ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態や生息環境を研究し保全活動をしていますが、様々な昆虫や美しい日本の四季
自然風景の写真も撮っています。

「横沢入り」里山保全の実態

2017-03-27 22:26:11 | その他昆虫と話題

 「横沢入り」は、東京都あきる野市のほぼ中央部、JR五日市線の武蔵増戸駅と武蔵五日市駅の中間辺りの北側に位置する「里山」である。48.6haほどの起伏に富んだ丘陵地で、7つの小谷戸と中央湿地から構成されている。それぞれの小谷戸の奥からは湧水が流れを作り、それらが集まって小川となって秋川に注いでいる。
 長年放棄放置されていた横沢入りをJRが宅地開発を行おうとしたが、地元住民の反対で中止。2000年9月には、あきる野市都市計画マスタープランで 「自然とのふれあいゾーン」として位置づけられることになり、地権者であるJRの理解の元、横沢入の保全管理を担おうとする団体・個人が協議会をつくり、保全管理を行うことになった。その後、2005年3月にはJRから東京都に譲渡され、2006年1月に「東京における自然の保護と回復に関する条例」によって「横沢入里山保全地域及び野生動植物保護地区」(里山保全地域 東京都第1号)に指定されている。

 東京都環境局によれば、保全地域は、人の立入りを前提とした公園等と違い、自然の保護及び保全を目的として指定している。つまり、良好な自然の生態系を保護するため、また現在残されている良好な自然を保ち、次代へと引き継いでいくための制度とし、次の5種類がある。

  1. 自然環境保全地域
  2. 森林環境保全地域
  3. 里山保全地域
  4. 里山保全地域
  5. 歴史環境保全地域
  6. 緑地保全地域

 里山保全地域に関しては、雑木林、農地、湧水等が一体となって多様な動植物が生息し、又は生息する良好な自然を形成することができると認められる丘陵斜面地及びその周辺の平坦地からなる地域で、その自然を回復し、保護することが必要な土地の区域としている。

 横沢入りが里山保全地域に指定されてからは、NPO法人、地域住民、農林業団体、地元市と都等で構成する協議会を設置して、基本的には都の定める保全地域保全活動ガイドラインに基づいて保全事業を進めていると言うが、「里山保全地域」に指定される前よりも昆虫や両生類の種数が確実に減っている。
 絶滅したと思われていたヤマトセンブリが発見されるという嬉しい話題もあるが、かつては中央湿地を含む谷戸全体を乱舞していたゲンジボタルは、小谷戸の一つでしか見ることができなくなった。モリアオガエルトウキョウサンショウウオの産卵数は激減し、アカハライモリもほとんど見かけなくなった。オツネントンボやモートンイトトンボも減少しているのである。一時期、アライグマの食害によってトウキョウサンショウウオが被害を受けていることがニュースになり、筆者も食いちぎられた成体を見たことがあるが、根本的な問題は違う。生態系が年々貧弱になっているのである。
 2006年以前のままでは、当然、里山全体の荒廃が進むが、現在の保全事業の内容は、中央部の湿地を水田に戻し、一部の雑木林を萌芽更新のために伐採することが中心となっている。 そもそも、中央部の湿地帯に生息する昆虫や両生類等は以前から少なく、棲み分けをするように周辺部の小谷戸や林縁に多く生息している。にも関わらず、周辺の小さな谷戸は現在も放置状態に近く、荒廃の一途を辿っていることが原因の1つとして挙げられる。保全地域の指定を受けているから、手を付けられない場所もあるのだろうが、生息していた生物は消えていく。
 ガイドラインに基づいて保全事業を行っていると言っても、いくつのも団体から構成されている協議会は、内部で考え方や意見が分かれ、まとまりがない。また、協議会の知見不足も要因であろう。更には一部のボランティアや観察指導者のマナーの悪さも指摘されている。かつて、中央湿地の最下部には、ゲンジボタルの幼虫が多く生息する流れがあったが、ボランティアによって流れが途中から変えられて、現在は渇水し藪となっている。ゲンジボタル減少の一番の原因である。また、中央湿地の最上部には、ヨツボシトンボやマルタンヤンマが生息する小さな池があったが、現在は草原に近い状態になっているのである。過去の状況やどんな昆虫や両生類がどの場所に生息していたのか、そしてそれらの生息条件には何が必要で、何をしなければならないかを知り、実行しなければ、今後姿を見ることはないだろう。

 横沢入りは、現在では様々な整備が施され、“観光地的”な雰囲気さえ漂っている。ボランティアが苦労して作業を行っても、観察指導者が雄弁を振っても、このままでは、更に生態系は貧弱になり、生物多様性も失われていくだろう。

 以下に、2000年頃に横沢入りで撮影した写真を掲載したいと思う。全てリバーサル・フィルム(ポジ・フィルム)で撮影したもので Canon Scan でスキャンして掲載した。
1枚目の小川は、ゲンジボタルが多く生息していたが、ボランティアによって潰されたものである。(現在の様子との比較は、あえて避けるものとする)

参考
東京都環境局/東京都保全地域
東京都保全地域保全活動ガイドライン

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

小川(現在は、藪の中で湿地になっている)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICHROME Velvia100 Professional

小川(流れだけは現存)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICHROME Velvia100 Professional

モリアオガエルの卵塊(この池での現在の産卵数はゼロ)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICHROME Provia400X Professional

トウキョウサンショウウオの卵嚢(この池での現在の産卵数はゼロ)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICHROME Provia400X Professional

トラフシジミとベニシジミ(トラフシジミは激減)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICHROME Provia400X Professional

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

コメント
この記事をはてなブックマークに追加