礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

年間、二体ぐらい、起き上がってゆくのがある

2013-07-05 04:43:57 | 日記

◎年間、二体ぐらい、起き上がってゆくのがある

 本日も、インタビュー記録「ホトケを送って35年 及川一男」の一部を紹介する。『歴史民俗学』第一九号(第一刷、二〇〇一年三月二五日:第二刷、二〇一三年六月三〇日)に載っているもので、引用箇所は、昨日、引用した箇所のすぐあとである。

小林 その焼き方のコツですが、やはり、火を絞るタイミングですか。最初、火を強くして……。
及川 そう、そう、その通り。最初は、ワッと火を強くして、釜を早くあっためねばならないから。
小林 どのくらいたったら、火を絞るんですか。
及川 三〇分ぐらいで絞ります。そうすると、お棺も、着せていた着物も、形見に入れた物も、全部なくなって、ホトケさんが本当に裸で出はる。そういうふうにならないと、絞られないわけだ。
礫川 それは、一応、中を見て確認されるんですね。
及川 そう。だから、この二・〇のマナコが、昭和四五、六年から、メガネがなくては、見えなくなった。火力が強いからね。
小林 いろいろな人から、野焼きをしていたころのお話を伺いますと、よく、ホトケさんが立ち上がった、というようなことを聞くんですが、そういうことって、実際にあるんですか。
及川 今は、昔と違って竪棺〈タテカン〉でなく、寝せ棺だからね、立ち上がるということはない。ただ、動くことはあります。こう、頭のほうからはいってゆく。焼けるに従って、上半身が下がっていくのが普通だが、年間、たまたま二体ぐらい、反対に起き上がってゆくのがある。ヘンな音がするな、と思って見ると、バーナーの火が、ホトケさんの背中にあたってるんだ。まあ、そのままにしておいても、最後は、こう、もとに戻りますけどね。
 病気で長い間、寝ていた人の場合、その痛い所をかばって、体を曲げていることがある。お棺の中では身を開いて寝ているが、火で熱せられると、筋肉がそっちに引っぱられるんじゃないかな。前にそういうことがあった時、「このホトケさんは、腎臓が悪かったんじゃないか」と言ったら、「なして、わかったんだ」と言われました。
 マッチ棒だって、燃やせばシュルシュルって曲がるでしょ。だから、動くってことは時々あります。

 非常に貴重なお話である。実は、このあと私たちは、民俗学的な見地からして、これ以上に珍しい話をうかがうことになった。その珍しい話の内容については、『歴史民俗学』第一九号で、ご確認いただきたい。

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