馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

関節鏡手術ことはじめ

2006-07-27 | How to 馬医者修行

 昨年度の吸入麻酔頭数は346頭。関節鏡手術が179頭だったから、吸入麻酔をかける手術の半数以上はPhoto_119 関節鏡手術だったことになる。

海外で馬の外科をやっていると話すと「関節鏡はやるのか?開腹手術はやるのか?」と聞かれる。「両方やる」というと、「おう、そうか。」

その病院のおかれた状況、競馬場が近くにあるかとか、生産地にあるのかとか、都市近郊で乗馬が多いか、などにより比率は変わるが、馬の外科手術では、関節鏡手術、開腹手術が大きな分野で、それ以外の手術と組み合わさって、仕事になっている。

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 関節鏡手術は人医療では日本が世界に先駆けて行った。馬では、コロラド大学のMcIlwraithが1980年代に普及させた。

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 32歳のとき海外研修に出してもらった。カリフォルニア大学デイヴィス校の獣医教育病院に2週間、フロリダ大学獣医教育病院に3週間滞在した。

どちらの病院でもレジデント(研修医)達が盛んに関節鏡手術を練習していた。

 デイヴィスではアルゼンチンから来ていたレジデントが一緒に練習しようと誘ってくれた。

夜、死体置き場から馬の肢を持ち出して、夜中の手術室で練習した。

「関節鏡が壊れると自分達のせいにされるから、この練習のことは誰にも言うな」

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 帰ってきてからは、骨片摘出手術を頼まれるたびに、JRAの施設へ関節鏡のセットを借りに行った。手術予定は数日後にしておいて、半日かけてMcIlwraithの教科書を読み、半日かけて死体の肢で練習した。

それでも、最初の頃は、今は難しいとも思えないことが非常に難しかった。

馬の獣医師をしていても、馬の関節に針を刺す機会はそうそうない。しかし、針を刺せなければ関節鏡手術は始められない。

外から触ってどの出っ張りがどの部分がわからないと手術しにくい。関節鏡手術を繰り返すうちに、どこがどの部分かわかるようになったので手術が容易になったのだろう。

他所で見てきて、本で勉強し、死体で練習し、経験を積んでいくこと。その大切さを関節鏡手術を実践していく上で学んだ。


2 コメント

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hig先生が海外で研修されたのって32歳になられてか... (kiri)
2006-07-28 00:08:39
hig先生が海外で研修されたのって32歳になられてから、だったんですね。
そして、なにごともはじめは難しいものなんですね。
なんだかとてもやる気がわいてきました。
まだまだ時間はたっくさんある!いろんなことやってみたい!と。
BSE検査の関係で、なかなか死体が手に入らないのですが、
なるべく屠場には足を運ぶようにしています。

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>kiri先生 (hig)
2006-07-28 05:59:11
>kiri先生
 解剖、病理はとても大事なのに、BSE騒動以来、獣医科大学でも牛を解剖できないところがあるようです。どうやって大動物の解剖、病理を教えるのか・・・・・
 
 やる気と時間があるうちにおおいにいろいろやってみてください。
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