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細越麟太郎 MOVIE DIARY



10月4日(火)10-00 市ヶ谷<シネアーツ試写室>

M-126『シークレット・オブ・モンスター』"The Secret of A Monster "(2015)Scion Pictures / Bow and Arrow Entertainment 英

監督・ブラディ・コーベット 主演・ベレニス・ベジョ、リアム・カニンガム <116分・ヨーロッピアン・ビスタ>提供・日活、Regents.

原案はジャン=ポール・サルトルの短編「一指導者の幼年時代」なそうで、それを元ネタにして、監督は、あるブルジョア家族の息子が育つ日々をスクラップ風に時代差で描く。

1918年のパリ郊外、ヴェルサイユ条約締結のためにフランス大使として赴任していたアメリカ人高官の家族は、古いゴシックな屋敷を借りて家族3人と女中で生活していた。

父親は戦争終結のための外交問題で、本国とパリを行き来していて、家族とは食事したりする時間もなく、母親は神への信仰心が異常に強くて、あまりひとり息子にかまっていられない。

ドラマはそうした不運な環境で孤独を持て余した少年が、徐々に健全な精神状態を歪ませて行くプロセスを、非常に硬派な映像によるオムニバス形式でテーマを区切って描いて行く。 

まさに巨匠ルキノ・ヴィスコンティの貴族のドラマのような格調の高い美術を背景にして、徐々に健全な人間性を失って行く一家の転落を、異常性をちらつかせて行くという、恐怖映画の様相なのだ。

タイトルの雰囲気からすると、まさに怪奇映画か、怪獣映画のようだが、そんな予測とは反対に、硬質な人間ドラマは、時代と環境で歪んで行く無垢な少年の視線を徐々に異常にしていく。

あのアカデミー作品賞の名作「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ監督が審査員長を務めたヴェネチア映画祭で、オリゾンティ部門で監督賞と作品賞をダブル受賞したのも納得できる。

ま、映画としては「羊たち・・」よりも、あの恐怖少年の犯行を描いたグレゴリー・ペック主演の「オーメン」と、その一連のシリーズに似ている少年の設定だが、ここで殺人は、ない。

つまり人間の精神が、どのようにして異常化して、止めようのない殺意を抱く様になってしまうのか・・・その導火線の点火を描こうとしている視点が、格調高い背景で転嫁していく、その恐怖。

一番に不気味なのは、「ポーラX」のスコット・ウォーカーの音楽で、とくに、最終シーンでのミリタリーな行進曲では、凄まじい打楽器による大音響の強烈なサウンドで、このテーマの恐怖感を盛り上げる。

それとなく時代的にはアドルフ・ヒトラーとナチスの台頭を臭わせているが、映像ではまったく別のクレイジーな軍団の行進を強調して、凄まじく威圧的なエンディングとなる。

ただのモンスター映画ではなく、人間の心に中に生まれて来る大量虐殺を思わせる悪魔性が、どのようにして変質して来るかを伺わせる異色作だ。

 

■ピッチャー強襲のライナーが足下を直撃してセンター前。 ★★★☆☆

●11月、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショウ 



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