細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『千年の祈り』の老父と娘の孤独な心の平行線。

2009年08月07日 | Weblog
●8月6日(木)13-00 京橋<東京テアトル試写室>
M-85 『千年の祈り』A Thousand Years of Good Prayers (2007) 米/日
監督/ウェイン・ワン 主演/ヘンリー・オー ★★★★☆
シアトル近郊で生活していたひとり娘が離婚し、疎遠だった父親が単身中国からやってくる。
妻を亡くしたばかりの老父と、夫を捨てて妻帯者のロシア人と密会している娘。
もともと折り合いのよくない親子は、10年ぶりに再会するが食卓に会話は少ない。
豊かな環境で不自由のない生活なのに、心のなかは閑散として隙間風が吹いている。
小津映画ファンであるワン監督は、イーユン・リー原作の孤独な老父と離れて生きる娘の、それぞれの人生を、淡彩画のように描いて魅せる。同じ中国語なのに、その言葉の真意が通じないもどかしさを、ヘンリー・オーが好演している。
そこには激しい人間同士の相克はなく、まるで穏やかな晩秋の風景のように深い洞察がある。
まったく違う国の文化のなかでも、同じ親子の幸福は複雑に変形してしまう、この現実のもどかしさ。
その家庭の問題を、楚々とした視線で見つめた秀作だ。

●11月、恵比寿ガーデンシネマでロードショウ

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