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バイク乗りのちょっと寄り道、思った事…

伝統手法を守る 小鹿田

2013-11-07 11:33:30 | 再編







福岡県と大分県の県境
江戸時代豊富な穀物・木材そして隠れ金山によって栄え幕府の天領となった日田。
中心部を流れる筑後川は有明海まで続き水運を利用した交通の要所でもあった。
今も夏に開催される祇園祭と鵜飼に当時の華やかさを感じる事ができる。
そんな日田は夏は盆地で暑く、冬は冷え込む歴史と自然豊かな街だ。

その日田から北側の山間に位置する小鹿田(おんたと読む)
確か以前は皿山と呼ばれていた事からも陶器の町と容易に想像がつく。
町と言っても登り窯を中心に10軒程度の窯元がひっそり寄せ合う小さな集落で
中心を走る道路は曲がりくねり車が履行するのもやっとの程
平地がほとんど無く天日干しする場所もわずかなスペースのある軒先がほとんどだ。
その登り窯はその祖を朝鮮まで遡る昔ながらの傾斜を利用して下側に薪をくべ
熱風を吹き上げる様式の物で黒く煤けた赤レンガがここでの歴史を感じさせる。
今は共同で運用しているとの事でここの集落のシンボルであるといっても過言ではない。

本当にこじんまりした小鹿田の歴史は江戸時代中期に日田の代官の命により
領内の生活雑器の需要を賄うために興された庶民的陶器であり
近くの小石原から招かれた陶工によって始められたと言われている。
このためよく見ると小鹿田焼の技法には小石原焼と共通する
飛び鉋、刷毛目、櫛描きなどの道具を用いて刻まれた幾何学的紋様を特徴としている。
もちろん素人である私目ではどちらがどちらであるか判別出来るはずが無い。

蒼く高く澄んだ秋の空、少し肌寒い風が吹き抜ける。
すすきが頭を下げ山肌は黄色や赤に染まっている。
車もほとんど通らない集落は耳を澄ますと山から流れる清流の水の音だけが響き渡る。

そんな中、ギーギギー、ゴットン、ギーギギー、ゴットンと音が響く。

川の水を利用した大きなししおどしの音だ。
陶土を搗くために利用している臼は“唐臼”と呼ばれるもので、
受け皿に溜まった水が受け皿ごと落ちる反動によって陶土を挽いているのだ。
ここにも昔ながらの方法が生きづいているのだ。
そしてその音は“日本の音風景100選”の一つにも選ばれている何処か懐かしい音だ。

お昼を少し過ぎていたのでその下流にある橋を渡り蕎麦を食す。
繋ぎがほとんど入ってないのか少し太麺でボソボソ切れる田舎風蕎麦だった。
天気の良い日は涼やかな水の流れと陶土を引く音
そして敷地いっぱいの広げられて陶器はきっと穏やかな時間を与えてくれるはずだ。





小鹿田の里