馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

lag screw の打ち方

2017-12-14 | 整形外科

折れている骨は、

きちんと整復して、lag screw で仮固定して、それからプレート固定したい。

(中央部のプレートに刺さっていない2本のスクリューが、仮固定したLag screw)

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このlag screw はできるだけ骨折面に垂直に入れたい。

垂直に入れないと・・・・・・

締めることで、骨折部にずれる力を働かせてしまう。

というのが上の図。

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近位遠位方向でも、骨折面に垂直に入れるべきだ。

というのが上の図。

骨に垂直に入れないと、締めることで、近位と遠位方向へ骨折部をずらす力が働く。

ただし、馬の整形外科の成書には、骨に垂直に入れて良いんだ。と書いてある本もある。

動物が起立すると、骨は短くなる方向へ圧迫される。だから、lag screwがそれに逆らうように力をかけていても構わない。という考えだ。

私は、やはり骨折面に垂直に刺すべきだと考えている。

ただし、「原理的には」ということであって、必ず、正確に、垂直でなければならない、ということではない。

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手順は、

4.5mmドリルで骨折線までドリルを開けて、

その穴に、3.2mmドリルガイドを入れて、3.2mmドリルで対側皮質まで貫いて、

カウンターシンクして、

デプスゲージで必要なスクリューの長さを測って、

タップでネジ山を切って、

スクリューで締める。

この6ステップを覚えこむ必要がある。

実際やっていると、「あっカウンターシンクするの忘れた。」とか、

「あ~スクリューの長さ測ってなかった。」とか、なりがち。

しかし、タップでネジ山を切ったら、もうドリル穴に何も入れてはいけない。ネジ山を壊す恐れがあるからだ。

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しかし、子牛の骨折プレート固定では、カウンターシンクしないでも大丈夫だし、

タップでネジ山を切っていなくてもスクリューは入っていくし、しっかり効く。

皮質骨が薄くて、柔らかいからだ。

上の実際の症例のx線画像では、骨幹端部には6.5mm海綿骨スクリューを使っている。

黒毛和種の新生子牛などでは、骨幹端には6.5mm海綿骨スクリューを使うのが良いと、最近は考えている。

骨幹端は、とくに皮質骨が薄くて柔らかいからだ。

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4.5mmドリルでの穿孔と、3.2mmドリルでの穿孔は、順序が逆でも構わない。

3.2mmドリルで対側皮質まで貫いておいて、骨折線までを4.5mmドリルで太く(滑り穴)しておく。

この方法なら、ドリルガイドは要らないかもしれない。

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骨折を完全に整復し、lag screw で仮固定できたら、骨折プレート固定は半分うまくいったようなものだと感じている。

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新・小動物骨折内固定マニュアル―AO/ASIFテクニック
泉沢 康晴,種子島 貢司
メディカルサイエンス社

図はこの本からお借りした。

日本語で牛の骨折内固定を一から学べる本はない。

この本は小動物向けなので、大動物にはそのままは使えない部分も多いが、

30-50kgの子牛だとレトリーヴァー、バーニーズマウンテンドッグ、セントバーナードなどと体重はかわらない。

手短に基本を知るには良いかも。

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馬の整形外科医は英語で最新の成書と文献で学ぶ必要がある。

馬の、とくにサラブレッドの骨折内固定はまだまだ難しく、challenging だからだ。

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月曜日は会議。

火曜は、午前も午後も腕節骨折の関節鏡手術。どちらも左右両方。

夕方は、1歳馬のDDSPの軟口蓋Laser焼灼。

水曜は、午前中4歳馬のTieback&Cordectomy。

午後は腕節骨折の関節鏡手術。

木曜と金曜は会議と講習会。

年末だ・・・・来週は忘年会だ・・・・大掃除をする暇はあるのか?

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う~ん、北北西。

どちらかというと、南北軸に沿っていることが多いような気もするけど、

まったくでたらめなこともある。

地軸を強く意識しているとは思えんね。

 



4 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2017-12-14 07:28:05
 皮質骨の固定のおべんきょしたとき、スクリューの添付文書に上記手順のような図説がありました。そこから外れることを標準とするのはよくないと考えます。それぞれの患畜によってどこまでなら許容かもかわるのかな?と思うし。
 伝達講習では基本的部分や大事な注意事項は消えてしまいがちで、簡便でルーチン化しやすいことだけが常態化、となりがち。この記事に当てはまると思ったわけではないですけれど。
 オラ君、hig先生の観察結果がでたようですね。うんこは毎日するから、データ集めやすかったでしょか?来年は戌年だし、年末から出番も多いかも?無事に今年を締めくくって来年につなげたいですね。
 
>はとぽっけさん (hig)
2017-12-15 21:44:11
標準的な、基本的な手技はどうやるのか、どうしてそうするのか知っておくことはたいせつです。そして、別な方法があること、どうしてそれで良いのか知っておくことで、うまくいくこともあります。それが経験であり、”うまさ”であったりもします。

子牛、仔馬の内固定は小児整形外科でもあります。それは成人の整形外科とはまた違う事情があります。それも理解しておく必要があります。

私は夜空には北極星を探します。腕時計は方位計付きです。そして、相棒は・・・どうやら方向音痴のようです;笑
Unknown (はとぽっけ)
2017-12-15 23:38:32
 種差を踏まえても、小児というくくりにおいて共通する課題や治療方針が存在するのですね。
 hig先生は犬は地磁気を感じている派ですね。馬はどうなんでしょ?お酒好きな飼い主さんが馬だけ先に帰したり、酔いつぶれて誰かに馬の背に乗せられ、馬はちゃんと家まで落とさずに戻ったそうだ、ときいたことがあります。馬は道順を覚え、夜道でも迷わない、それだけかもしれませんが。それなら馬場馬術の観賞の仕方が変わるナって思った。
>はとぽっけさん (hig)
2017-12-17 19:44:52
たぶん相棒も、帰巣能力はなかなかのものです。方向は認識しているのかもしれません。ただ、それに沿って腰を下ろしたいと思っていないだけかも。

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