礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

映画館がない市町村が94%強(1942)

2016-11-23 02:20:01 | コラムと名言

◎映画館がない市町村が94%強(1942)

 政府広報誌(情報局編輯)である『週報』第308号(一九四二年九月二日)から、「戦時下娯楽と移動演劇」(署名なし)という文章を紹介している。本日は、その三回目。

娯楽機関の都市偏在
 こゝで参考までに、わが国の映画興行場の分布状態を申上げますと、全国の市町村の中で映画興行場を持つてゐるところは六百四十一で、これを持たないところは一万九百九であります。即ち全国で九割四分強の市町村が映画館を持つてゐないのに、僅かに五分強の市町村に二千有余の映画館が集つてゐる。それも特に、大都市が実に多数の映画館をもつてゐるのであります。劇場は、映画館の場合のやうに甚だしくはありませんが、やはり大都市偏在の事実は、映画の場合と殆んど同様であります。勿論、娯楽機関のない地方にも、稀〈マレ〉には巡回映画や旅廻りの芝居等が訪れて参りますが、大部分は営利を目的としたもので、映画にしても、演劇にしても、真に地方民の生活とか文化といふことを考へてやつてゐるのではなく、やゝもすれば都会文化の不健康なものが、そのまゝ持込まれるといふ危険さへあるのであります。
 殊に娯楽機関に恵まれない地方は、現在、戦時食糧の増産にいそしんでゐる農山漁村であり、戦争資材の生産に日夜を分たず働いてゐる工場、鉱山であることを考へますと、現在までの娯楽文化の配給状態をこのまゝに放置してゆくわけには参りません。地方が独自の力で、優れた文化を生みだすことが出来れば、放つて置いてもょいのですが、かうしたことはなかなか容易なことではなく、従つて地方の実状を正しく考慮した優秀な娯楽文化を、何んとかしてこれ等の地方に提供しなければならない―かういふ機運が、こゝ一、二年の間に勃然【ぼつぜん】として起つて来ました。これが即ち移動文化の運動であります。【以下、次回】

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