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おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

2025-05-20 07:42:21 | 映画
過去に照会した作品を振り返っています。
私が見た映画の中で記憶に残るベスト&それに続く作品を紹介しました。
今はそれらに続く傑作を再度紹介しています。
さすがにこのクラスの作品となると多くの映画を思い出します。

「顔」 2000年 日本


監督 阪本順治
出演 藤山直美 豊川悦司 國村隼 大楠道代 牧瀬里穂
   佐藤浩市 内田春菊 早乙女愛 九十九一
   渡辺美佐子 岸部一徳 中村勘九郎

ストーリー
1995年1月。
幼い頃から家に引きこもっている正子は冴えない40過ぎの女性で、母親が営むクリーニング店の二階で洋服のかけはぎの仕事をしながらひっそりと暮らしていた。
ところが、そんな彼女の生活が母親の急死で一変する。
通夜の晩、ホステスをしている妹が正子に向かっていつものようにきつい言葉をぶつける。
カッとなった正子は妹を殺してしまう。
香典袋を手に、35年間閉じこもっていた家を飛び出した。
突然の大地震も手伝って逃亡に成功した正子は、離れて暮らす父親の行方を探してやって来た大阪を経て、やがて別府へ流れ着く。
そこで、親切な中年女性・律子に拾われた彼女は、律子の店でホステスとして働くことになるが、その仕事はそれまで内向的だった彼女の内面を変えていった。
そして、いつしか生きる意欲を見出すようになった正子は、池田という男にも秘かな想いを寄せるようになる。
だが、律子の弟でヤクザ者の洋行が殺され、店に警察の捜査が入ったことから、彼女は再び逃亡生活を余儀なくされた。
律子や池田に別れを告げ、小さな離島へ逃げる正子。
しかし暫くすると、そこへも警察の追っ手は迫ってきた。
捕まってなるものか。
必死に逃げようと海へ飛び込んだ正子は、やっと覚えた平泳ぎで泳ぎ出す。


寸評
私はこれを大阪の場末の今はなくなってしまった映画館で見た。
場末の映画館で見てよかったと思っている。
この映画への効果バツグンで、随分と雰囲気を盛り上げてくれた。
生きるバイタリティのようなものを映画館全体が感じさせてくれたのだ。
4、5人も乗れば一杯のエレーベータを降りると、薄暗い通路に切符の自動販売機があった。
2館ある映画館の共通のモギリとして愛想の悪いおばちゃんがいる。
木製の棚にチラシが置いてあったので、切符を買う前に取ってみると、このチラシを持参した人は200円割引と印刷されていたので、「割引になるんですか?」と聞くと、「1400円で入って」とぶっきらぼうな答。
なぁーんだ、それなら皆割引ではないか・・・(でも前の人は通常料金のチケット買ってから、チラシを取っていた・・・インチキがまかり通ている)。
中は100席程度で、試写室に毛の生えたような雰囲気。
扇風機だか、換気扇だかがブルルンと回わっている音が聞こえる。
なんだか妙に懐かしくて、「好きだなぁ・・・この雰囲気・・・」とつぶやきそうになったものだ。

映画はいい!
藤山直美さんはもちろん、出ている人が皆素敵。
うまいなぁ・・・、いい雰囲気出してたなぁ・・・。
阪本監督がこのようなユーモアとペーソスを持った映画を作ると、やけに輝いた作品になる。
小さい頃から劣等感の中で育ってきた結果として、自閉症気味な正子が自分をなじった妹を絞殺しての逃避行によって、生きることの喜びを見出していく姿が感動的。
自分の意思表現をうまく出来ないでいた正子も、実はしっかりとした自己形成は行っていたのだ。
それを周りが気付かなかっただけなのだ。
そのことは冒頭の、動物柄の縫い物をする正子が想像する、動物達に囲まれた食事シーンに表現されているし、あるいは自分を犯した、そして初めての男である酔っぱらいの中村勘九郎に金を渡すところなどに象徴的に描かれている。
「取っとけ!」と怒鳴るところなどは、犯されたんじゃない、男を買ったんやの心意気なのだ。
自転車に乗ることも、泳ぐことも出来ず、走ることさえしなかった正子が、世の中の人々と出会うことで変化していく様が愉快だ。
彼女の生き様に触発されるように、周りの人間達もその生き様にケリをつけていく。
「走ることもあるんやな」と言われ、自転車の練習に付き合ってくれたラブホテルの経営者・岸部一徳は自殺。
カラオケ・スナックのママ(大楠道代)の弟(豊川悦司)は、正子と違って逃げることを拒絶しヤクザに殺される。
初めて好きになった男(佐藤浩市)は、リストラの腹いせに持ち出した社内データを捨てざるをえなくなってしまう。
みんなそれぞれ逃げ切れないものを背負って生きてきたようなのだが、正子と違って、本当に逃げ切れなかった末路なのだ。
自殺未遂の経験があるらしい大楠道代を慕うあたりはいじらしくもある。
彼女の「逃げて逃げて生きなあかんよ」という言葉に「ありがとう」を繰り返すところなどは泣けた。
なじる女房(早乙女愛)に対し、「別に許してもらわんでもええよ」とはき捨てた正子。
その当の亭主(國村隼)に教えてもらった泳ぎでもって、追い詰められた正子は海を泳ぎ切って島からの脱出を図るのだが、思わず応援したくなる。
がんばれ正子、逃げろ正子!
Cobaの音楽・・・ええやないかぁ!


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