ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

カトリヤンマのメス

2017-09-26 20:54:35 | トンボ/ヤンマ科

 カトリヤンマ Gynacantha japonica Bartenef, 1909 のオスの静止と静止飛翔(ホバリング)は、自己満足の高い写真が撮れているが、メスの姿は、産卵時に上方から覗き込むようなカットで、しかも枯草などが被る写真しか撮れていない。今年は、本種メスの静止とホバリング、そして産卵の様子を綺麗に写すことを目標にしている。
 産卵に関しては、これまでの撮影地では田んぼの畦が低く、また稲刈りが遅いためにメスが稲などに潜り込んで産卵する。カトリヤンマにとっては、安全に産卵に集中できる環境であるが、 撮影には不向きな場所であった。そこで、今回、知人であるS氏にご教示いただき、これまでとは違った場所にて撮影を行うことにした。

 カトリヤンマの生息地は谷戸(谷津ともいう)で、9月24日現在で田んぼの稲刈りは既に終わっていた。畦の高さも十分にあり、所々、土が露出している。
 13時過ぎから待機ていると、14時半にカトリヤンマのメスが飛来し始めた。ただし、田んぼを低空飛翔した後、すぐに林の中に戻ってしまう。しばらくすると、飛来するメスの数が増え、15時頃には、田んぼのあちこちで産卵を始めた。産卵場所は、田んぼの畔の土が露出している所、刈り取られた稲の根元、草が繁茂した湿地の地面などである。
 メスは、田んぼの上を低空飛行し、時々静止飛翔しながら、産卵に適した場所かどうかを確認している。特に垂直の畔においては、かなり念入りに見ている。産卵可能と判断すると、降り立って地面に産卵管を刺して産卵を開始するが、一ケ所に留まる時間は短い。落ち着いたかと思って近づくと、すぐに飛び立ってしまう。かなり神経質なのだが、こちらがじっとしていると、三脚の間でホバリングしたり、足元の地面で産卵もする。
 カトリヤンマのメスの飛来は、時間が経つにつれて数が増え、おそらく30頭以上はいたのではないかと思われる。私の周囲に常時5~6頭がおり、ホバリングするメスに取り囲まれた時もあった。しかも、それらはすべてメスであり、不思議なことにオスは1頭も現れなかった。

 初訪である今回、ロケハンのつもりで出かけたため、目標である静止とホバリングは何とか撮れたものの、産卵の様子は、所持したレンズでは十分に撮影することができなかった。ただし、この地におけるカトリヤンマの産卵行動は観察でき、その結果から機材選択と攻略方法も明確になった。産卵時期は10月末まで続くので、青眼型メスの撮影を含めて再度チャレンジしたいと思う。

参照:カトリヤンマ(静止)カトリヤンマ(静止飛翔と産卵)カトリヤンマ(青眼型メス)

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カトリヤンマのメスの写真

カトリヤンマのメス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/80秒 ISO 400 -2/3EV ストロボ使用(撮影地:千葉県 2017.9.24 14:33)

カトリヤンマのメス(ホバリング)の写真

カトリヤンマのメス(ホバリング)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:千葉県 2017.9.24 16:20)

カトリヤンマのメス(ホバリング)の写真

カトリヤンマのメス(ホバリング)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:千葉県 2017.9.24 16:20)

カトリヤンマの産卵の写真

カトリヤンマの産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 800 -2/3EV(撮影地:千葉県 2017.9.24)

カトリヤンマの産卵の写真

カトリヤンマの産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 400 -2/3EV ストロボ使用(撮影地:千葉県 2017.9.24)

カトリヤンマの産卵の写真

カトリヤンマの産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/80秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:千葉県 2017.9.24)

カトリヤンマの産卵の写真

カトリヤンマの産卵(若干、複眼と腹部の一部が青いタイプ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/60秒 ISO 400 -2/3EV ストロボ使用(撮影地:千葉県 2017.9.24)

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オオルリボシヤンマ(オス型メス/兵庫)

2017-09-24 21:43:05 | トンボ/ヤンマ科

 オオルリボシヤンマ Aeshna crenata Hagen, 1856 は、ヤンマ科(Family Aeshnidae)ルリボシヤンマ属(Genus Aeshna)で、オスは成熟すると腹部の斑紋が青色となり、メスは腹部の斑紋が緑色と青色の2種類のタイプがいる。青色型(オス型)は変異で遺伝的に決まっており、マダラヤンマ、ヤブヤンマ等のメスでも確認されているが、こうした色のメスが出現する理由については分かっていない。また、オオルリボシヤンマの青色のオス型メスの出現には地域性があり、東日本においては、ほとんど見られないが、西日本では多く見られる。
 今回、オオルリボシヤンマの青色のオス型メスが多く見られるという兵庫県の六甲山系において、その姿を撮影してきた。

 樹林に囲まれたヒメコウホネが繁茂する大きな池。午前9時半から数頭のオスのオオルリボシヤンマが池上5mほどの高さを巡回。10時には、1頭のオオルリボシヤンマのメスが産卵のために飛来した。その後、多くのメスが池の随所で産卵を行っていたが、そのすべてのメスが、腹部の斑紋が青色で、複眼も青緑色をした個体であった。産卵は、ヒメコウホネの浮葉や、伸びた抽水葉、木の杭、枯れ枝などに行っていた。
 個体数が多いので、ただ写真を撮るだけならば難しくはないが、撮影しやすい良い場所で産卵してくれない。「青色のオス型メス」という特徴を綺麗に捉えなければ、片道600kmを走ってきた意味がない。撮るまでは帰らないと覚悟を決めて、ある場所で待ち構えていると、運良く1頭のメスが飛来。手が届くほどの距離で産卵してくれた。
 比較として、過去に長野県内で撮影した通常タイプ(緑色型)のメスの写真も掲載した。

参照:オオルリボシヤンママダラヤンマ

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オオルリボシヤンマ(青色型メスの産卵)の写真

オオルリボシヤンマ(青色型メスの産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 250 -2/3EV ストロボ使用(撮影地:兵庫県 2017.9.23)

オオルリボシヤンマ(青色型メスの産卵)の写真

オオルリボシヤンマ(オス型メスの産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F8.0 1/40秒 ISO 3200(撮影地:兵庫県 2017.9.23)

オオルリボシヤンマ(青色型メスの産卵)の写真

オオルリボシヤンマ(オス型メスの産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400(撮影地:兵庫県 2017.9.23)

オオルリボシヤンマ(青色型メスの産卵)の写真

オオルリボシヤンマ(オス型メスの産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400 -2/3EV ストロボ使用(撮影地:兵庫県 2017.9.23)

オオルリボシヤンマ(青色型メスの産卵)の写真

オオルリボシヤンマ(オス型メスの産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:兵庫県 2017.9.23)

オオルリボシヤンマ(青色型メス)の写真

オオルリボシヤンマ(オス型メスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1600(撮影地:兵庫県 2017.9.23)

オオルリボシヤンマ(青色型メス)の写真

オオルリボシヤンマ(オス型メスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 3200(撮影地:兵庫県 2017.9.23)

オオルリボシヤンマの写真

オオルリボシヤンマ(オスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 1250 +2/3EV(撮影地:兵庫県 2017.9.23)

オオルリボシヤンマ(青色型メス)の写真

オオルリボシヤンマ(オスと緑色型メスの飛翔)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640(撮影地:兵庫県 2013.8.10)

オオルリボシヤンマ(メスの産卵)の写真

オオルリボシヤンマ(緑色型メスの産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320 +2/3EV(撮影地:兵庫県 2016.8.20)

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木々の緑は見納め

2017-09-18 19:15:29 | 風景写真/夏

 大型の台風18号が16日から18日にかけて日本列島を縦断していった。台風の進路が日本海側であったため、東京の雨風はひどくはなかったが、秋雨前線も影響もあり、16日(土)は曇りのち雨で、17日(日)は一日中雨。ただし18日(月)の敬老の日は、台風一過の良い天気に恵まれた。
 この三連休は、計画ならば兵庫遠征の予定であったが、この天候ならば仕方がない。兵庫は次週に延期とし、18日は8月に撮影できなかったチョウを期待して東京の奥多摩方面へ出かけてきた。深い谷沿いの林道を往復6km歩いたが、残念ながら目標のチョウは現れず、ムラサキシジミ、ウラギンシジミ、キタテハが数頭だけ飛んでいた。そろそろチョウの季節も終わりに近いと感じた。こんな時は、自分のモチベーションの原点である目標を見失ったことによる空虚感に襲われそうになるが、周囲の木々に目を移せば、まだ緑が美しく、爽やかな風と共に心身を癒してくれた。(木々の緑は美しいが、正直なところ気休め。目的が達成できなければ、時間と労力を無駄にし、落ち込むのは当然。しかし、いなければ仕方がない。今日はキッパリと諦めるしかない・・・)
 風景用のカメラではなかったが、スナップとして残した。この木々の緑は、今年はこれが見納めになるだろう。次に訪れた時は、きっと素晴らしい紅葉に出会えるに違いない。

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木々の緑の写真

木々の緑
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F6.3 1/60秒 ISO 200 +2/3EV(2017.9.18)

木々の緑の写真

木々の緑
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F3.5 1/320秒 ISO 200 +2/3EV(2017.9.18)

木々の緑の写真

木々の緑
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F9.0 1/30秒 ISO 200 +1 2/3EV(2016.7.24)

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アキアカネとワレモコウ

2017-09-12 21:13:42 | トンボ/アカネ属

 アキアカネが少しずつ色づいてきた。写真は、先日標高1,600m付近の高原で撮影したものであるが、まだ避暑を楽しんでいるかのように多くのアキアカネが見られた。麓の水田では、稲が頭を垂れるように実っていたが、稲刈りはもうすぐ先のようである。あと半月もすれば、成熟して腹部がもっと赤くなったアキアカネが麓で見られるようになるだろう。
 アキアカネの生態等については、以下に記した過去ののブログ記事をご参照いただきたい。

参照:アキアカネアキアカネ(産卵)

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アキアカネの写真

アキアカネ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(2017.9.10)

アキアカネの写真

アキアカネ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200 +1/3EV(2017.9.10)

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モンシロチョウ

2017-09-11 22:41:25 | チョウ/シロチョウ科

 モンシロチョウ Pieris rapae crucivora Boisduval, 1836 は、シロチョウ科(Family Pieridae)モンシロチョウ属(Genus Pieris)で、日本全土に生息し、畑などの身近な環境でよく見られるチョウである。

 モンシロチョウほど身近なチョウには、まずカメラを向けない。絶滅危惧種や美麗な種ばかり撮っていると、目の前を飛んでいても、まったく気にも留めない。かと言って、これまでモンシロチョウを素晴らしく美しく撮っているわけでもなく、生態記録写真もない。昆虫写真を撮る者としては、身近な種を「なおざり」にしてはいけない。
 信州遠征の際、時期的に他の昆虫たちが少なくなってきた中で、このモンシロチョウは健気に花々の中を飛び回っていた。そんな姿に感動を覚えシャッターを切った。逆光で白い翅が透けるようにした。

参照:ヤマトスジグロシロチョウ

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モンシロチョウの写真

モンシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/1250秒 ISO 200 +1EV(2017.9.10)

モンシロチョウの写真

モンシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/3200秒 ISO 200(2010.10.02)

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キベリタテハ(2017)

2017-09-10 19:52:32 | チョウ/タテハチョウ科

 キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae<)/ヒオドシチョウ属(Genus Nymphalis)で、和名にあるように翅表外縁に黄色の太い縁取りがある。翅全体は小豆色でベルベットのような光沢があり、黄色の縁取りの内側には、青色の斑紋が一列に並ぶ。北海道から本州中部(標高約1,000m以上の山岳)以北に生息している。

 昨年、当ブログで「キベリタテハがいない?」という記事を書いた。本年も長野県の北信エリア、東信エリアの北部では、ほとんどその姿が見られないと言う。筆者も、以前撮影した東信エリアの北部(標高1,680m)に8月下旬に行ってみたが、まったく見ることができなかった。しかしながら、東信エリアの南部や南信エリアでは、数多くのキベリタテハが見られた。山梨県内でも復活の兆しがあるようで、過去の時期において減少の原因の仮説としてたてた「異常な気象条件による成長の悪化」と「気象条件による高地への移動変化」は、関係がなさそうである。
 撮影当日は、 エルタテハ Nymphalis vaualbum ([Denis et Schiffermüller], 1775) の翅裏の撮影が目的であった。ヒオドシチョウ属3種をまとめるに当たって、エルタテハの翅裏の写真が無かったからである。標高1,580mの発生地において午前7時~11時まで探索したが、結局、見つけることはできなかった。どうやら、標高の低い越冬地へと移動してしまったようである。
 その代わりにキベリタテハが2頭、その優雅な姿を披露してくれた。毎年、撮影しようと出かけているわけではないが、2013年以来の出会いである。木陰にある獣糞で吸汁した後、日当たりの良い砂利道で翅を開いて日光浴し、その後は近くの白樺の梢で休止。こうした行動を数回繰り返して、どこかへ飛んで行ってしまった。
 キベリタテハは、標高1,000m前後の発生地において、7月下旬から8月中旬、9月上旬頃の3回くらいに分かれて羽化する。7月下旬から8月中旬に羽化した個体は、涼を求めて標高1,500m以上の高山へ移動し、9月中旬前後には標高1,000m前後の発生地に戻り越冬の準備をすると言われている。今回の出会いは、高標高の場所から越冬地へと移動の途中であったのだろう。以前撮影した東信エリアの北部の個体に比べて、若干、色が褪せていた。(参照として、2012年に撮影したキベリタテハの写真も掲載し、下記にリンク先も記した。)

参照:キベリタテハキベリタテハ(動画)

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キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500(2017.9.10)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500 +1/3EV(2017.9.10)

キベリタテハの写真

キベリタテハ(タテハチョウは、前脚2本を除いた4本しか見えない。)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(2017.9.10)

キベリタテハの写真

キベリタテハ(2012年撮影)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200(2012.8.25)

撮影場所の風景

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コオニヤンマ(静止飛翔)

2017-09-07 22:41:08 | トンボ/サナエトンボ科

 コオニヤンマ Sieboldius albardae Selys, 1886 は、サナエトンボ科(Family Gomphidae)コオニヤンマ属(Genus Sieboldius)で、サナエトンボの中では日本最大である。北海道から種子島・屋久島まで分布しており、主に丘陵地や低山地の、周囲に樹林のある砂泥質または砂礫質の河川や小川に生息している。成虫は6月頃から羽化するが、出現期間は長く、9月中旬まで見られることがある。環境省カテゴリに記載はないが、東京都のRDBでは準絶滅危惧種として選定している。
 コオニヤンマの産卵は、メスが単独で流れの上にて静止飛翔しながら卵塊をつくり、時々打水して放卵する間欠打水産卵である。この日は、ミルンヤンマの産卵を撮ろうと、小川の脇で待機していると、コオニヤンマのメスがやってきて、目前でホバリングした後に打水して産卵したが、卵塊を写すことはできなかった。

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コオニヤンマ(メスの静止飛翔)の写真

コオニヤンマ(メスの静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/320秒 ISO 3200 -1EV(2017.8.13)

コオニヤンマ(メスの静止飛翔)の写真

コオニヤンマ(メスの静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/250秒 ISO 32000 -1EV(2017.8.13)

コオニヤンマ(メスの静止飛翔)の写真

コオニヤンマ(メスの静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/2060秒 ISO 3200 -1EV(2017.8.13)

コオニヤンマ(オス)の写真

コオニヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(2012.06.23)

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ハンミョウ

2017-09-06 21:15:56 | その他昆虫と話題

 ハンミョウ Cicindela chinensis japonica Thunberg, 1781 は、オサムシ科(Family Carabidae)ハンミョウ属(Genus Cicindela)の甲虫。本州、四国、九州、対馬、屋久島に分布し、国内に生息する24種の内、もっとも大きく美しい。成虫は春から秋まで見られ、日当たりがよくて地面が湿っている林道や川原などで見られるが、幼虫は河川近くの暗い場所で湿って固くしまった粘土質の土壌中に生息している。
 人が近づくと飛んで1~2m程先に着地し、近づくたびに何度も繰り返すため、その様から「ミチシルベ」「ミチオシエ」という別名もある。ただし、延々と先に飛んでいくことはなく、ある程度の距離まで飛ぶと、途中でUターンして戻っていく。これは、生息地内でも生育場所が限定されているために、その場から離れないようにしているのだと言われている。
 ハンミョウの特徴は、何といっても体の色彩であり、そして鋭い大アゴではないだろうか。成虫が鋭い大アゴで獲物を捕らえる様子は、まるで猫のようであり、斑猫(ハンミョウ)という和名の由来となっている。環境省と各都道府県のRDBに記載はないが、出会う確率は多くない昆虫である。

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ハンミョウの写真

ハンミョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 3200 +2/3EV(2017.9.03)

ハンミョウの写真

ハンミョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 2500(2017.9.03)

ハンミョウの写真

ハンミョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 3200(2010.09.20)

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ハグロトンボ

2017-09-05 21:58:04 | トンボ/カワトンボ科

 ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata (Selys, 1853) は、カワトンボ科(Family Calopterygidae)ハグロトンボ属(Genus Atrocalopteryx)で、本州・四国・九州に分布している。平地や丘陵地の水生植物が繁茂する緩やかな流れに多く見られるが、水生植物がほとんどない流れにも生息している。成虫は5月下旬頃から出現し、9月下旬まで見ることができるが、羽化した成虫は周囲の林床や林縁で未熟期を過ごし、成熟して繁殖期になると流れに戻ってくる。緩やかな流れと、薄暗い林が隣接していることが生息には欠かせない条件の1つである。
 ハグロトンボは、文字通り翅が黒いことが和名の由来であり、黒い4枚の翅をヒラヒラさせながら、水辺をやさしく飛んでいる姿が印象的である。またオスの腹部は金緑色に輝き美しい。地域によっては「神様トンボ」」と呼ばれ、縁起の良い虫として昔から親しまれてきており、女流俳人の第一人者であった中村汀女は、「おはぐろや旅人めきて憩らへば」と俳句に詠んでいる。
 それほど珍しい種ではなく環境省カテゴリにも記載はないが、環境の悪化により東京都のRDBで絶滅危惧Ⅱ類に、青森県では準絶滅危惧種として記載している。ホタル同様に水辺の象徴であるが、全国的に見られる場所が限らてきている状況に不安を感じる。

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ハグロトンボの写真

ハグロトンボ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 2500 -1EV(2017.9.03)

ハグロトンボの写真

ハグロトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/320秒 ISO 800(2011.8.20)

ハグロトンボの写真

ハグロトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 100 -2/3EV(2010.9.25)

ハグロトンボの写真

ハグロトンボ(交尾態)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 3200 -1/3EV(2017.9.03)

ハグロトンボの写真

ハグロトンボ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/30秒 ISO 3200(2017.9.03)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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ミルンヤンマの産卵

2017-09-03 22:24:10 | トンボ/ヤンマ科

 ミルンヤンマの産卵シーンは、昨年と今年、生息地4ケ所を10回訪問し待機することのべ45時間。これまで産卵は目撃できても撮影には至らなかったが、今回ようやく撮影することができたので紹介したい。

 ミルンヤンマ Planaeschna milnei milnei (Selys, 1883)は、ヤンマ科(Family Aeshnidae)ミルンヤンマ属(Genus Planaeschna)で、北海道南部・本州・四国・九州、南西諸島の一部など広範囲に分布する日本特産種のトンボである。
 主として低山地から山地にかけてのやや暗い渓流に生息しているが、谷戸の小さな流れにも生息していることがある。成虫の羽化は6月頃より始まり、8月頃には成熟し、9月を中心に生殖行動が行われ、11月頃まで見ることができる。環境省カテゴリに記載はないが、北海道のRDBでは準絶滅危惧種としている。東京都内では、丘陵地~山間部の沢には必ずと言ってほど生息している。

 さて、ミルンヤンマは、ヤンマ類の中では、産卵に関して一番神経質なタイプなのか、あるいは、産卵行動に関する私の知識不足なのか、これまでオスの静止は何度も撮影しているが、産卵シーンは目撃のみ。今年は、目標である産卵シーンをしっかりと撮りたい。
 先週、先々週は、東京都内のある生息地で挑戦したが、やはり目撃のみ。今回は、知人S氏(ミルンヤンマ産卵とコシボソヤンマ産卵)から撮影の知らせを受け、昨年も訪れた別の沢に的を絞った。この沢は、コシボソヤンマも生息しており、昨年は「コシボソヤンマの産卵」を撮影している。
 午前9時に沢のポイントに到着。気温は23℃で、天候は曇り。待機していると、10時に1頭のミルンヤンマのメスが飛来し産卵を始めるが、朽木ではなく、岩に生えたコケの水際付近ばかりであり、一度、腹部を水中まで入れて産卵していた。水際で産卵するのは、他の生息地では観察したことはなかった。いずれも川岸の高さ1m前後に位置する朽木であったから、興味深い事実である。産卵時間は極めて短く2~3秒ほど。次から次へと移動しながら、様々な場所で産卵を行っており、撮影することはできなかった。
 その後、ミルンヤンマのオスが川面すれすれの高さを往復飛翔しながらメスを探す様子を何回も観察できた。日中は、あまり活動しない黄昏型と言われているが、気温や天候、成熟による差もあるのだろう午前中から活発に探雌飛翔していた。
 しかしながらミルンヤンマのメスは、一向に飛来せず、代わりにコシボソヤンマのメスが何度も飛来しては、あちこちで産卵をしていた。朽木や岩に生えたコケに産卵していたが、コシボソヤンマも水際付近ばかりであり、腹部を水中まで入れて産卵していた。(参考までに写真を掲載した。)また産卵時間は極めて短く2~3秒ほどで、次から次へと移動しながら、様々な場所で産卵を行っていた。

 13時半。晴れ間が広がり、沢に太陽の光が差してきた。気温は24℃。すると1頭のメスのミルンヤンマが飛来した。当初、流れから2mほど離れた林道の山側にある切り株に止まり産卵を始めようとしたが、産卵に適さないと判断したのだろう、すぐに飛び立って川面の上を飛び、木が覆いかぶさった薄暗い岸辺にある朽木の所へ。静かにゆっくりと近づくと、朽木で産卵中であった。不意に近づくと飛んでしまうが、産卵に集中すると至近距離まで寄ることもできる。最初は300mmレンズで撮っていたが、最後は90mmマクロレンズで撮ることができた。この朽木は、柔らかく、飛翔するオスからも目立たない場所にあるため、産卵するのに最適な条件だったのであろう。およそ20分間、朽木の様々な場所に産卵管を刺していた。
 ミルンヤンマの産卵は、午後から夕方に行われることが多いと記載されているものがあるが、筆者のこれまでの観察では、どの生息地も午前10時から夕方までの間に産卵を行っており、特にピークになる時間帯はなく、生息流域を移動しながら随所で産卵を行っている。ただし25℃を超えると不活性になり、涼しい時間帯に産卵しているようである。

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ミルンヤンマの産卵写真

ミルンヤンマの産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/6秒 ISO 400 -2EV ストロボ使用(2017.9.03 14:01)

ミルンヤンマの産卵写真

ミルンヤンマの産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/4秒 ISO 400 -1 1/3EV ストロボ使用(2017.9.03 14:02)

ミルンヤンマの産卵写真

ミルンヤンマの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 0.3秒 ISO 400 -2/3EV ストロボ使用(2017.9.03 13:59)

ミルンヤンマの写真

ミルンヤンマ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 400 ストロボ使用(2017.9.03 14:06)

ミルンヤンマの写真

ミルンヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/30秒 ISO 400 -1 1/3EV ストロボ使用(2011.9.10 16:01)

ミルンヤンマの写真

ミルンヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/20秒 ISO 400 -1 1/3EV ストロボ使用(2011.9.10 16:05)

コシボソヤンマの産卵写真

コシボソヤンマの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400 ストロボ使用(2017.9.03 10:41)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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