ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態や生息環境を研究し保全活動をしていますが、様々な昆虫や美しい日本の四季
自然風景の写真も撮っています。

トンボのハート型

2016-10-06 20:23:06 | トンボ

 トンボのハートは、オスがメスの前胸部(不均翅亜目は頭部、均翅亜目は前胸部)を腹端の付属器でつかみ、メスは腹部後端をオスの腹部の付け根近くに接合した様子、いわゆる交尾態である。他の昆虫の交尾は、雌雄それぞれの腹端にある生殖器を接して行われるが、トンボ類は特殊である。トンボも生殖器は雌雄ともに腹部後端にあるが、オスの腹部後端は、メスを確保するのに用いられ、交接時にはふさがっている。そのため、オスの腹部第2及び3節に副性器という貯精のうがあり、オスはあらかじめ自分の腹部後端をここに接して精子を蓄えている。オスによって前胸部を固定されたメスは、自分の腹部後端をオスの副性器に接合して精子を受け取るため、このようなハート型を形成するのである。イトトンボの仲間で腹部が細く長く、そして柔らかい種ほどハート型はきれいな形になる。
 トンボの愛の形は、まさにハート型なのであるが、メスが他のオスに奪われてしまうと、メスの生殖器に入っている精子が掻き出して自分の精子を渡すと言われている。それゆえ、オスとメスが連結したまま産卵する種が多く、または産卵するメスの周辺で警護している種も見られるが、オスが寝ている時間帯にメスが単独で産卵に訪れる種もある。きっと、ハート型もすこし歪(いびつ)に違いない・・・。

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ホソミオツネントンボ

ホソミオツネントンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200(2012.5.5)

アオモンイトトンボ

アオモンイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 200(2010.8.14)

アオモンイトトンボ

アオモンイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(2010.8.21)

アジアイトトンボ

アジアイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(2010.8.21)

ホソミイトトンボ

ホソミイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400 +1EV(2013.5.6)

アマゴイルリトンボ

アマゴイルリトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/500秒 ISO 200 +1EV(2014.7.6)

ベニイトトンボ

ベニイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F4.5 1/250秒 ISO 320 +1EV(2011.10.1)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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成虫で越冬するトンボ

2016-02-28 18:00:47 | トンボ

 まもなく3月となり、昆虫も越冬から覚め活動を始める。昆虫の越冬態は、卵、幼虫、蛹の場合が多いが、成虫で冬を越す種もおり、オサムシ類やカメムシ類、テントウムシの仲間の他、チョウ類では身近なものでは16種類ほど知られている。トンボ類では、日本国内に生息する約200種の内、成虫で越冬する種は、以下の3種類のみであり、今回は、これらについて紹介したい。

アオイトトンボ科

  1. ホソミオツネントンボ属
    • ホソミオツネントンボ(Indolestes peregrinus
  2. オツネントンボ属
    • オツネントンボ(Sympecma paedisca

イトトンボ科

  1. ホソミイトトンボ属
    • ホソミイトトンボ(Aciagrion migratum

 ホソミオツネントンボは、北海道、本州、四国、九州に分布するが、北海道では極めて局所的で、東北地方でも数は多くない。挺水植物のある池沼・湿地、河川緩流部などに生息し、夏前後に羽化し、しばらくすると林等に移動して過ごす。水辺からかなり離れた所まで移動するが、11月頃になると水辺に比較的近い越冬場所に集まってきて、成虫のまま越年する。越年成虫は、地味な茶色の保護色であり擬態も行う。風当たりの少ない日当たりのよい林縁などの細枝に脚を前に伸ばして頭部を枝に付けるようにして止まるため、枝の延長または分岐した枝のように見えるのである。(写真:1)
 3月になると移動・分散がはじまり、3月下旬頃になると徐々に体色が青に変わる。4月下旬頃の産卵期には、複眼も体もきれいなブルーに変色している。体色の変化は、温度に依存しており、気温が高くなると青色が濃くなっていく。青色に変化した後に気温が低くなると、茶色に戻ってしまう。また、メスは、気温が高くなっても、青く色づかない個体(写真:4)も存在する。アカネ属のアキアカネ、ナツアカネ等は、成熟すると赤くなる。これは婚姻色で成熟した証であるが、オモクロームという色素の酸化還元反応によって、体色が黄色から赤色に変化することが独立行政法人 産業技術総合研究所の生物共生進化機構研究グループによって解明されており、成熟すると体は強い抗酸化作用を持つようになり、赤色に変化することで、日向に止まった際に紫外線による酸化ストレスを軽減するという機能も果たしている可能性があることが分かったが、ホソミオツネントンボの体色変化のメカニズムについては解明されていない。
 ホソミオツネントンボは、環境省RDBに記載はないが、北海道で絶滅危惧Ⅰ類、東京都では絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。

 オツネントンボ(写真:6~8)は、北海道、本州、四国、九州に分布し、平地から山地の水生植物の多い池沼に生息している。7~9月頃に羽化し、やはり林等に移動して成虫のまま越年する。朽木の中や木の皮の間、木の葉が重なり合った所等、風のあたらない場所で越冬すると言われているが、生息場所の状況によっても様々であり、詳しい生態は分かっておらず、筆者は未だに確認できていない。
 気温が17℃くらいになると、飛び回るようになり、春~初夏になると水田や水辺に集まって水生植物の葉に産卵する。ホソミオツネントンボは、体色が青く変化するが、オツネントンボは、雌雄ともに成熟過程で複眼が青くなるだけで、体色は淡い褐色のままでほとんど変化しない。多くのオプシン遺伝子が存在し、非常に複雑な色覚システムを持ったトンボは、基本的に視覚を用いて相手を認識すると考えられているから、生息環境や形態が類似しているホソミオツネントンボとの差別化を図っているのかも知れないが明確なことは分かっていない。
 オツネントンボは、環境省RDBに記載はないが、東京都、千葉県、秋田県、富山県のRDBでは、絶滅危惧Ⅰ類に選定されている。

 ホソミイトトンボ(写真:9~14)は、石川県、栃木県を北限東限とした本州、四国、九州などに分布している。平地や丘陵地の挺水植物が繁茂している湿地や滞水・水田などに生息し、羽化した個体は水辺を離れ、雑木林の中で生活している。
 トンボ類では国内で唯一、夏型と越冬型の季節型があり、夏型は6月頃から見られ、9月頃には姿を消し、越冬型は盛夏頃から現れ、そのまま成虫で冬を越すが、通常の年2化ではないと言われている。夏型が産卵にしたものは、すべて越冬型として羽化するが、越冬型が産卵したものは、一部は夏型として初夏に羽化し、一部は越冬型として盛夏から秋にかけて羽化をするというのである。つまり越冬型には、春に前年に羽化した越冬型が産卵した個体群と、夏に夏型が産卵した個体群が混在しているのである。季節型は、チョウ類では多く見受けられるが、大きさ翅の模様の違いだけで、このような生態的特質は不明である。ホソミイトトンボの場合は、環境変化に対応した種の保存戦略としての生態パターンと考えられるが、そのメカニズムについては分かっていない。また、越冬型の越冬場所やその様子も明らかになっておらず、未知の部分が多い。
 ホソミイトトンボの季節型の形態的な特徴としては、夏型は薄い緑色をしており、一方、越冬型は、当初茶色の地味な色をしているが、翌年4月下旬頃の繁殖期には、ホソミオツネントンボ同様に美しいブルーに変色している。
 ホソミイトトンボは、環境省RDBに記載はないが、埼玉県、千葉県、石川県、愛媛県では絶滅危惧Ⅰ類に、長野県、福井県では絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。

参考文献 他
ホソミオツネントンボの越冬について 井上悦甫 岡山県自然保護センター研究報告(5):1-6,1997
アカトンボの酸化還元反応による体色変化機構 独立行政法人 産業技術総合研究所
トンボの色覚に関わる遺伝子の著しい多様性の発見 独立行政法人 産業技術総合研究所
日本のレッドデータ検索システム

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ホソミオツネントンボ(オス)の写真

写真:1/ホソミオツネントンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200(撮影地:千葉県いすみ市 2012.4.7)

ホソミオツネントンボ(メス)の写真

写真:2/ホソミオツネントンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200(撮影地:千葉県いすみ市 2012.4.7)

ホソミオツネントンボ(オス)の写真

写真:3/ホソミオツネントンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800(撮影地:千葉県勝浦市 2012.6.2)

ホソミオツネントンボ(メス)の写真

写真:4/ホソミオツネントンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/800秒 ISO 3200(撮影地:千葉県いすみ市 2011.6.11)

ホソミオツネントンボの写真

写真:5/ホソミオツネントンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:千葉県いすみ市 2012.5.5)

オツネントンボ(オス)の写真

写真:6/オツネントンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 250(撮影地:福島県会津若松市 2011.8.7)

オツネントンボ(メス)の写真

写真:7/オツネントンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 400(撮影地:福島県会津若松市 2011.8.7)

オツネントンボ(オス)の写真

写真:8/オツネントンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.8)

ホソミイトトンボ(越冬型)の写真

写真:9/ホソミイトトンボ(越冬型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500 +1EV(撮影地:神奈川県 2013.5.6)

ホソミイトトンボ(越冬型)の写真

写真:10/ホソミイトトンボ(越冬型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200 +1/3EV(撮影地:神奈川県 2013.5.6)

ホソミイトトンボ(越冬型)の写真

写真:11/ホソミイトトンボ(越冬型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1EV(撮影地:神奈川県 2013.5.6)

ホソミイトトンボ(越冬型)の写真

写真:12/ホソミイトトンボ(越冬型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400 +1EV(撮影地:神奈川県 2013.5.6)

ホソミイトトンボ(夏型)の写真

写真:13/ホソミイトトンボ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/200秒 ISO 250(撮影地:神奈川県 2016.7.24)

ホソミイトトンボ(夏型)の写真

写真:14/ホソミイトトンボ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/320秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:神奈川県 2016.7.24)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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