細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『永遠に僕のもの』の天使の顔をした悪魔の青春犯罪実話。

2019年07月21日 | Weblog

7月16日(火)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-052『永遠に僕のもの』" El Angel " (2018) K & S Films, Underground El Deseo, Capital Intelectual, S.A.

製作・ペドロ・アルモドバル 監督・脚本・ルイス・オルテガ 主演・ロレンソ・フェロ <115分・ビスタサイズ> 配給・GAGA

88年の「神経衰弱ぎりぎりの女たち」で多くの国際映画祭で受賞して、98年には「オール・アバウト・マイ・マザー」でオスカー受賞などなど。

秀逸なアルゼンチン作品で有名なアルモドバルが、ここではプロデュースに専念した新作が、実在の犯罪少年カルロスの青春を再現したというクライム・ストーリー。

1971年に窃盗常習犯で逮捕された美少年は、多くのかっ払い犯罪を犯していて、いまでもそれから50年以上も牢獄に居るという実在の犯罪の再現ドラマだ。

南米アルゼンチンといえば、カルロス・サラ監督の「タンゴ」で有名で、わたしなどの記憶では、あの情熱的なアルゼンチン・タンゴが歯切れよく耳に残っている。

しかしこの作品は実在の美少年犯罪と、その家庭や友情の実態を描いていて、まるで犯罪に罪悪感を持たない美少年の青春は、まるでヒーロー願望映画の印象だ。  

特に生活に不自由もなく、比較的に裕福な生活に恵まれた美少年が、どうしてここまで常習的に犯罪を侵すのかは、つまりこれが<青春>だった、というテーマ。

ことの重大な悪質さの認識もない犯罪者というキャラクターは、多くのハリウッド映画でも見て来たが、ラテンの陽だまりが背景になっている、というのがコワい。

ちょっとマリリン・モンローの気だるい微笑を漂わせるロレンソ少年には、おそらく多くの女性が母性本能を刺激されるだろうが、わたしなどにはただの不良ガキ。

という視点では、ちょっと飽きのくるクライム・ストーリーで、ぜひ、あれから50年も牢獄にいるという現在の実在人物を、写真でもいいから見たいと思ったが・・。

あのジェームズ・キャグニーの「汚れた顔の天使」の<ベビーフェイス・ネルソン>のような、犯罪臭のまったくない青春映画というのが、不気味だ。

 

■良い当たりのライト・ライナーだったが、好捕される。 ★★★

●8月16日より、渋谷シネクイントなどでロードショー



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