ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態や生息環境を研究し保全活動をしていますが、様々な昆虫や美しい日本の四季
自然風景の写真も撮っています。

地味なチョウたち

2017-08-19 19:51:14 | チョウ

 8月の三連休の信州遠征にて撮影したチョウを紹介したい。特に目的とした被写体ではなく、何気なく撮影した地味な種ばかり。普段ほとんどカメラを向けないセセリチョウやヒョウモンチョウ、ヒカゲチョウしか飛んでいなかった。
 あまり撮影しないので未撮影種も多い。帰ってから気が付いたが、2種が初見初撮影であった。

 コキマダラセセリ Ochlodes venatus (Bremer et Grey, 1852)は、セセリチョウ科(Family Hesperiidae)コキマダラセセリ属(Genus Ochlodes)のチョウ。北海道から本州中部や中国山地に分布し、本州では標高1000m程度の高原でよく見られる。
 環境省カテゴリに記載はないが、東京都では絶滅、島根県、山口県では絶滅危惧Ⅰ類に、茨城県、神奈川県、愛知県では絶滅危惧Ⅱ類に選定している。

 コキマダラセセリは、当ブログの昆虫リスト「鱗翅目」で137種類目となる。

 ウラギンヒョウモン Fabriciana adippe ([Denis et Schiffermuller], 1775) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)ドクチョウ亜科(Subfamily Heliconiinae)ウラギンヒョウモン属(Genus Fabriciana)のチョウ。北海道から九州に分布し、山地の草原で普通にみられる。翅表はヒョウモン類では一般的な模様だが、後翅裏には銀白色斑が顕著に現れるのが特徴である。
 ウラギンヒョウモンは、当ブログの昆虫リスト「鱗翅目」で138種類目となる。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

コキマダラセセリの写真

コキマダラセセリ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 200 +1EV(2017.8.13)

ウラギンヒョウモンの写真

ウラギンヒョウモン
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200(2017.8.13)

クロヒカゲの写真

クロヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1/3EV(2017.8.13)

ヒメキマダラヒカゲの写真

ヒメキマダラヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1/3EV(2017.8.13)

ミドリヒョウモンの写真

ミドリヒョウモン(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 800 +1/3EV(2017.8.11)

ミドリヒョウモンの写真

ミドリヒョウモン(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 2000 +2/3EV(2017.8.11)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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翅表が見たいチョウ2種

2016-05-05 19:34:41 | チョウ

 チョウの形態的特徴や美しさは、それぞれ翅の裏側であったり表側だったりする。翅を閉じた姿の撮影は、どこかに止まってくれれば難しくはないが、撮影者としては、翅を開いた表の姿も撮りたいものである。しかしながら翅を開いた表の姿は、なかなか撮らせてくれない種が多い。ミスジチョウの仲間等は、止まれば必ず翅を開くが、ミドリシジミ属(ゼフィルス)の仲間は、朝の活動前や占有行動時でなければ見られない。つまり、それぞれの種の生態や行動を知っていれば可能性は高いのだが、飛ぶ時以外は、 絶対に翅を開かない種もいる。代表的なものは、コツバメアオバセセリである。

 コツバメCallophrys ferrea Butler,1866)は、シジミチョウ科コツバメ属で早春にのみ発生するスプリング・エフェメラルである。ツバメのように敏速に飛んでいてもすぐに草の葉や地面に止まり、春の陽に向けて毛深い体を倒すことが多いので、翅裏の撮影は簡単だが、止まれば頑なに翅を閉じ、翅をすり合わせる行動はしても絶対に開かない。
 アオバセセリ日本本土亜種(Choaspes benjaminii japonica Murray,1875)は、セセリチョウ科アオバセセリ属で、年2回5月と8月頃に見られる。 セセリチョウ科では、日本国内で唯一青色の翅を持つ種で翅裏も美しい。飛翔力が強く、目にもとまらぬ高速で飛翔し、花から花へと移動する。他のセセリチョウ科では、ミヤマセセリのように止まれば開く種や、チャバネセセリのように半分くらい開く種が多いが、アオバセセリは絶対に翅を開かない。
 両種ともに超ハイスピードで飛ぶため、肉眼で見ても翅表の色はかすかに確認できる程度。一瞬を止めることができる写真に賭けるしかないが、どちらも手強い。翅表を写すどころか、飛翔写真そのものが難しすぎる。いつも証拠程度の画像しか撮れない。

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別に公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

コツバメ

コツバメ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.4.8)

コツバメ

コツバメ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

アオバセセリ

アオバセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.8)

アオバセセリ

アオバセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 ストロボ使用(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

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成虫で越冬するチョウ

2016-04-05 22:52:59 | チョウ

 この時期に見られるチョウは、この春に羽化したスプリング・エフェメラルか春型、もしくは昨年の夏か秋に羽化して成虫で越冬したチョウである。 「スプリング・エフェメラル」と「チョウの季節型」については、それぞれの記事を参照いただき、本記事では、成虫での越冬に関して記しておきたい。
 日本に生息するトンボ類で成虫で越冬する種は、記事「成虫で越冬するトンボ」において3種類のみであると記したが、チョウ類では、全体の約10%の種が成虫で越冬する。キタテハ、ヒオドシチョウ、アカタテハ、ルリタテハ、テングチョウ等のタテハチョウ科が多く、キタキチョウ、ヤマキチョウ等のシロチョウ科の一部やムラサキシジミ、ムラサキツバメ、ルーミスシジミ、ウラギンシジミ等のシジミチョウ科の一部がそれに当たる。本記事では、例としてキタテハ、ヒオドシチョウ、スジボソヤマキチョウの越冬前と越冬後の写真を掲載した。

 このチョウ達は、なぜ成虫での越冬を選んだのだろうか?成虫の目的は、どんな種でもただ1つ「産卵して子孫を残すこと」であるが、越冬態が卵や幼虫、蛹に比べてリスクが高いように思われる。成虫で越冬するチョウは、越冬後に産卵するので、確実に冬を越さなければ種が絶滅してしまうのだ。昆虫は変温動物であるから、寒い冬でも晴れた日などでは太陽光で体が温まり、 飛ぶこともあるが、体温が下がれば動くことができず、葉につかまり、または落葉に横たわってじっとしている。特に、季節型を持たない年一化の種は、夏に羽化しているから翅が痛み、ボロボロの状態になっていることが多い。キタテハには季節型があり、秋に羽化した個体が越冬するので越冬後の翅の傷みは少ないが、ヒオドシチョウとスジボソヤマキチョウは夏に羽化した個体であるため、越冬後には翅はボロボロになり、色もかなり褪せているのが分かる。
 チョウの生態は、幼虫の期間が食樹・食草の食べ頃時期と重なるようになっているが、同じ食樹でも越冬態が異なる。オオムラサキの越冬態は幼虫であるが、同じエノキを食べるヒオドシチョウは成虫である。また、スジボソヤマキチョウと近類種のヤマキチョウは、越冬しても翅がボロにならず色も褪せないから不思議だ。オスは秋に交尾を済ませた後に死んでしまいメスだけが越冬する種もいれば、ムラサキツバメのように同じ種のチョウが集団で越冬するものもいる。ルーミスシジミは、未だ年一化なのか、季節型があるのか不明である。
 昆虫の生態は、不思議な部分がまだまだ多く、私の興味が尽きることはない。

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別にブログにて公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像して編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

キタテハ

キタテハ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 320(撮影地:東京都あきる野市 2011.10.18)

キタテハ

キタテハ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:山梨県上野原市 2012.5.6)

ヒオドシチョウ

ヒオドシチョウ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 500(撮影地:山梨県北杜市 2013.06.08)

ヒオドシチョウ

ヒオドシチョウ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県長野市鬼無里 2014.7.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200 -1/3EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.5.3)

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スプリング・エフェメラル

2016-03-23 22:20:57 | チョウ

 スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)は、春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称で、直訳すると「春の儚いもの」「春の短い命」というような意味で、「春の妖精」とも呼ばれるが、春先のみ成虫が出現するチョウもスプリング・エフェメラルと呼ばれている。トンボや甲虫類等では呼ばない。やはり「妖精」はチョウなのだろう。本記事では、以下のスプリング・エフェメラル全種から、北海道に生息する3亜種を除いた8種類を紹介したい。

スプリング・エフェメラルと呼ばれるチョウ

  • ギフチョウ(Luehdorfia japonica
  • ヒメギフチョウ北海道亜種(Luehdorfia puziloi yessoensis
  • ヒメギフチョウ本州亜種(Luehdorfia puziloi inexpecta
  • ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)(Parnassius citrinarius
  • ヒメウスバアゲハ北海道亜種(ヒメウスバシロチョウ)(Parnassius stubbendorfii hoenei
  • ヒメウスバアゲハ利尻島亜種(ヒメウスバシロチョウ)(Parnassius stubbendorfii tateyamai
  • キイロウスバアゲハ(ウスバキチョウ)(Parnassius eversmanni daisetsuzanus
  • ツマキチョウ(Anthocharis scolymus
  • クモマツマキチョウ(Anthocharis cardamines
  • スギタニルリシジミ(Celastrina sugitanii
  • コツバメ(Callophrys ferrea ferrea)
  • ミヤマセセリ(Erynnis montanus

 スプリング・エフェメラルの中でも人気があるのは、何と言ってもギフチョウではないだろうか。雪どけ直後の早春の雑木林で舞う姿は、まさに「春の妖精」である。
 ギフチョウとヒメギフチョウは、たいへん近い種類で姿も形も非常に似ているが、生息地域がはっきと分かれている。これは、ギフチョウの幼虫の食草がカンアオイでヒメギフチョウの幼虫はウスバサイシンを食べることで違いが生じている。食草の分布と重なるようにギフチョウとヒメギフチョウの分布も本州中央部で東と西に分けられている。この分布境界線はギフチョウの学名を取って「リュードルフィア・ラインと呼ばれていて、ライン上にはギフチョウとヒメギフチョウの混在地域が8ヶ所ほど確認されている。

 掲載した種の各々の詳しい生態については、この記事では省くが、これらスプリング・エフェメラルの特殊な生活スタイルだけは記しておきたい。ウスバアゲハは、1年のほとんどの期間を卵で過ごし、ミヤマセセリは幼虫で過ごす。同じ年1化のゼフィルス類の多くは、9ヵ月ほどが卵の期間であるし、国蝶オオムラサキは幼虫の期間が10ヵ月くらいあるので、それほど珍しいことではないが、ギフチョウ、ヒメギフチョウ、ツマキチョウ、クモマツマキチョウ、スギタニルリシジミ、コツバメは、1年のほとんどを蛹で過ごすのである。10ヵ月も蛹のままなのである。ギフチョウをはじめスプリング・エフェメラルの多くが、氷河期の頃から地球環境の変化に耐えて生き残ってきたと考えられているから、これらの生態は種の保存戦略で、それが現在に至っても変わっていないのだろう。
 種類や地域にもよるが、3月下旬頃から5月上旬頃の間の僅か数週間しか舞うことのないスプリング・エフェメラル。この春、是非、実物をご堪能いただきたい。

注釈:画像は左右に配置していますが、500*333 Pixels で掲載しています。スマートフォン等画面が小さい場合は、左右ではなく、上下で表示されます。

ギフチョウ ギフチョウ
ギフチョウ(左:相模原市/右:十日町市)

ヒメギフチョウ本州亜種 ヒメギフチョウ本州亜種
ヒメギフチョウ本州亜種(左:赤城山/右:白馬村)

ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ) ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)
ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)

ツマキチョウ ツマキチョウ
ツマキチョウ

クモマツマキチョウ クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ(富山県)

スギタニルリシジミ スギタニルリシジミ
スギタニルリシジミ

コツバメ コツバメ
コツバメ

ミヤマセセリ ミヤマセセリ
ミヤマセセリ

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チョウの季節型

2016-03-16 19:22:25 | チョウ

 モンシロチョウやキタテハが飛び交う様子が見られるようになってきたが、モンシロチョウは蛹で越冬して、この春に羽化した「春型」で、一方、キタテハは前年の晩秋に羽化して、成虫で越冬した「秋型」の個体である。
 トンボの仲間では、先述のホソミイトトンボ以外は年1化であるが、チョウ類では、1年に一回しか羽化せずに一か月も経たないうちに産卵して死んでしまう種(ギフチョウやミドリシジミ等)や夏に羽化してそのまま冬を越して、翌年の初夏まで生きる長寿の種(ヤマキチョウやキベリタテハ等)がいる。また、一年のうちに何回も羽化する種もいる。こうした種は「季節型」と言って、羽化した時期によって「春型」「夏型」「秋型」に分けられ、それぞれ翅の色彩や形状が異なっているという特徴がある。
 この記事では、代表的な種の写真を掲載しながら、チョウの季節型について紹介したいと思う。

 まず、チョウの季節型には形態的差異が見られる。例えば、アゲハやクロアゲハは夏型の方が春型より大型となり、一方、シルビアシジミは春型の方が大きい。これは、幼虫期の食草の状況と幼虫の成長期間に関係があり、栄養価の高い新芽の時期に比較的ゆっくりと十分な大きさに達するまで成長した後に蛹化へと進めば大型になる。
 他の形態的差異では、外来種であるホソオチョウでは、夏型は春型に比べて尾状突起がかなり長いという違いがあり、キタテハは、越冬する秋型の翅の縁の切れ込みが夏型に比べて深いという特徴がある。キタテハでは、生理的にも夏型は低温に弱く、越冬できるのは秋型である。また、メスの成熟も夏型では羽化後1週間もすれば産卵できるのに対し、秋型では越冬後はじめて卵の成熟が見られるなど大きな差をもっている。ただし、同じく成虫で越冬するキベリタテハやヒオドシチョウは年1化で、夏に羽化してそのまま成虫で越冬するから面白い。
 チョウの季節型による差異で最も顕著なものは、翅の色彩的差異ではないだろうか。サカハチチョウやトラフシジミ、外来種のアカボシゴマダラの春型と夏型は、別種かと思われるほど色彩を異にしている。また、ベニシジミでは春型の方が紅色が鮮やかである。また、キタキチョウやヤマトシジミでは、夏型の方が翅の外縁の黒い部分が大きいという特徴がある。

 チョウの季節型を決定する要因は、幼虫期や蛹期の日長条件が主であり、温度条件が副次的であることが研究で分かってきている。例えば、キタテハでは老令幼虫の日長条件が長日では夏型が羽化し、短日では秋型になると言われ、臨界日長はおよそ13時間であるという。しかし、短日条件下でも高温がはたらくと秋型化が抑制されることが分かっている。ベニシジミにおいても、幼虫期の短日条件で春型、もしくは秋型になり、長日・高温条件により夏型になることが分かっている。
 これまで年1化と考えられていた種でも季節型が存在する可能性も示唆されている。例えば、ルーミスシジミがそうである。ルーミスシジミの詳しい生態は、未だ完全には解明されておらず、特に成虫の発生回数や時期については諸説ある。以前は、初夏に1回の発生と言われていたが、6月中~下旬に第1世代、さらに8月に第2世代、9月に第3世代が発生する(川副・今立, 1956)という説や年2回という説があるが、11月下旬の翅の痛み具合や同属のムラサキシジミとムラサキツバメが複数回発生していることから、少なくとも年に2回以上発生し、夏型と秋型が存在することは間違いないように思う。(参照記事:ルーミスシジミ
 また、季節型(春型、夏型、秋型)の差は連続的なものなので、年5~6回の発生のうちには、その中間型も出現する。例えば、春型初期の成虫から生まれた幼虫が一ヶ月で成長して羽化した個体は、形態的に春型と夏型の中間型になることがある。(参照:ヤマトシジミ(季節型)

 ここに掲載し紹介した季節型をもつチョウは一部にしか過ぎない。私自身、この記事を書きながら希少種を追いかけるばかりに、普通種であるナミアゲハやモンシロチョウの季節型を撮影してないことに気づいた次第である。また、春型だけで夏型を撮っていない種も多いので、時間があれば揃えていきたい。
 もうすぐ春本番で、多くのチョウたちが見られるようになる。季節型というものを念頭に置いてチョウの撮影をするのも有意義ではないだろうか。

注釈:掲載写真のチョウは、同種の雌雄を同じにし季節型の違いが分かるように画像を左右に並べています。
尚、写真は、500*333 Pixels で掲載しています。スマートフォン等画面が小さい場合は、左右ではなく、上下で表示されます。

サカハチチョウ サカハチチョウ
サカハチチョウ(左:春型/右:夏型)

トラフシジミ トラフシジミ
トラフシジミ(左:春型/右:夏型)

ベニシジミ ベニシジミ
ベニシジミ(左:春型/右:夏型)

ヤマトシジミ ヤマトシジミ
ヤマトシジミ(左:春型/右:夏型)

ホソオチョウ ホソオチョウ
ホソオチョウ(左:春型/右:夏型)

アカボシゴマダラ アカボシゴマダラ
アカボシゴマダラ(左:春型/右:夏型)

シルビアシジミ シルビアシジミ
シルビアシジミ(左:春型/右:夏型)

キタキチョウ キタキチョウ
キタキチョウ(左:夏型/右:秋型)

クロコノマチョウ クロコノマチョウ
クロコノマチョウ(左:夏型/右:秋型)

キタテハ キタテハ
キタテハ(左:夏型/右:秋型)

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