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

九十九谷の写真

九十九谷
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F11 1/5秒 ISO 100(撮影地:千葉県君津市 2016.02.21)

九十九谷の写真

九十九谷
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F11 1/100秒 ISO 100(撮影地:千葉県君津市 2016.02.21)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (多摩NTの住人)
2016-02-24 07:41:41
これは素晴らしい眺めですね。美しさにしばし時を忘れてしまいそうです。実際に見てみたいものです。
九十九谷 (granma)
2016-02-27 16:19:17
こんにちは。
慌て者なので文章を読まずに写真を見て
信州のどこかの山並みなのかと思ってしまいましたが
房総の山並みだったのですね。
幾重にもつらなる山並みの霧がある風景、本当に素晴らしいです。
一期一会の光景なのでしょうけれど、
努力の賜物のような気がします。
九十九谷 (ホタル)
2016-02-27 21:18:14
多摩NTの住人様、こんばんは。
この景観は、アクアラインを経由すれば都心から1時間ほどで見ることができます。
雲海や霧がないと、絵にはならないのですが、
タイミングが合えば、絶景に変わります。
千葉県 (ホタル)
2016-02-27 21:30:11
granma様、こんばんは。
私は東京生まれ、千葉育ちで、子供の頃から房総には良く訪れていましたが、「九十九谷」にはロケハンの時に初めて訪れました。
雨が降った後に絶対に行こうと決めていたところ、先週に願いが叶いました。
低い山(丘陵)の連なりは、房総ならではの景観で、雨後の霧と靄が、その特徴を強調してくれました。

房総では、もう一か所、撮りたい場所があり、3月の三連休の晴れの時に出かけたいと思っております。春本番の頃なので、他にも色々と撮りたいと思っております。

コメントを投稿