軽種馬振興会に頼まれて講演した。
予防の話をしてほしい、というリクエストだったので、
馬の手術や解剖をしている立場から、生産牧場が事故防止のためにできるのではないか、という点について話させてもらった。
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半分は疝痛を減らすためには、という話。
日高の結腸捻転の率は、諸外国の文献に比べてとても高い。
雨量豊富な初夏、暑い夏、そして放牧管理がその要因だろう。
しかし、昼夜放牧をするようになって夏の結腸捻転は減った。
その点から考えれば、昼夜放牧しない牧場や馬の夏の結腸捻転も減らすことができるはず。
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結腸左背側変位は、従来考えられてきたように、ガスが張った大結腸が浮かび上がって脾臓にひっかかるのではなく、
重くなった胃が大結腸を押しのけるように沈みこみ、胃と脾臓に大結腸がひっかかる。
と私は考えている。
だから、
濃厚飼料を与える1回量を減らす。
飼い付け回数は増やす。
粗飼料を与えてから濃厚飼料を食べさせる。
ビートパルプは完全に水で戻してから、水分を完全に切って与える。
このことで結腸左背側変位が激減した牧場もある。
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馬の寄生虫の薬剤耐性を進めないことに留意した駆虫方法。
もう全頭いっせいの駆虫は望ましくない。
子馬はフルモキサールで回虫の駆虫を。
繁殖雌馬も含めて葉状条虫の駆虫が必要。
イベルメクチンによる普通円虫の駆虫が必要。
駆虫薬に頼らない寄生虫対策を。
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当歳馬の骨折は治せるようになってきている。
骨折事故発生時の対応が重要。
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分娩事故を減らすには、人手をかけすぎない分娩対応。
そして、分娩後の異常には適確な診断と対応を。
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子馬の、ロドコッカス感染症、ロタ腸炎、ローソニア感染症、を減らすには?
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チフニービットによる舌の損傷は人の責任。
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というような内容で話した。
参加者は170名だったそうだ。
「わかりやすかった」、という感想ももらったが、ホントは獣医さん達も知らない、あるいは獣医学的には認められていない私独自の考えも披露させてもらった。
病気や事故についての理解が、それらを減らすことに少しでもつながればと思う。
「面白かった」、という感想も聞かせてもらった。
ロタ腸炎を減らすために、種付けには子馬を置いていったらどうだ、というようなまだ普及しているとは言えない方法も提案した。
各自の牧場で、試してみることができるか、考えてもらいたい。
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父が図書館から借りてきていたのを読んだ。
どん底: 一流投手が地獄のリハビリで見たもの | |
元永知宏 | |
河出書房新社 |
職業柄、スポーツ選手の故障、手術やリハビリ、そして復活あるいは復活できない例にとても興味がある。
人もうらやむ才能に恵まれ、華々しい世界で、一流選手として活躍していた投手たち。
それが、いったん故障すると悲惨な日々をおくるようになる。
それでも勤め人には考えられないような年収があるじゃないか。
批判されるのも知名度と期待の裏返しじゃないか、と言う人もいるだろう。
しかし・・・・
手術したあとは、もとどおりにはならない。
日常生活の動きから、少しずつできるように、もう一度一から体に覚えさせるしかない。
いいところまで来ていても、痛くなったら最初からやり直し。
故障するのも、プロ野球選手ならどこか痛いところや不調はいつも抱えていて、それといかに付き合うかが大事。
「必ず故障しますよ。」と言う選手も居る。
トレーニングが洗練されていくとともに、スポーツ医学が進歩して、故障が減るように、そして故障しても治せるようになることを願う。
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大谷君ガンバレ!!
復帰戦で160km/hを投げるようなことをしちゃダメだ。