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細越麟太郎 MOVIE DIARY



9月27日(水)12-30 六本木<FOX映画試写室>

M-111『猿の惑星・聖戦記グレート・ウォー』" War for the Planet of Apes " (2017) Twenties Century Fox / A Chernin Entertainment Production

監督・脚本・マット・リーヴス 主演・アンディ・サーキス、ウディ・ハレルソン <140分・シネマスコープ・4DX> 配給・20世紀フォックス映画

またしても、またもあの「お猿さん」の登場だが、例の1968年にチャールトン・ヘストンが遭遇した<エイプス>とは違って、これは2011年に新たにスタートしたシリーズだ。

「猿の惑星・創世紀(ジェネシス)」でサンフランシスコの製薬会社の研究室でアルツハイマー症の新薬を研究中に、投与した薬剤によって突然に進化したチンパンジーが急成長。

家に連れ帰って飼育していた研究員も、父と子のような親密な関係を保っていたが、あまりの急成長のために、動物擁護施設で飼育することにしたが、ついに脱出。

それで続編の「猿の惑星・新世紀(ライジング)」では、10年後に育ったエイプが、ゴールデンゲイト橋を破壊してカナダの山奥で逃げこんで来た猿たちと組織を作り、人間たちとの距離をおいて生活していた。

その間にも、エイプ同士の闘争があったが、創世記で育てられた英知を持ったエイプは<シーザー>と名乗り、このお猿さん軍団のリーダーとして多くの仲間たちを統率。

ところが軍隊くずれの闘争軍団が、猿たちの平和な森林生活を脅かしてきたが、そのアウトローのリーダーが、いまやアカデミー主演男優賞にもノミネートされた怪優ウディ・ハレルソン。

アンディ・サーキスが演じている猿のリーダーのシーザーも、前作以来の役作りで完全にエイプに成りきっていて、その表情はもちろん、全身で体現する演技は、アカデミー主演猿技賞ものだ。

ほとんど雪の深いカナダのロッキー森林地帯でのロケなので、人間社会の都会的なシーンはまったくなく、ま、「レヴェナント・蘇えりし者」のディカプリオと出くわしそうな奥地は寒々しい。

そこで、アウトローな野蛮軍団と、信じられない数のお猿さんたちが、後半は森林大戦争を展開していくが、とにかく武装したエイプたちの多さには、いかにCG処理とはいえ、凄まじい。

驚くべきは、このエイプ軍団のリーダーを演じているアンディの圧倒的な存在感で、オシの少女を匿って、何かと面倒をみる細かな気配り演技は情感が溢れていて、さすがはシーザーという存在感。

一応は、軍団のアンディの自決ラストと、このエイプ軍団もそのシーザーの非業の殉職で、シリーズは終えることになるのだろうが、多くのお猿さんたちは、次の仕事を探すことになるのだろうか。

 

■センター前の痛打を野手が反らしてしまいツーベース。 ★★★☆☆

●10月20日より、全国ロードショー 



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9月23日(土)11;50 二子玉川<109シネマズ・6番スクリーン>

M-110『スクランブル』" Overdrive " (2016) Overdrive Productions - Kinology -TF1 Films Productions Nexus Factory

製作・ピエール・モレル 監督・アントニオ・ネグレ 主演・スコット・イーストウッド <94分・シネマスコープ> 配給・ギャガ GAGA

この作品は、「ワイルド・スピード」シリーズを手がけている脚本家チームの本を、「96時間」のプロデューサーが、カーレース映画「フラッシュ」のネグレが監督起用の新作。

ということは、カー・アクションがメインの新作なので、小さいGAGAの試写室で見るよりは、どうせ見るならデカーいスクリーンの音響のいいシネコンがグーに決まってる。

で、さっそく公開初日の第一回の午前上映に駆け込んだのだが、まさにあの「ワイルド・スピード」のタイプの、世界の名車をカッパらう大胆不敵な世界名車専門の強盗窃盗団のアクションもの。

といってもマフィアの連中が、コート・ダジュールの要塞のような別荘の特設駐車場にコレクションしていたものを、ゴソッと、全部頂戴しようという大胆不敵な善意のドロボー映画なのだ。

ちょっとネタ疲れした「ワイルド・スピード」に代わって、こちらは若い二人の青年の名車専門の窃盗グループで、おおお、クリント・イーストウッドの実の次男坊が颯爽の主演だから嬉しい。

クリントの長男はジャズのベーシストで、もう数枚のCDを発表して、青山のブルーノートでも数回ライブをしたときに、わたしも再三面会したことのある好漢だが、兄はジャズキチで映画には興味ない。

だから、この次男坊だったか、三男坊か、のスコットはまだ若いのにオヤジの真似をして映画の役者になったが、年齢的には非常に若くて、クリントオヤジが「ローハイド」のテレビ・ウェスターンに出ていた同世代。

まだまだ青二才だが、さすがはサラブレッドの血統種を継いでいて、演技のタイミングや誤摩化し方などはオヤジの同世代の時よりは、なかなか小賢しい演技力は持っていて、今後の大ブレイクは必至だろう。

相棒のフレディ・ソープとチームを組んで、マフィアがオークション会場から盗み出したヴィンテージ・カー数台を、コートダジュールの丘の上の城塞のような豪邸から、全部盗み出そう・・という。

ま、名作「トプカピ」のような知的な手段ではないが、とにかく若さと度胸で全部かっさらってしまうまでのアクション映画で、このストレートな面白さは、バカみたいだが面白く飽きさせない。

それにしても、これだけの名車のキーを、すべて車庫の各車につけっぱなし・・・というのも、かなりドジなマフィアなのだが・・・、ま、それを気にするようなヒマは・・・ない。

オヤジのクリントが見たら苦笑するだろうが、自分の若い時代の同年齢を考えたら、この不良息子はなかなか将来のキャスティングが楽しみで、恐らくは次回の悪事も、もう予定に入っているだろう。

 

■三遊間のゴロが左中間に抜ける間に、俊足で二塁へ。 ★★★☆+

●全国でロードショー中

 


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9月22日(金)13-00 渋谷<映画美学校B-1試写室>

M-109『エキストランド』" Exstrand " (2017) Koto-Productions / extrand.jp

監督・脚本・坂下雄一郎 主演・吉沢 悠、戸次重幸 <91分・シネマスコープ> 配給・コトプロダクション

いろいろと個人的な事情があって、一昨年の秋に長野県上田市の奥にある別所温泉に行った際に、ちょうどお祭りがあって、講堂のイベントに駆り出された。

ま、東京から来た映画評論家というポジションだったので、とくに映画論などではなくて、現地の来場者の質問に応える、というスタイルのトーク・セッションだ。

そのときに、現地のフィルム・コミッションをしているH氏も加わって、いろいろと上田市を中心とした、地方都市での映画製作への協力の体勢などを語ったものだ。

そのH氏が関わっている新作が、この作品なので、さっそく試写を見せて頂いたが、内容はその時の話題と同じ様に、地方ロケでの映画製作への難題がコミックに描かれている。

「東京ウィンドオーケストラ」という作品は見逃したが、その監督だった坂下監督が、自らシナリオと演出をした、上田市のフィルム・コミッションの全面協力で撮影された新作。

ま、地方都市で興行用の映画を製作する苦労話は耳が痛くなるほどに聞くが、当然のように、ほとんどの商業映画やドキュメントも地方都市の協力などで、ロケーションが行われる。  

東京のスタジオでセット撮影される作品は少なく、経費やリアリティの事情から、とくに撮影に協力的な地方都市はロケーション地として活用され、「先生!」の岡山市などが好例。

しかしいかに地方都市が、いいロケーション環境を持っていたとしても、その自治団体の協力次第で、作品は成功もし、失敗してオクラになるという悲惨な例も多いのだ。

それは東京のプロダクションと地方都市のフィルム・コミッションの協力体勢の温度や親密度の差が、モロに作品に反影されるので、プロデューサーの手腕が大きな負担となってくる。

というテーマで、映画の地方ロケーションでの、制作側とのディス・コミニケーションの落差を失笑コミック風に描いているのだが、しかしこれでギャップは解消されるという保証はない。

作品はその「ニッケルオデオン」のような、初期的な映画製作裏騒動を描いているが、こうしたトラブルは、どうも笑えないテーマなのも、困ったものだ。

 

■セカンドゴロを野手がファンブルして、一塁のセーフ判定でモメる。 ★★☆☆

●11月11日より、渋谷ユーロスペース、上田映劇他で順次公開 



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9月22日(金)10-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-108『先生!・・好きになってもいいですか?』(152分・ビスタサイズ)<先生>製作委員会、集英社、ワーナー・ブラザース・ジャパン

監督・三木孝浩 主演・生田斗真、広瀬すず <配給>ワーナー・ブラザース映画

映画のタイトルは、シンプルに『先生!』なのだが、試写では担当者が、ちゃんと「好きになっても・・」と続けていたのが、明快でいい。

青春の初恋映画で、ま、高校生にしては、まるで初期的な遅咲き初恋ドラマで、少女コミックの名作といわれる河原和音の原作を「ホットロード」「青春エール」などの三木監督が手がけた。

さすがに孫のいる超後期高齢者の小生としては、試写室に行くのも照れくさいが、ま、劇場ロードショーなら<異常者>に見られるだろうから・・・早朝の試写なら照れ隠しになる。

ま、正直なところ、次に見る午後1時の試写の<前座>という意味では、一応は照れ隠しになるだろう・・と、まるで午前10時の始業ベルに間に合うように試写室に駆け込んだ。

しかし、見てみると、これは実に清潔で純真な照れるほどのピュアーな一種、学園ドラマなのだが、あまり生徒間のゴチャゴチャや、不良生徒の横恋慕もなく、さらりとしたレモン味。

冬の岡山でのロケというが、路面電車が走り、山や河も流れているという風景は、どこか平均的に日本の<昭和>の匂いがして、いかにも高校の校舎の雰囲気ものどかで懐かしい。

高校二年生というのは、そろそろ大学への進学とか、都会への就職の準備などでザワザワするのだろうが、この高校に通学している広瀬すずは、どこかボーっとした純真少女。

世界史のセンセーという生田斗真も、いつものサスペンス・ドラマとは違って、この高校では先生の間でも浮いている感じの、まるで大学生のアルバイト教師のような風情が無臭でいい。

とくに語気も強くなく、こともなげに世界の歴史を教えている授業も平板であれば、雑然とした世界史の教員の個室のソファーでも、午後の陽だまりで昼寝しているという、グータラ教師なのだ。

学園ムービーの先輩の大林宣彦監督なら、居たたまれずに1時間もしないで席を立つであろう、平板な学園スケッチは、まさにボーーーっとした、あの青春の生温い午後の空気のよう。

それでも人気の二人が主演のスター・ムービーなので、地方都市の女子高生の会話では取り沙汰されそうな、女子高生の一方的な<告白>もあり、そこはドラマのポイントとなっている。

まさに少女コミックの図柄のようなハンサム青年の生田は、メガネがないとフツーの青年なのだが、昼寝から覚めて、知的なメガネをかけると・・一転して、<憧れのセンセー>となるのだ。

ストーリーは、ま、アリエネーような、寓話的夢の王子様もの、なのだが、あくまで清潔に、純真な女子高生の初恋ムービーとして、さわやかに見られるのは、レモン・スカッシュのようだ。

 

■セカンド・ベースの後方に、ポトリと落ちるが、ファーストはセーフ。 ★★★☆

●10月28日より、109シネマズなど全国公開。 



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9月19日(火)12-30 築地<松竹映画3F試写室>

M-107『密偵』(2016)Warner Brothers Pictures .Korea Production / Grimm Pictures / Herbin Films 韓国

監督・キム・ジウン 主演・ソン・ガンホ、コン・ユ <140分・シネマスコープ> 配給・彩プロ

1920年代の日本統治下の韓国では、独立運動の地下組織<義烈団・ウイヨルダン>が暗躍を続けていて、秘かに日本警察の取り締まりの地下での追求が激化していた。

ベテラン俳優のソン・ガンホが、ここでは日本警察の捜査官として、ちょっと聞きづらいが、日本語を使い韓国の地下組織を追求していくのだが、当然のように韓国語の方がうまい。

日本側の朝鮮総督府警務局課長という、ややこしい役職だが、とにかく現地の日本人捜査官としては、鶴見辰吾が演じているので、当然のように日本語は流暢だが、ソンとの会話のズレはしょうがない。

その彼らがもっとも重要視している地下組織のリーダーが、つい先日見た「新感染・ファイナルエクスプレス」で、堂々の主演で大活躍をしたコン・ユで、ここでは、かなりソン先輩を脅かす好演だ。

むしろ役柄としては、ソンと、コンは逆にした方が、国際スパイ・サスペンスとしては面白くなったろうが、やはり先輩のソンに遠慮してか、コンの悪役ぶりがいささか弱いのが、この作品の弱点だろう。

両優ともに巧いのだが、やはり年齢的な重量感では、ソン・ガンホの方が大先輩なのだから、ここでは彼に悪役を演じて欲しかったのが、当方の身勝手な注文だが、ま、コンも渋とい好演を見せる。

「密偵」というと、いかにも時代がかっているが、要は<シークレット・エージェント>であって、古くはリチャード・ウィドマークの「秘密諜報機関」の、つまり<スパイ>と言った方がわかりやすい。

ま、とにかく時代的には、日本の韓国統治が非常に難しく不利になっていた時期が背景になっているので、韓国映画としては、ここで名優ソンの二重スパイ的な暗躍が見せどころとして緊張感が高い。

しかし、そこにまた謎めいた、あの、超ベテランの、イ・ビョンホンが後半になって、微妙に絡み出してからは、どうもソンの行動にサスペンスが薄れたようで、せっかくの重厚さが・・・。

とはいえ、あの複雑な時代の朝鮮の雰囲気と、そこに居座っていた日本文化の、どうにも不具合な違和感が、このスパイ・サスペンスの舞台背景としては、大いに興味をそそられる映像ではある。

 

■左中間へのライナーを野手が譲り合ったのか後逸のヒット。 ★★★

●11月11日より、シネマート新宿ほかでロードショー



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9月13日(水)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-106『ユダヤ人を救った動物園<アントニーナが愛した命>』" The Zookeeper's Wife " (2017) Phantom Film / Sierra Affinity A Scion Films.

監督・ニキ・カーロ 主演・ジェシカ・チャスティン、ダニエル・ブリュール <127分・シネマスコープ> 配給・ファントム・フィルムズ

つい先日、「ブルーム・オブ・イェスタデイ』の時にも書いたが、このところ、やたらと戦後のナチス犯罪に絡んだ作品が多く目立つが、これもまた、そのナチス関連新作。

しかし戦争犯罪や、戦犯逃亡追跡などではなく、この作品はヒトラーの侵攻が始まった1939年のポーランドのワルシャワにあった、ヨーロッパ最大級動物園の秘話なのだ。

都市の爆撃やナチス軍の侵攻で、ワルシャワにあった動物園の、かなり多くの稀有動物たちも危機にさらされて、爆撃などでは多くの動物たちも災害に会い殺されてしまった。

その動物園の管理者だったジャヴィンスキ夫人は、夫が抵抗軍に参戦して留守の間も、出来るだけ多くの動物たちを爆撃から守り、ナチス軍隊の侵攻からも銃殺は免れりために画策したのだった。

というのも、この大きな動物園には、希少動物や大きなゾウやクマたちを養育するための地下介護室もあり、そのための補助施設や食料保管倉庫もあり、そこは厳重でナチスの進攻も逃れられた。

ジェシカが、つい先日見たニューヨークの<ロビー・レディ>を描いた『女神の見えざる手』でのおしゃれなオフィス・レディとは、また極端にも真逆な、この肝っ玉動物飼育管理女子を演じて見せる。

もちろん、これは戦争秘話なので事実だが、彼女の行った抵抗活動は、その広い動物園の地下介護飼育室の奥に、多くのポーランドに住む難民ユダヤ市民たちを隔離保護したのだ。

あの「アンネの日記」のアンネ・フランクは、自宅の屋根裏部屋に隠れてナチス軍の捜索を逃れたが、この動物園のジェシカは、動物たちの住む地下スペースに多くの同胞を匿ったという事実。

当然、不審に感じていたナチス地域担当高官のダニエル・ブリュールも、執拗にジェシカの隠蔽工作に不審を抱いて、摘発をしようとするが、彼女の善行には感づいているらしく、一線は踏み込まない。

この二人の微妙な信頼関係が、この実話ドラマのサスペンスを高めていて、お互いの立場とヒューマニズムを守ろうとする感情の交錯が、さすが二人の名優の演技で緊迫感が持続するのだ。

おそらくは「ダンケルク」と並んで、来年のアカデミー賞では多くのノミネートに挙げられるだろうが、ここ最近見たヒューマンな演技と、ドラマの迫力には魅せられてしまった。

 

■強打が左中間に転々する間に、悠々のスリーベース。 ★★★★+

●12月、TOHOシネマズみゆき座などでロードショー 



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9月13日(水)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-105『静かなふたり』" Droles d' oiseaux ( Strange Birds )(2017) Kino Electron / Reborn Production , Mikino. Strange Birds 仏

監督・脚本・エリーズ・ジラール 主演・ロリータ・シャマ、ジャン・ソレル <70分・ビスタサイズ> 配給・コピアポア・フィルム

実に、久しぶりにしっとりとしたフランス映画らしい作品で、パリのカルチェラタンにある時代色の濃い実在の古本屋を舞台に、そこの初老のおやじと、そこに来た娘の枯れたような視線。

とくに、ラブシーンというほどのものもないので、ラブストーリーでもなく、あのミシェル・セロー主演の名作「とまどい」を、チラリと思い出させるようなジジイと田舎娘の、ま、恋とはいえない奇妙な時間だ。

ゲイリー・クーパーの晩年の秀作「秘めたる情事」のような年齢差の男女の、枯れたラブストーリーとも言えようが、だが、それにしてもとくにラブシーンもなく、実に淡々とした時間スケッチがいい。

というのも、遂に高齢者になった、あの名作「昼顔」の美男ジャン・ソレルが、まったく客の来ないような古書店のオーナーをしていて、この店のカウンターにいるものの、何者なのかが後半にちらつく。

終日、とくに客の来る様子もなく、2階の部屋に間借りをしだしたロリータは、その代わりに店番をすることになったが、店主は外出がちだが、とくに金に困っている様子もない。

ある日、店主を尋ねて来た老人は店内で倒れたので、彼女は病院の救急車を呼ぶのだが、そのトラブルをきっかけに、留守がちでナゾめいた店主の正体が少しずつ見えて来る。

とはいって、何も確たる事件もなく、まさにあの秀作「とまどい」で、アパートの蔵書を処分しようとしたときに、ナゾめいた初老の紳士が現れたように、この作品にもヘンな男が現れる。

古い新聞のスクラップから、もうすぐに時効を迎える、あの70年代だったかにイタリアで起こった<赤い旅団>のメンバーだったのが、どうやら店主らしく、それで頻繁に行方不明になるのだ。

という臭いを、かすかに感じさせ乍らも、この70分という、珍しく短い異色作は、これまた唐突に終ってしまうのだが、しかし非常に香りのある余韻を残した異色作でもある。

謎めいたヒロインを演じるロリータは、何と名女優のイザベル・ユペールの娘ということで、さすがに沈黙の多い<間>の演技は、名女優の卵らしい不思議な浮遊した存在感。

最近見た新作で、いちばん奇妙な、しかし、実にいい余韻と、多くのナゾを持った香りのあるフランス映画として、これだけヘンなドラマというのも、実に目が離せないのだ。

 

■セカンド頭上に上がった高いフライだが、野手が見失い、その間にツーベース。 ★★★☆☆☆

●10月14日より、新宿武蔵野館でロードショー 



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9月11日(月)13-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-104『アウトレイジ・最終章』"Outrage/Coda " (2017) warner brothers / office kitano, bandai visual / touhoku sinsya

監督・脚本・編集・主演・北野 武 西田敏行 <104分・シネマスコープ> 配給・ワーナー・ブラザース映画

2010年に公開された「アウトレイジ」第一作の後、2012年にも「アウトレイジ・ビヨンド」が公開されたが、そのシリーズの「最終章」という三部作のラストが、これ。

ま、昭和の東映やくざ映画の時代には、花田秀次郎の、あの健さんもいた風格から、一応は<義理と人情>という美学によって、裏社会の暴力沙汰も、ある種の美学があったものだった。

しかしこの平成の北野武流の暴力団映画シリーズには、そんな<きれいごと>は通用せずに、裏社会に暗躍する組織暴力団の確執は、昭和の男の美学なんか、知らネーーよ、という世界。

たしかに東映のやくざ映画も、昭和の末期には深作欣ニ監督の暴力美学「仁義なき戦い」のシリーズで、すっかり義理や人情には縁遠いドンパチの派手な暴力オペラになってしまった。

あの後から、この北野武流の暴力団映画も、秀作「HANA-BI」のときのような、感傷も美学もなくなり、ただひたすらに立腹した男たちが、やたらと殺し合うのだから、もう、感情移入などは論外。

今回は元大友組の組長のビートたけしが、韓国の済州島に潜伏しているという設定から、関東と関西の二大地下勢力が動き出す、という一応は目先の違った導入でスタートする。

が、またしても関東山王会と関西花菱会が、元の大友組長の動向でドンパチのやくざ戦争が始まるという仕掛けで、花菱会の西田敏行が、ブチ切れの悪党芝居でツバを飛ばすのが笑える。

前作の「ビヨンド」でも、かなりの悪党ぶりを見せた西田だが、つい最近、「ナミヤ雑貨店の奇跡」で温厚な老人を演じていたので、その驚愕のギャップがいちばんに面白い。

とにかく、女性のひとりも出ない、全員が中年オヤジ悪党どもという異様な臭気の怒鳴り合いドラマなので、もう30分もすると、だれか・・・冷静なひとはいないのかね、と心配になる。

しかし映画は北野ブランドの全員悪党のハイテンション・ムービーなので、せっかくラストで武サンが自殺するシーンも呆気なくて、ま、とにかく、お疲れさんの、大罵倒映画なのだ。

 

■レフトの後方にゴロで抜ける巧打だが、返球でセカンド封殺。 ★★★

●10月7日より、109シネマズなど全国ロードショー 

  


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9月6日(水)13-00 六本木<キノフィルム3F試写室>

M-103『ブルーム・オブ・イエスタデイ』" The Bloom of Yesterday " ( Die Blumen Von Gestern) (2016) Dor Film-west Production, Four Minutes Film

監督・脚本・クリス・クラウス 主演・ラース・アイティンガー、アデル・エネル <126分・シネマスコープ> 配給・キノフィルムズ

<昨日咲いた花>というようなタイトルの意味だが、これまた、あの第二次世界大戦でのナチスの行った地獄の虐殺時代の、あの悪夢の後遺症を、80年後の現代への投影として描いている。 

ナチスの戦犯を祖父に持った青年ラースは、いまもホロコーストの研究に熱心だが、同じ時代に被害者となった祖母をもつ若いインターンの女性に出会ってしまう、という皮肉。

一応は被害者と加害者の孫同士という不遇な関係なのだが、この二人の若い男女は、皮肉にも過去の悲劇の事実を研究するという過程で、運命的に出会って恋をしてしまう、というドラマだ。

それこそ、そのむかし、ジョシュア・ローガン監督の「サヨナラ」という日本を舞台にした奇妙なラブストーリーがあって、アメリカ軍の兵士が戦後の京都で芸者と恋をしたっけ・・・。

基本的には、まったくタイプの違った作品が、主人公の男女の置かれた敵対国だった不思議な関係は、ちょっと似ている・・かな・・と思いつつ見ていたが、こちらはドライで辛辣なコメディだ。

監督は、あの「4分間のピアニスト」という、実にシャープでドラスティックな映画を撮ったクリス・クラウス監督だが、この作品でも皮肉な歴史と人間の出会いを描いていて飽きさせない。

最近は「アイヒマンの後継者」とか、「アイヒマンを追え」、「ヒトラーの忘れもの」などなど、いまだにあのナチスやヒトラーをテーマにした作品が多いのは、それだけあの時代に拘りがあるのだろう。

しかしここでは、その歴史的悲劇の孫たちの運命的な恋ものがたりとしている部分がユニークでもあり、かなり皮肉をこめた大戦後の<ロミオとジュリエット>、的な関係にしたのだろう。

ま、それは面白いレトリックだし、運命的な悲喜劇として興味はあるものの、どうも主演の二人に、あまり魅力を感じない・・のは、わたしの<美男美女的趣味>のせいだろうか。

とくに中年男風のラースは、どうもヌーボーとしたダサ男で魅力がなくカッタルイという印象で、これも監督の狙いなのかもしれないが、2時間以上もつきあわされるのにはマイッた。

ちょっと、オフビートで、執拗な過去の戦争犯罪にこだわりのあるテーマがお好きな方は、ぜひ、どうぞ。

 

■ショートのエラーでボールが転々する間にセカンドを狙ってタッチアウト。 ★★★

●9月30日より、Bunkamuraル・シネマなどでロードショー 



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9月6日(水)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-102『ネルーダ*大いなる愛の逃亡者』"NERUDA" (2016) Fabula, Funny Balloons, AZ Films , Satembro Films , Willles Movies チリ

 監督・パヴロ・ラライン 主演・ルイス・ニェッコ、ガエル・ガルシア・ベルナル <108分・シネマスコープ> 配給・東北新社

1948年の南米チリには、第二次世界大戦の敗戦によりナチスの重要戦犯などの密航逃亡者が南米に散らばり、危険な敗戦の戦渦を逃れた高官たちは偽名で潜伏していた。

ヒッチコックの「汚名」では、その亡命した戦犯を追う連邦捜査官とスパイたちの暗躍を巧みにサスペンスにしていたが、この「ネルーダ」は実在のチリ政府高官。

チリ上院議員としてのネルーダは、一方では画家の妻と同様に詩作の才能もあって、かなり政治に反発する思想の作品も多かったことから、時の大統領から弾効を受けていた。

周囲の圧力を感じた彼と妻は、政府の不当な逮捕拘束を逃れて、逃亡の日々を国内で送るが、多くの賛同者たちの協力を得て、あのパブロ・ピカソもネルーダを応援していた。

ま、実際には、そうでなくてもナチスの残党狩りで国際警察も暗躍していた時代なので、彼は一時はモスクワまでも身を隠していた事実もあったらしく、その行動はスパイ並み。

という、チリでは人民に人気の高かった詩人ネルーダは、何と、1971年には、ノーベル文学賞も受賞して、その動向は世界からも注目されていたという。

映画はその怪人物のキャラクターを、非常に好意的に描いていて、とくに思想色はなくて、ある種スパイ・サスペンス映画の気風を漂わせる、珍しい<チリ・ワイン>の風味だ。

ネルーダを演じるルイス・ニェッコも、あの名優ブローデリック・クロフォードの弟のような風貌ながら、実に軽妙なユーモアも滲ませて、この作品の魅力を独占している。

だから政治的な歴史背景よりも、ある種、軽妙なスパイ映画を見る様で、あの名匠フリッツ・ラングが見たら、大いに喜びそうな作品に仕上がっている。

特にネルーダを執拗に追うチリ警察の警官ガエル・ガルシア・ベルナルのマジメ腐ったような表情は、「ノー・エスケープ・自由への国境」の時とはマ逆で好感が持てる。

ちょっと、<ひろいもの>をしたような、スパイ・サスペンス映画として、ユーモアもあって、最近のB級映画としては<お買い得>のような、おしゃれな作品だ。

 

■セカンド・オーバーのフライがポロリとライト前にヒット。 ★★★☆☆+

●11月11日より、新宿シネマカリテ他でロードショー 



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