「火火(ひび)」 2004年 日本
監督 高橋伴明
出演 田中裕子 窪塚俊介 黒沢あすか
池脇千鶴 岸部一徳 遠山景織子
石田えり 山田辰夫 塩見三省
鈴木砂羽 東ちづる 石黒賢
ストーリー
滋賀県の焼物の里、信楽町に暮らす陶芸家の夫婦に破局が訪れた。
作風の違いなどから衝突を重ねていた夫の学(石黒賢)が、若い愛人と出奔。
残された妻、神山清子(田中裕子)は、長女・久美子(遠山景織子)、長男・賢一(窪塚俊介)を、女手一つで育て上げると心に決め、そして陶芸家の意地から、長年の夢である独自の古代穴窯による信楽自然釉をなんとしても成功させたいと執念を燃やす。
女の意地もあったが苦しい生活が続き、米びつの底は尽き、米のとぎ汁を飲んで飢えをしのぐような毎日。
窯炊きの挑戦も失敗を繰り返し、何度も失意に打ちひしがれる。
それでも、子供たちの成長と、なにかと後ろ盾になってくれる先輩陶芸家・石井(岸部一徳)の励ましに支えられて、なおも清子は挑戦を続ける。
そして、数年のち。真っ黒な夜空に煙突から真っ赤な炎が吹き上げるほどに焚き続けた2週間が過ぎた窯出しの日、窯に入った清子の瞳に小さな光が反射する。
花入れや壷、水指がビードロをつけ可憐な色に染まっていて、貧しさもいとわず穴窯に賭けた清子の挑戦がついに報われた瞬間だった。
清子は日本全国で個展も成功させ、女性陶芸家の先駆者として押しも押されぬ存在となる。
月日は流れ、久美子は東京の短大に進学し、賢一は窯業試験場を卒業して陶芸の道を歩み始める。
みどり(池脇千鶴)という恋人もできるが、なぜか賢一の腰はすわらない。
そんななか、賢一が突然倒れた。
医師の診断は白血病、HLAの適合する骨髄の移植が生存の唯一の道だが、家族はおろか清子の妹の幸子(石田えり)ら血縁者の骨髄は賢一に適合しない。
寸評
信楽焼の陶芸作家神山清子(こうやまきよこ)さんをモデルにしたドラマなのだが、僕はこの作品で初めて神山清子さんを知った。
僕は釉薬を使っていない備前焼とか丹波焼の焼き物が好きなのだが、何かの書物で信楽焼きは土が良すぎて作家を育てないと目にした記憶があり、信楽焼=狸のイメージが強すぎてあまり興味を持っていなかった。
この映画で自然釉の色合いを追い求める神山さんの姿を見て、どこにでもすごい作家は存在しているのだと認識を新たにしたのだが、自分の偏見、不明を恥じ入るばかりである。
田中裕子演じる神山清子がどこまでご本人に近いものなのかは知る由もないし、ドラマ仕立てなので多少の誇張、脚色があると思われるが、とにかく前向きでバイタリティのある女性だと感じ取れる。
田中裕子はスゴイ!
ドラマの当初は作家神山清子の苦闘が描かれる。
古代穴窯で焼かれた信楽焼の破片を見つけ、何とかそれを再現しようとする。
登り窯ばかりになっていた信楽に穴窯を築き、そこで自然釉の作品作りに没頭する。
失敗ばかりで家は貧しい。
金にはなる1000個のカップ作りの仕事などを先輩陶芸家の石井に紹介してもらい暮らしを維持している。
子供たちを厳しく育てているが貧困は逃れがたく、長女の久美子が短大入試に臨むときには「落ちてこい」と言う始末で、久美子はそんな母に反感を抱いていく。
何日も燃やし続ける穴窯での作陶は男でも辛い作業だが清子は執念でやり遂げ、失敗続きだった自然釉の製作もついに成功する。
伝記物だが、そこに力点を置いていないので、成功の感激はそんなに伝わってこない。
それよりもその間の出来事を通じって描かれる清子の言動が可笑しくて仕方がない。
男以上の乱暴な口を利くが愛情を持った強い母としての姿が心を打つ。
孤高の芸術家の苦悩を描いた重苦しいものではなく、笑ってしまうシーンも多くあってここまでは楽しい映画だ。
借金取りに追われているのも笑い飛ばしている。
一転するのは長男の賢一が白血病になってからで、映画の大半はそこからの出来事となっている。
恋人と別れる経緯は胸が熱くなるし、骨髄の移植を求めて活動する仲間の姿も胸を打つ。
ドナーを求める活動にもお金がかかるのだ。
検査費用はバカにならず1000万円もの借金が出来てしまい、寄付金だけでは活動が維持できない。
ドナーを探すことに目が行きがちだが、現実問題としてお金が必要で街頭募金の重要性を改めて思い知る。
そして仲間の重要性も分かり、果たして自分が同じ立場になったら、どれだけの人に協力を頼めるだろうかと、人脈のなさに心細くなった。
賢一の伯母さんの様な人も少ない。
この伯母さんはいい人で、賢一が遺体で帰ってきた時の言葉に僕は大泣きしてしまった。
最後に清子が作家魂を見せるのがいい。
賢一の窪塚俊介が熱演しているけれど、やはりこの映画は田中裕子だろう。
監督 高橋伴明
出演 田中裕子 窪塚俊介 黒沢あすか
池脇千鶴 岸部一徳 遠山景織子
石田えり 山田辰夫 塩見三省
鈴木砂羽 東ちづる 石黒賢
ストーリー
滋賀県の焼物の里、信楽町に暮らす陶芸家の夫婦に破局が訪れた。
作風の違いなどから衝突を重ねていた夫の学(石黒賢)が、若い愛人と出奔。
残された妻、神山清子(田中裕子)は、長女・久美子(遠山景織子)、長男・賢一(窪塚俊介)を、女手一つで育て上げると心に決め、そして陶芸家の意地から、長年の夢である独自の古代穴窯による信楽自然釉をなんとしても成功させたいと執念を燃やす。
女の意地もあったが苦しい生活が続き、米びつの底は尽き、米のとぎ汁を飲んで飢えをしのぐような毎日。
窯炊きの挑戦も失敗を繰り返し、何度も失意に打ちひしがれる。
それでも、子供たちの成長と、なにかと後ろ盾になってくれる先輩陶芸家・石井(岸部一徳)の励ましに支えられて、なおも清子は挑戦を続ける。
そして、数年のち。真っ黒な夜空に煙突から真っ赤な炎が吹き上げるほどに焚き続けた2週間が過ぎた窯出しの日、窯に入った清子の瞳に小さな光が反射する。
花入れや壷、水指がビードロをつけ可憐な色に染まっていて、貧しさもいとわず穴窯に賭けた清子の挑戦がついに報われた瞬間だった。
清子は日本全国で個展も成功させ、女性陶芸家の先駆者として押しも押されぬ存在となる。
月日は流れ、久美子は東京の短大に進学し、賢一は窯業試験場を卒業して陶芸の道を歩み始める。
みどり(池脇千鶴)という恋人もできるが、なぜか賢一の腰はすわらない。
そんななか、賢一が突然倒れた。
医師の診断は白血病、HLAの適合する骨髄の移植が生存の唯一の道だが、家族はおろか清子の妹の幸子(石田えり)ら血縁者の骨髄は賢一に適合しない。
寸評
信楽焼の陶芸作家神山清子(こうやまきよこ)さんをモデルにしたドラマなのだが、僕はこの作品で初めて神山清子さんを知った。
僕は釉薬を使っていない備前焼とか丹波焼の焼き物が好きなのだが、何かの書物で信楽焼きは土が良すぎて作家を育てないと目にした記憶があり、信楽焼=狸のイメージが強すぎてあまり興味を持っていなかった。
この映画で自然釉の色合いを追い求める神山さんの姿を見て、どこにでもすごい作家は存在しているのだと認識を新たにしたのだが、自分の偏見、不明を恥じ入るばかりである。
田中裕子演じる神山清子がどこまでご本人に近いものなのかは知る由もないし、ドラマ仕立てなので多少の誇張、脚色があると思われるが、とにかく前向きでバイタリティのある女性だと感じ取れる。
田中裕子はスゴイ!
ドラマの当初は作家神山清子の苦闘が描かれる。
古代穴窯で焼かれた信楽焼の破片を見つけ、何とかそれを再現しようとする。
登り窯ばかりになっていた信楽に穴窯を築き、そこで自然釉の作品作りに没頭する。
失敗ばかりで家は貧しい。
金にはなる1000個のカップ作りの仕事などを先輩陶芸家の石井に紹介してもらい暮らしを維持している。
子供たちを厳しく育てているが貧困は逃れがたく、長女の久美子が短大入試に臨むときには「落ちてこい」と言う始末で、久美子はそんな母に反感を抱いていく。
何日も燃やし続ける穴窯での作陶は男でも辛い作業だが清子は執念でやり遂げ、失敗続きだった自然釉の製作もついに成功する。
伝記物だが、そこに力点を置いていないので、成功の感激はそんなに伝わってこない。
それよりもその間の出来事を通じって描かれる清子の言動が可笑しくて仕方がない。
男以上の乱暴な口を利くが愛情を持った強い母としての姿が心を打つ。
孤高の芸術家の苦悩を描いた重苦しいものではなく、笑ってしまうシーンも多くあってここまでは楽しい映画だ。
借金取りに追われているのも笑い飛ばしている。
一転するのは長男の賢一が白血病になってからで、映画の大半はそこからの出来事となっている。
恋人と別れる経緯は胸が熱くなるし、骨髄の移植を求めて活動する仲間の姿も胸を打つ。
ドナーを求める活動にもお金がかかるのだ。
検査費用はバカにならず1000万円もの借金が出来てしまい、寄付金だけでは活動が維持できない。
ドナーを探すことに目が行きがちだが、現実問題としてお金が必要で街頭募金の重要性を改めて思い知る。
そして仲間の重要性も分かり、果たして自分が同じ立場になったら、どれだけの人に協力を頼めるだろうかと、人脈のなさに心細くなった。
賢一の伯母さんの様な人も少ない。
この伯母さんはいい人で、賢一が遺体で帰ってきた時の言葉に僕は大泣きしてしまった。
最後に清子が作家魂を見せるのがいい。
賢一の窪塚俊介が熱演しているけれど、やはりこの映画は田中裕子だろう。
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