台風12号により大きな被害が出た和歌山県田辺市熊野(いや)地区の奥部、木守地区に約50日ぶりに配電線からの電力が復旧した。熊野地区にあった配電設備が壊滅したため経路を変更し、新たに電柱270本を設置してつないだ。木守ではその間電源車が稼働し、住民や大所帯の福祉施設の生活を支えた。
熊野地区の東に隣接する旧大塔村の最奥部。15世帯32人のほか、知的障害者入所施設「あすなろ木守の郷」と二つのケアホームに利用者60人以上が生活している。
土石流が熊野地区を襲い、木守地区の住民も生活道としていた市道、それに沿う配電線が寸断された。木守で人的被害はなく、国道371号を利用した五味地区経由の迂回(うかい)路で孤立化は免れたが、7日間停電が続いた。
電源車が9月10日、中国電力岡山営業所から到着。住民全員が普段通り生活できるようになった。地区の避難所にも指定されているあすなろ木守の郷の職員大谷啓司さん(40)は「停電の1週間は生活が一変した。電源車の到着で、電気のありがたみを思い知った」と語る。
新しい配電経路は、赤土森山(871メートル)を縦断する林道沿いに整備。熊野地区の手前の面川地区井の谷―木守の入り口板立峠の12キロに、電柱を約40メートル間隔で設置した。管轄する関西電力田辺営業所によると、作業員を通常の3倍に増やして急ピッチで整備したという。
今月21日午後4時ごろ、配電線からの電気が復旧。配電線とともに、台風で途切れたテレビを視聴するための光ファイバーケーブルも、近く電柱に沿わせて整備し、11月中につながる見込み。
石谷昌英区長(51)は「電源車の存在で、不便を感じず過ごすことができ、ありがたかった」と話している。
(2011年10月29日更新) 紀伊民報